新人女優・駒井蓮が魅せた三味線「人の顔を思い出しながら」

2021.7.1 18:45

主人公・いと役を演じた女優・駒井蓮

(写真12枚)

自分をさらけ出せない主人公・いとの成長や、ともに暮らす父や祖母との家族の形を描いた映画『いとみち』。メイド喫茶で始めたバイトをきっかけに遠ざけていた三味線と向き合い、ラストでは周囲の人を驚かせるような演奏を魅せた。そんないとを演じたのは、同作で映画単独初主演だという青森県出身の新人女優・駒井蓮だ。見事な三味線で映画を締めた駒井と、メガホンを取った横浜聡子監督に話を訊いた。

取材・文/ミルクマン斉藤

駒井「緊張で手汗が止まらなくて(笑)」

──ラストの駒井さんの三味線が圧巻でした。でも三味線、撮影の1年前まではまったくの素人だったんですってね。

駒井:そうなんです!

──すごいなぁ。弦楽器もやってなかったの?

駒井:ギターをちょっと趣味でやるくらいだったんですけれど、全然違いますね・・・。フレットがないし、弦の数も少ないし。ギターなら右手もいろんな弾き方があると思うんですけれど、バチ使いだけでいろんな弾き方をこなさないといけなくて、あっちもいっぱい、こっちもいっぱいって(笑)。

──高橋竹山 (1970年代、津軽三味線の魅力を全国に知らしめた名手)の一番弟子で、おばあちゃん役の西川洋子さんとのデュオも見事でした。

駒井:(デュオは)すごくドキドキしましたし、胃が痛くなりました。私は小山貢さんっていう、東京で津軽三味線を教えてらっしゃる師匠の元で稽古したんですけど、小山さんがたくさん褒めてくださる方なんですよ。「大丈夫だよ」とか「これやってみて。いけるよ」って褒めてくださる方だったので、あんまり三味線に関して出来てないと言われたことがなかったんです。実際に西川さんと初めて一緒に弾くってなったときは、緊張で手汗が止まらなくて(笑)。

祖母(西川洋子)といと(駒井蓮)が一緒に三味線シーン (C)2021「いとみち」製作委員会

──物語の設定としても、経歴の長さから来る差はあるだろうし、実際に力量は対等ではないんだけど、そこがいっそうリアルで。観てる者はあそこでガーンって来る。

横浜:セッション・シーンは最初からシナリオにあったんですけど、本当に成立するのかなって(笑)。いや、成立してるだけでもすごいことですね。

駒井:小山さんのところに稽古には行ってたんですけど、自主練ずっと1人でしてたんですね。でも、出来ているのか出来ていないのか、その評価が分からなくて。どこまで出来ればいいのかも分からないし。終着点がないからこそすごく不安だったんですよ。けど、青森に来て西川さんと三味線やったり打ち合わせしたりするなかで、「あ、今までやってきてることで合ってたんだな」って、つっかえが段々取れていって。ほんとにそれまではずっと不安でした。

──でも、西川さんも褒めてくれたでしょ、あれは。

横浜:「ここまで弾けるようになったのは信じられない。彼女はすごい」ってずっと言っていたので、間違いない。

映画『いとみち』

全国の劇場で公開中
監督:横浜聡子
出演:駒井蓮、豊川悦司、黒川芽以 ほか
配給:アークエンタテインメント

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