日本での在宅医療とは・・・「こんな死に方もあるんだよという提案」
長尾「どのような形で最期を迎えたいのか表明しておくことが大事」
──原作者の長尾先生は、映画化の話がきたときはどう思われましたか?
長尾「単純にまずうれしかったです。出演者を聞いたら、どうやら僕にあたる役を奥田瑛二さんがやってくださるというので、すごいなと思いました。ただ、ほんとに映画はできるのかなっていうどこか信じられないような気持ちもありました」
──高橋監督のことはご存知だったのですか?
長尾「もちろん、知っていました。いまも映画は観ますが、学生時代はピンク映画も含めてよく観ていましたから。奥さま(高橋恵子、旧姓・関根恵子)とご結婚されたときは僕も衝撃を受けましたから(笑)」
──作品には医療監修という形で参加されたわけですね。
長尾「そうです。でも、初めにシナリオを読ませてもらったときは、これがどう映画になるのか、よくわかっていなかったんです。シナリオとか読んだことなかったですから。だから出来上がった映画を観て驚きました、いい映画だなって。監督が僕の本をとても上手に料理してくださった。僕の言いたかったことが、みごとに無駄なくすくい上げられていました」
──医学的な見地からも気になったところはなかったですか?
長尾「なかったですね。肺の病で苦しまれる患者さんの様子も、下元さんがほんとにリアルに演じてくださってますし。また、後半の宇崎さんに病床で川柳を詠ませるアイデアにも感心しました。あれは原作にないんです。死と向き合うお話なのに、ユーモアが巧みに採り込まれていて」
──確かに、宇崎さんが詠まれる『川柳もどき』は面白かったですね。あれはどなたかモデルになったような方がいらしたのですか?
高橋「いや、思いつきです。ともかくこの映画では言いたいことがいっぱいあったので、それを台詞に書いて役者に読んでもらってもおもしろくないから、どうしようってことで考えたんだけど、割りとうまくいきましたね」
長尾「あの川柳はほんとに完成度が高いです。僕の言いたかったことが散りばめられていて。もう原作本読まなくていいから、この映画だけ観てくれって思いました(笑)」
──宇崎さんの闘病生活を観て、意識がしっかりしているうちに、自身の終末期医療をどうしてほしいか、自らの意志を書いておく「リビングウィル」が大切だなと思いました。
長尾「そうなんです。病を得たとき自身がどのような治療を受けたいのか、どのような形で最期を迎えたいのか、意識がしっかりしているうちに表明しておく。紙に書いて残しておくというのが大事なんです。日本ではまだわずか3%の方しか実行されていない。欧米と比べてとても少ないです。こういうことをもっと知ってもらわないと、と思います」
──あと医療現場での「死の壁」というのも初めて聴いたことばでした。
長尾「在宅医療を患者さん本人も家族の方も選択しておられて、家で穏やかに最期のときを迎えたいと願っておられても、最期のときの少し前に強い痛みや苦しみを感じてしまうときがくる。これを『死の壁』と呼んでいるんです。そのとき家族の方が驚いて救急車を呼んで、入院させ、結局帰ってこれないことも多い。このことを初めて描いた映画だと思います。劇中で「死の壁」がきたことを、宇崎さんの奥さん役の大谷直子さんが「台風上陸」という表現を使って語るシーンがあります。いい表現でしたね」
──大谷直子さんは、巧い、実力派の女優さんですよね。今回は、下元さんの娘役だった坂井真紀さんも良くて、患者さんの家族を演じられた女優さんたちが皆な好演でした。
高橋「柄本佑に付いてる看護師を演じた余貴美子さんもね。彼女にはなんとも言えない存在感があって。画面に映っているだけで安心できるところがあったな」
──柄本さんはどう思われましたか?
高橋「熱心にやってくれましたよ。彼は長尾先生のところにまで行って、勉強もしてきてくれたし」
長尾「尼崎まで来てくれて、現場での様子をずっと見ていてくれました」
──今回、俳優さんたちにこういった感じでやってくださいっていうのはあったのですか?
高橋「いや、ほとんどなにも言わなかったですね。みなそれぞれできちんと役をつかんできてくれてたので。ただ、宇崎がときどきロックンローラーになっちゃうときがあるので、宇崎を少し抑え気味にするぐらいでしたね(笑)」
──映画を観てくださる方に、こういったところを観てほしいということはありますか?
高橋「こちらから積極的にこう感じてほしいというのはないです。まあ、こういう死に方もあるんだよ、と遠慮気味に提案しただけですから。特に後半は自分の理想とするものを描いてますし。提案を受けていろいろ考えてもらえれば、と思います」
『痛くない死に方』
監督・脚本:高橋伴明
原作:長尾和宏(『痛くない死に方』『痛い在宅医)』
出演:柄本佑、坂井真紀、余貴美子、大谷直子、宇崎竜童、奥田瑛二、下元史朗、ほか
配給:渋谷プロダクション
(C)「痛くない死に方」製作委員会
関西の映画館:テアトル梅田、なんばパークスシネマ、京都シネマ、イオンシネマ京都桂川、神戸国際松竹(以上3月5日〜)、塚口サンサン劇場、豊岡劇場(以上3月12日〜)、MOVIXあまがさき(4月2日〜)、シアターセブン(4月3日〜)
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