松居大悟監督「友だちになりたいと、自分が思えるキャスティングに」

2021.5.12 20:30

左から、藤原季節、若葉竜也、成田凌、高良健吾、浜野謙太、目次立樹。(C)2020「くれなずめ」製作委員会

(写真7枚)

「不安をどこにぶつけて良いのか分からなくなっていた」

──主人公・吉尾を演じた成田凌さんは、松居監督とずっと一緒に仕事がしたくて松居作品を観続けていたそうですね。

成田凌はすごい俳優でした。僕自身、吉尾という男のことをつかみ切れていなかったんです。役の正解が分からなかった。でも成田凌が演じたらちゃんと魅力的になって、筋が通り、みんなが吉尾にまた会いたくなる雰囲気になった。「吉尾って、こういうことを考えていたんだ」と、成田凌が演じる姿を見て初めて気づきました。

──あとワンシーンだけの出演ですけど、お笑いトリオ「四千頭身」の都築拓紀さんのことを、松居監督がとてもおもしろがって撮っているように見えました。

都築さんは顔がとても良いんですよね!

──前田敦子さんがゴミの分別について怒鳴り散らす場面ですけど、都築さんの受け答え方が絶妙で、前田さんもそれに乗ってどんどんヒートアップしていく。松居監督はもしかして、都築さんをメインで撮りたいんじゃないかと思えるほどでした。

芸人さんが映画に出るときって、コントとは違う芝居をするのがおもしろくて。ちょっとだけ映画俳優になる瞬間があって、僕はそれがすごく好きです。撮影は1日だけだったけど、都築さんのことをもっと撮ってみたかったですね。

成田凌演じる吉尾和希。高校時代は清掃員で、左側が後輩役を演じる四千頭身の都築。(C)2020「くれなずめ」製作委員会

──4月25、26日には2夜連続で今泉力哉監督とライブ配信をしていらっしゃいましたね。26日は公開延期発表後とあって複雑な雰囲気がありましたが。松居監督にとって今泉監督はどういう存在ですか。

友人ではないですね。なんだろう。監督という同じ職業をしている、割と気をつかないで良いヤツ。まあ、彼はやさしいからいろいろ話せるんですよね。

──好きな映画監督の話題にも広がって、松居さんは「横浜聡子監督のことが好き!」とか。

横浜さんの人となりは知ってますけど、好きな映画監督って、人となりよりも作品に漂うムードなんです。

逆に「この人は苦手だな」と思うことも当然ありますけど、人間性が嫌いなわけではなく、やっぱり作品なんですよね。僕自身、監督に対して人間性とかそこまで重要に思っていないというか。ほかの映画監督って友だちじゃないから、人柄を好きにも嫌いにもならないんです。

──今泉監督と酒を飲みながらずっとそんな話をしていましたが、あのインスタライブで公開延期のショックは少しやわらぎましたか。

いやいや、余計に猛反省でした・・・(苦笑)。今泉とふたりで飲んで話すというイメージだけでやり過ぎちゃって。人が見ているとか、忘れちゃっていて。

──途中で成田凌さんもコメント欄に降臨してきましたよね。

公開延期を発表した日、成田くんと連絡をしていて、彼もちょっと気持ちが落ち込んでいたような感じがあったんです。あのときインスタライブをのぞいてくれたのは、彼も同じようにどこか不安があったのかなって。なにより僕自身が不安をどこにぶつけて良いのか分からなくなっていたから。

──その気持ちが伝わってきました。

いろんな方が「公開日を待っています」と言ってくれるけど、でも「実際に待ってくれるかどうかは分からないよな」と考えちゃうんです。今はそう言うけど、改めて公開するときまで、「気持ちをつなぎとめられるだろうか」って。

『くれなずめ』は想いにまつわる物語なのに、どうして自分は待ってくれている人の想いを信じることができないんだろうと、情けない気持ちになります。作品のことをもっと信じられるようになりたいです。

──いや、松居監督が自分の作品をどれだけ大切に感じているか、非常によく伝わってきますよ。

2020年も監督作『#ハンド全力』がコロナの影響で舞台挨拶が一度もできず、すごく寂しい経験をしました。もう、自分の作品がそんなことになってほしくない。だからこそ、ご覧になった方はどんな感想でも良いでの書いて欲しい。そして少しでも作品が広がって欲しいんです。お願いします、みなさん。

『くれなずめ』

2021年5月12日(水)公開
監督:松居大悟
出演:成田 凌、若葉竜也、浜野謙太、藤原季節、目次立樹/高良健吾
配給:東京テアトル

(C)2020「くれなずめ」製作委員会

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