岸谷五朗「センシティブな問題を考えてもらえる舞台に」

2021.4.27 07:15

『The PROM』より 撮影:引地信彦、NAITO

(写真5枚)

寺脇康文と共同で主宰する演劇ユニット「地球ゴージャス」では、俳優だけでなく劇作家・演出家も務める岸谷五朗。「地球ゴージャス」初の翻訳劇『The PROM』に込めた想いを、23日におこなわれた大阪の会見で熱く語った。

 『The PROM』は2018年にブロードウェイで開幕し、2020年にはメリル・ストリープやニコール・キッドマンなどの豪華キャストで映像化もされた話題作。岸谷は実際にブロードウェイで観て、重いテーマを底抜けの明るさで伝える内容に衝撃を受けたそう。

「レズビアンの女子高生が、学校で偏見や差別を受けているという、普通なら非常に悲惨な物語。でもミュージカルの音楽と笑いがそれを包みこんで、悲惨さを吹き飛ばしていくんです。ブロードウェイの舞台は、大きな笑いの渦に巻き込まれる感じでしたが、日本版はそれが涙にもつながるというニュアンスが出たと思います」と自己分析した。

 本作の大きな鍵となるLGBTの問題は、以前から強い関心と啓蒙の意識を持っていたという岸谷。今回の舞台は、事前に俳優やスタッフ向けの講習会を何度も開催して、全員が理解を深めた上で臨んだという。

「僕は長年エイズ啓発のチャリティをやっていて、そこで一番問題意識を持ったのは、ある中学生が『家族の食卓でエイズの質問をしたら「ご飯の最中にそんな話をするな」と怒られた』と言ってたこと。本当に正しい知識を知ってもらうために、その問題を普通に話せる環境を作ることが、すごく必要だと感じた」と訴える。

さらに「『The PROM』はそのセンシティブな問題を、とっても素敵な音楽と笑いで表現していて、これこそがエンタテインメントの持つ力。差別と偏見がまだ世界中にあるとしたら、それは絶対我々がなくすべきだし、舞台を通して少しでもそれを考えてもらうのが、今回の大きな役割だと思います」と語った。

地球ゴージャス『The PROM』は、岸谷と寺脇のほか、葵わかな、三吉彩花などが出演。会場は「フェスティバルホール」(大阪市北区)で、チケットはS席13500円、A席10500円、B席8500円(その他席種あり)で、現在発売中。20歳以下が対象の当日引換券「PROMシート」5000円もあり。大阪では5月12日~16日に上演される(緊急事態宣言の発令を受け、5月9日〜11日は休演)。

取材・文・写真/吉永美和子

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