千変万化の女優・山田杏奈「誰かわからないのがいいのかも」

2021.2.16 20:45

10歳でモデルとしてデビューし、近年は映画、ドラマなど女優としての活躍もめざましい山田杏奈

(写真7枚)

「最近は逆に、顔を安定させたい」

──山田さんを見ていて毎回「すごいな」と感じることがあるんですけど、作品ごとに顔が全然違うじゃないですか。いつも「山田杏奈は顔が良いな」って。

顔の違いは自分でもそう思います。「顔が変わるな」って。もちろん、メイクさんの力がすごく大きい。あと私はいつも、役としての自意識を考えるというか、「このキャラクターは自分を美しく見せようと思って、動いていない」という風に捉えたりしながら演じるんです。

──人間誰しもかっこいい顔、美しい顔ばかり見せるわけではないですもんね。

「毎回顔を変えよう」という意識はありませんし、「映像的に美しく見えるかどうか」も全然気にしないんです。ただ、好きな人といるときの表情は普段とまた違うはず。そういう場面にふさわしい顔を、お芝居として表します。でも、お芝居のなかで顔の筋肉の力の入れ方は考えるようにしています。それが顔の違いにつながるのかも。

──なるほど。

響の場合は眉間に皺を寄せたり、目つきを強くしたりしました。それが彼女の見え方になる。『ジオラマボーイ・パノラマガール』のハルコだったら、目をパチッと開けて、キュッとした顔を作り、何かあったらクルクルとさせるように表情が変化する。そういう顔の筋肉の使い方は、考えているかも。

──確かに顔の作り方に関して、「おもしろい俳優だな」っていつも観てました。

でも最近は逆に、顔を安定させたいんです。SNSなどを見ていても、「誰か分からなかった」という感想があったりして。でも、きっとそれで良いんですよね。山田杏奈としてその物語に存在しているわけじゃないので。誰か分からないのがいいことなのかなって。

天沢響を演じる山田杏奈(左)と、その姉・鳴役の山口まゆ (C)2021「樹海村」製作委員会

──『樹海村』というホラー映画に出演することで、俳優としてインプットするものが増えたんじゃないですか。

役を通して勉強になることは間違いなくあるんですけど、でも私は結構、役や物語を主観的に捉えすぎちゃうというか、演じていると精神がすり減るんです。いろんな作品に出ると自分の知らないことにたくさん出会う。でもそれが脳にストックされるのではなく、身体に浸透する感覚というか、思考に結びつくというか。1から10まで理論的に考えられなくなって、自然と身体や思考の方に入り込んじゃうんです。

──理性的な判断ができなくなる、と?

台本を読んでいるときも、気づくと何時間も経っていることもあります。そこまで役にどっぷりハマって抜けられないわけではないけど、でも役によってはそうなることもあります。まだ公開になっていない作品なのですが、地方に泊まり込みで撮影に行っていて、役も大変な設定だったんです。家に帰れずそこでずっとお芝居をしていると、ネガティブな意味ではないですけど、気持ちが追い詰められていくんです。頭が切り替えられなくなったことはあります。で、そういうときってものすごくお腹が空いちゃう(笑)。

──気持ちがすり減り過ぎて?

立ったり座ったりするだけでも、お芝居となると疲れがすごいときもあるんです。そういうお芝居の後って、とにかくお腹が空く。それだけ使い果たしているものが大きいんだと思います。

──若手俳優のなかで山田さんは圧倒的なところがあると思っているんですけど、そういった感覚が芝居として作用しているから「山田杏奈はすごい」となるのかもしれません。山田さんがこれからどこまで進化するのか楽しみです。

『ミスミソウ』や、今回の『樹海村』などもあってダークな役の印象を持つ方も多いはず。でも最近はファミリー要素のあるお芝居もやらせてもらえるようになって、お芝居に対してこれまでとはまた違った楽しさを感じています。会話のテンポや声のトーンなど、そういう細かい部分の抑揚をつけたお芝居に興味があります。先ほどおっしゃっていただいたように、顔の変化も含め、すべてをうまく合わせていって演技を作り上げたい。

──なるほど。

今までは顔など「寄りの世界」で褒めていただくことが多かったんですけど、これからは「引きの世界」を意識して、そこで「おもしろい芝居をする」と言ってもらえるようになりたい。いろんな要素を伸ばしていけるように頑張ります。

映画『樹海村』

全国の劇場で公開中
監督:清水崇
出演:山田杏奈 、山口まゆ、神尾楓珠、倉悠貴、工藤遥、大谷凜香
配給:東映

(C)2021「樹海村」製作委員会

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