金子大地と石川瑠華主演作「互いの良さが引き出された」

2021.6.7 19:30

田中ユカを演じる石川瑠華と小山田修司を演じる金子大地。(C)2019 オフィスクレッシェンド

(写真6枚)

「現場でどんどんチューニングしながら変えていきました」

──しかしこんな脚本、どのくらいかけて書かれたんですか?

なんだかんだ1年くらいだったと思いますね。構造が肝だったんですよ。どう設計するかというのは最初こうしたいって言うのがあったんですけど、それが上手くいかなくて。

最初は、ユカの内実を表現しないことによって、他者の視点から彼女の輪郭を見せていく、といういうようなことを考えていたんです。

──いわば黒澤明の『羅生門』的な?

うん。そうなんですけどそうなるんですかね。観客を意識したとき、誰かに感情移入させながら見せるのが第1章だとしたら、第2章の段階で別の誰かに感情移入させよう、っていうような。みんなであーでもないこーでもないと話ながら出来ていったという感じですね。そこから更に現場でも、滅茶苦茶脚本の差し込み入れましたね。

──例えばどういうところ?

ラストのユカのインタビューのシーンは、前々日に石川さんにだけ渡しました。だから、ほかのキャストはだれも知らないシーンだったんですね。小山田が久子(小西桜子)を浜辺で撮るシーンも、本当はシャッター切ってバシっと次のシーンに行くくらい割り切っていたんですけど、あんまり天気が良かったんで、あそこもやって良かったですね。

──そうですよ。桜子ちゃんがほかのシーンだけで終わっちゃったら、あまりにかわいそうだし(笑)。

細かい台詞とかニュアンスは、現場でどんどんチューニングしながら変えていきました。俳優部が役を演じていくなかで方向性が固まっていくプロセスを見ていて、もっとこういうアクションを起こしていったら面白いんじゃないかというのをずっと考えてて。常にマッシュアップっていうんですかね、質を高めていく作業を現場でも忘れずにやっていった。それはなんか面白かったですね。

児山隆監督と、東京と大阪でリモートインタビュー。約1時間近くもトーク

──俳優陣はもちろんなんですけど、プロダクションの質の高さに驚くんですよ。初監督なのに素晴らしく個性的なヴィジュアルなのは、CMの仕事でも一緒に組まれてきた仲間と一緒に作られたということなんですね。みなさんCMだけでなくて、映画の現場の経験もあるようで。

撮影の松石洪介さんはもともと映画の助手からスタートされていて。照明の佐伯琢磨くんも映画の助手をやってました。

──佐伯さんは塚本晋也作品の照明をやってた時代もある吉田恵輔監督のお弟子さんなんですってね。

でも録音部の桐山裕行さんは広告だけずっとやってて。最近映画もいろいろやるようになったけどメチャクチャ優秀です。

──『くまもと映画祭』の打ち上げで、来場されてた伊藤裕規さん(日本を代表する録音技師)がつかつかとやって来られて、録音をベタ褒めされてましたよね。

とてもうれしかったですね。桐山さんとは音をずっと気にしながら作っているというか、そこはどういう設定にしたら良いのか、どういう録り方しようか、どういう機材を使おうかって滅茶オタクな話してます。その場で録音した音だけじゃなくて、別日に同じ場所の環境音を録りに行ったりするのを桐山さんはすごく能動的にやってくれるんです。

あと、録音でそんなに現場を止めない。当然、音が録れてなければそれはそれで大変なんですけど、「じゃ、ここは割り切ってあとでこういう風にやろう」とか「これとこれが録れてるから何とか成立するから次にいこう」というのは、結構現場で細かく話ながらやってました。音だけ優先するんじゃなくて、役者のテンションとか、現場のタイムリミット、そういうのを総合的に考えて結果OKにしてしまえる人ですね。

──クルーとしての一体感がグルーヴを生み出せてる感じだったんですね。

ああ、そうですね。なんか本当に良いチームでした。初めましての人もいたんですけど、作品を作ることに対して良いものを作りたいという人ばっかりでしたね。みんな同じ方向を向いていてラッキーでした。

『猿楽町で会いましょう』

2021年6月4日(金)公開
監督・脚本:児山隆
出演:金子大地、石川瑠華、ほか
配給:ラビットハウス
(C)2019 オフィスクレッシェンド

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