10円駄菓子「ヤッターめん」がデジタル化!? 社長に訊いた

2021.5.22 08:45

「ヤッター!めん」「うんちくんグミ」「パチパチばくだん」などジャック製菓の駄菓子

(写真6枚)

「ヤッター!めん」「うんちくんグミ」「パチパチばくだん」など、関西の人(特に20〜30代)ならおなじみの当たりくじ付き10円駄菓子。これらを製造・販売するのは戦後間もない昭和23年(1948年)にチョコレートメーカーとして創業された東大阪の老舗駄菓子メーカー「ジャック製菓」だ。

ほとんどの商品が駄菓子屋さんにしか流通していない超アナログな同社だが、コロナ禍をきっかけに公式サイトやインスタグラムの開設、そしてLINEスタンプの発売・・・と着々とデジタル化を進めている。その経緯について、社長の中野幹さんに話を訊いた。

コロナがもたらした駄菓子業界への影響

食べるだけでなく『遊べる』ことを大切にこれまで長年10円駄菓子を作り続けてきた同社。業績も好調だったが、2020年春に発令された1回目の緊急事態宣言の影響で売り上げが低下。「主に駄菓子屋さん向けの商品を製造していた弊社には、本当に厳しい状況でした」と、中野さんはコロナ禍で受けた影響について話す。

東大阪に工場を構える「ジャック製菓」

そこで、かねてから導入を考えていたデジタル化をついに決意。幹さんの息子で専務の傑さんが中心となり、まずはインスタグラムでの情報発信を2020年5月にスタート。その後、8月には社長描き下ろしのLINEスタンプの発売、また今年2月にはオフィシャルホームページと通販サイトを同時に立ち上げた。

「コロナ禍ですべてがストップしてしまったとき、『今できることをやろう』と決意してデジタル化を始めました。実は駄菓子業界でも近年、デジタル化を進めている会社が多く、弊社は遅い方。社内には誰も詳しい人間がいないので、本当に少しずつですが、手探りでなんとか進めているところ」と明かす。

ジャック製菓によるLINEスタンプ(左)や、インスタグラム

DX化で繋がることができたお客との関わり

デジタル化を進めて約1年、少しずつその成果も見えてきたそう。「駄菓子メーカーは主に卸さんとのやりとりが中心のB to B。そのため、駄菓子屋さんや実際に手にとってくれるお客さんとの関わりってないんです。でも、デジタル化を進めたことで、インスタの投稿にコメントやDMをいただくようになり、みなさんの反応をダイレクトに知れるようになりました」と、これまで聞けなかった駄菓子屋さんや購入者からの声も届くように。

「ジャック製菓」の中野幹社長(左)、専務の傑さん

「なかには、遠足のおやつ200円分をすべて『ヤッター!めん』に使ったお子さんの話なんかも聞けたり(笑)。使えるお金が限られているなか、たくさんあるお菓子のなかから弊社の商品にすべて使ってくれるなんてうれしいなと、とても励みになります」と、微笑ましいエピソードも多数寄せられるそう。時代が変わっても、コロナ禍でも、子どもたちにとって駄菓子は楽しさを与えてくれる存在なのだ。

中野さんは「今後はデジタル化をさらに進め、B to BからB to Cへと強めていけたら。そのためにもインスタグラムや公式サイトなど随時更新していくので、ぜひチェックしてもらえたらうれしいです」と意気込みを語る。

近年は新型コロナの影響でおうち時間が増え、家飲みする大人の駄菓子購入客が増加。大阪市西成区にある昔ながらの駄菓子屋「ナカオヤ」の店主は、「親子で来店して、『懐かしいな〜』と言いながら袋いっぱいに駄菓子を買って帰る人も多いです」と客層の変化を話し、特に金券付き駄菓子は今も変わらず人気だという。「ジャック製菓」のデジタル化はそんな需要にもマッチしそうだ。

取材・写真/野村真帆

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