悩める営業続行のミニシアター「補償体制が後退している」

2021.5.2 18:45

「悪いことをしているわけでもないけど、亡くなられた方や医療崩壊の報道を見ると苦しい気持ちと迷いが出てきます」と胸の内を明かす、第七藝術劇場の番組編成担当・小坂誠さん

(写真2枚)

東京、大阪、兵庫、京都を対象に緊急事態宣言が4月25日に発令され、大型の映画館は余儀なく休業となったが、ミニシアターは営業続行か、休業か・・・。悩ましい選択に迫られ、現在二分された状態となっている。

ただエリアによって判断は異なり、東京では床面積が1000平方メートルを超える映画館だけではなく、小規模のミニシアターなどにも独自の休業要請を命じ、休業補償金を支給。一方、京阪神ではミニシアターに対して時短協力の依頼だけで、休業要請と補償は発表されていない。

その状況下で、「休むと売上が完全にゼロになる」と営業続行を決めたのは大阪のミニシアター「第七藝術劇場」(大阪市淀川区)だ。同館で番組編成を担当する小坂誠さんは、「この約1年、全上映回・来場者に感染対策を実施してきました。しかし状況は1年前と何も変わらないどころか、補償体制などすべての面で後退している。虚しい気持ちです」とうなだれる。

このゴールデンウィーク中、緊急事態宣言の最中としては予想以上に映画ファンが来場しているそうだが、小坂さんは「他館が閉まっているからお客さまが集中している気がします。そうなると密になる可能性もあり、リスクも高まります。しかし、営業している以上はたくさんの方に来て欲しいので、人気作は上映回数を増やすなどして満席を作らず、鑑賞者数を分散させるなどの対応をおこなっています」と素直に喜べないのが現状だ。

さらに「先日、大阪では1日の死者数が最多を記録しました。亡くなられた方や遺族のことを思うと、『映画館が営業していることをどう感じていらっしゃるのだろう』とつらくなります。できることなら京阪神のミニシアターなどにも、補償を前提とした休業要請を出して欲しい。決して『休業したくない』と駄々をこねているわけではないので」と言葉を絞り出した。

同じく営業を続行する兵庫県のミニシアター「元町映画館」(神戸市中央区)の林未来支配人も「なぜミニシアターは休業要請や補償の対象にならないのか。私たちの生活はどうなるのか。仕事として認めてくれていない気がします」と語気を強める。

林支配人は、「行政の方と話し合う機会があり『文化の灯を絶やさないためにはどうすれば良いと思いますか?』と尋ねられたのですが、それを私たちに考えさせること自体、間違っているのではないでしょうか。『なんとかしてあげたい』と動こうとしていることは分かります。ただ、そもそも映画館は、灯を絶やさないために営業を続けている場所なんです」と疑問を呈する。

床面積の広さで対応が変わっている判断についても、「私たちの仕事のことをなにも知らないから、1000平方メートル以上かどうかで休業要請や補償の有無を決めてしまうんだと思います。ミニシアターでどんな映画を上映しているのか知らなかったり、そういう場所で映画を観たことない人が『どうやったら文化を守れるのか』と議論している。まず、ミニシアターに一度来て欲しい」と肩を落とした。

取材の最後に小坂さん、林支配人はそれぞれ「映画館はこれまでクラスターを出していない。これからも安全に映画をご覧いただけるように対策していくので、もし良ければ映画を観にきて欲しい」と呼びかけた。

取材・文・写真/田辺ユウキ

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