お客も店員もいない無人書店を作ったのは? 奈良から最先端ビジネス

2021.2.28 07:45

平田さんが開発した「タナミル」。5台のワイヤレスカメラを稼働し、店内の本棚を24時間リアルタイム配信。客が新たな本と出会う体験をオンライン化

(写真7枚)

「奈良という土地のハンディキャップがなくなった」

──実際にオンラインを駆使して、平田さんが実感されていることは何でしょう?

一番は、奈良という土地のハンディキャップがなくなったことです。移転前の「ふうせんかずら」は、少し行きにくい場所にあったので、知る人ぞ知る店でした。でも、オンライン化すれば、24時間いつでも来ていただけます。

ほかの仕事でも今までは、同じ能力があれば地縁がある、より近い方が選ばれていました。頻繁に打ち合わせができ、交通費もかからない。しかし、それらは全部オンラインでできるようになった。

ただ、マイナスをゼロにするものがオンラインだと思っている人も多いので、オンラインだからこその内容を提供することが大事です。

私の場合は、しゃべりながら、画面を切り替え、イラストを描いて説明する。さらに、その画像を打ち合わせした内容と一緒に送るので、印象に残って喜ばれています。自分が培ってきた技をオンラインで発揮しやすくなり、今は奈良に居ながら東京の仕事ができています。まるで外貨を稼ぐように(笑)。

──職種にもよると思いますが、コロナ禍で地方での新しい働き方が促進したのですね

これまで奈良で仕事をしようと思うと、奈良のなかで経済を回さないとならなかった。そうではなく、他府県で潤沢に動いているものを自分たちの地域にどう持って来ることができるのか?それがコロナ禍のオンラインによって可能になったのだと思います。

特に、僕のような知識やノウハウなど形がないもの提供する職は顕著ですね。コロナはオンラインの可能性を広げただけではなく、オンライン縛りにして、みなさんのスタイルを変えてしまった。政府があれだけ働き方改革を促しても進まなかったのに、コロナで一気に転じましたね。

2020年12月に移転しリニューアルオープンした無人キャッシュレス書店「ふうせんかずら」。事前にスマートフォンで会員登録しIDで入店、カードリーダーを使ってセルフ精算するシステム

──確かに。東京でIT関連の会社を経営されていた経験や、ひと足先にオンラインのプラス面に目を向けたからこそ感じることですね。

平常時では、みんな、しなくても良い理由を考えているんですね。が、ある外部環境の変化が背中をポンと押してくれた時に、できない理由を並べるのではなく、どうやったらできるのか考えるのが大事だと思います。

当初は、プライベートシアター青丹座も無人キャッシュレス書店も、人件費削減というだけで、ITを使ったことによるメリットはあまり表立たなかった。それがコロナで無人、非接触という強みがいっきに見えるようになりました。

──今後もコロナ禍が続くと考えられる状況で、平田さんが描いているビジネス像とはどういうものでしょうか?

いままでは自分ひとりで取り組んでいましたが、これからは『自らのビジネスをデザインする能力を持つ人たち』と一緒に、奈良というステージで、新たなコラボレーションをしたいなと。

すでにグラフィックデザイナーや住宅設計、工業製品を扱うメンバーと組んでおり、「タナミル」開発もその一環でした。今後は「タナミル」の製品化・量産化も目指しています。

コロナ禍で、多くの人が漠然と思っていたことを言語化、可視化し、すぐ実際の行動に移した平田さん。オンラインビジネスについての著書『プロとして使うZoom-会社では教えてくれない新時代の仕事術-』3月3日に発売予定。「 ふうせんかずら」は、平日は無人だが、土日は有人でID不要のカギ開放デーとして営業。7時30分~22時で年中無休。

取材・文・写真/いずみゆか

「Naramachi BookSpace」

2020年12月10日(木)移転
住所:奈良市東城戸町32-1
営業:7:30〜22:00 年中無休(臨時休業あり)

「ならまちシアター 青丹座」
住所:奈良市下御門町4番地 eリュエル2F
営業:9:00〜22:30

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本