モダン・デザインの父、その軌跡をたどる展覧会

2021.6.16 06:15

《いちご泥棒》 デザイン:ウィリアム・モリス Photo(C)Brain Trust Inc. 1883年 木版、色刷り、インディゴ抜染、木綿 内装用ファブリック

(写真4枚)

今から100年以上前の19世紀後半に、QOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)を追求したウィリアム・モリス(1834~1896)。芸術家として活躍し、詩人、作家、社会運動家としても知られる彼の展覧会『ウィリアム・モリス 原風景でたどるデザインの軌跡』が、6月26日より「奈良県立美術館」(奈良市登大路町)でおこなわれる。

ウィリアム・モリスと言えば、「モダン・デザインの父」とも称され、今なお愛される美しい壁紙や、織物、建築、出版の仕事が有名だ。彼はなぜ、こうした事業に邁進したのだろう? その理由は、世界に冠たる大帝国として繁栄していた18世紀後半の彼の祖国・イギリスの状況下にあった。産業革命が進んだ当時、さまざまな品物が大量生産されるようになったが、その反動として多数の粗悪品が出回ることに。

モリスはそうした状況に反旗を翻し、職人の手仕事に重きを置いた「アーツ・アンド・クラフツ運動」を先導。この理念は「モダン・デザイン」の源流であり、彼の精神は現代にも脈々と受け継がれている。

「住まい」「学び」「働いた場所」など、その時々の環境と深いつながりをもったモリスの制作活動。本展では、そんなモリスの作品(壁紙、織物、書籍デザインなど)45点と、彼の仲間たちの作品(壁紙、椅子、タイル、ランプなど)35点、資料映像などを出展する。

また、大阪芸術大学教授の写真家・織作峰子が撮影したモリスにちなむ風景写真21点も展示され、モリスの生涯と軌跡が分かりやすく紹介される。インテリアのヒントがいっぱい詰まった展覧会となっており、部屋の模様替えを検討中の人にもおすすめしたい。期間は6月26日から8月29日まで、一般1200円。

文/小吹隆文(美術ライター)

『ウィリアム・モリス 原風景でたどるデザインの軌跡』

日時:6月26日(土)~8月29日(日) 月曜休 ※8/9(月・休)は開館、8/10(火)休館。
時間:9:00~17:00 ※入館は16:30まで。
会場:奈良県立美術館 奈良市登大路町10-6
料金:一般1200円 大高生1000円 中小生800円 
電話:0742-23-3968

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