「映画史に残る悪役」を描く白石和彌監督「作り手の誠意」

2021.8.28 20:15

メガホンを取った白石和彌監督

(写真8枚)

「前作の役者が作った雰囲気を、追っかけて作ってくれた」(白石和彌監督)

──キャスティングといえば、斎藤工とか渋川清彦は前作にも出てたみたいな馴染みようで。白石監督にかかると、そういう面つきにしちゃうのが上手いなぁと。

白石:それは前作の役者さんが作ってくれた雰囲気を、みんな追っかけて作ってくれたんですよ。(前作で主演をつとめた)役所さんのことを桃李くんと亮平くんが話してるなと思ったら、翌日の芝居で「ちょっと役所さんの芝居入れてないか?」っていうことも結構あったり。

──桃李くんは役所さんの芝居入ってても全然おかしくないですよね。ああいう(役所演じる大上のような)刑事になろうと決心したんですから。

白石:日岡の場合は、父親みたいに思っている大上のようになろうとするのと、大上のようには終わらないぞっていうのが入り混じった複雑な感情じゃないですか。それで真似するのは悪くないと思ってたんですけど。でも上林まで入れる必要ないんだけど、役所さんの芝居が入ってたりするんですよ(笑)。

──あはは(笑)、それはシリーズの「血」ってことで。このシリーズは、役所さんというか、大上の血がどう受け継がれていくか、ってことがはっきりしたので。あと今回のキャストでいうと、村上虹郎さんがすごく良い!

白石:彼は元々、モノが違う感がありますね。両親は俳優・村上淳と歌手・UAということもあり、いろんな感性のなかで育ってきたって感じがものすごくして。フォトジェニックかつ、あんなに芝居が上手い・・・、感動しましたね。

スナックのママ・真緒(西野七瀬)と、刑事・日岡(松坂桃李) (C)2021「孤狼の血 LEVEL2」製作委員会

──彼のお姉ちゃん・真緒役に西野七瀬を持ってくるっていうのは意外でした。

白石:西野さんのことは、乃木坂46のときから好きだったんです。真緒は両親がおらず1人で家を回してて、芯があって、でも弟のことを心配してる、必死な感じが西野さんに合うんじゃないかなと。一か八かでオファーしたら、「やります」って返事も早くて。でも西野さんに実際にお会いすると、「不安しかありません」みたいな感じでした。

──今まであんな役なかったでしょうしね。あと上林の舎弟には、白石監督の作品『止められるか、俺たちを』(2018年)に出ていた毎熊克哉さんがいて。その横でやたら気色ばってるのは、ダンスパフォーマンスユニットのs**t kingz(シットキングス)のOguri、小栗基裕だった。

白石:彼は映画出演は今回が初めてだそうです。オーディションに来てくれたんですよ。僕は失礼ながら、そんな有名人だって知らなくって。芝居見たら面白くて、すぐ決まりました。

──なんか前作の中村倫也みたいな勢いがあって良かった。

白石:そうそう、そんな感じ。暴力団のキャストでいうと彼のほかにも、早乙女太一ってヤバい天才がいる。彼は小さいときから旅回りをしていて、ヤバそうな人いっぱい見てるんですよ。

──佇まいがイイですもんね。そういえば、キャスティングの極めつけといったらやはりかたせ梨乃さん。

白石:そうなんです! キャスティングオファーしたら、「なんだと思ってるの」と怒られるかと思ったんですけど、すごく喜んでくれました。

──しかも役名が「環」(笑)。わざとでしょ?(『極道の妻たち』シリーズで岩下志麻演じる主人公の名が環、かたせはその妹・真琴を演じていた)

白石:わざとです(笑)。でも、この作品の設定が1991年あたりなんですよ。ファッションだとか、当時の様式とか、有り体に言えば極妻の時代。なので、何度も参考に見ました。それにしても、さすがかたせさんでしたね、レジェンド感ですよ。一瞬で空気をそこに持っていくし、とにかくすごかった。亮平くんは、1番怖かったのはかたせさんだって言ってました(笑)。

映画『孤狼の血 LEVEL2』 R-15

全国の劇場で公開中
監督:白石和彌
原作:柚月裕子「孤狼の血」シリーズ(角川文庫/KADOKAWA刊) 企画協力:KADOKAWA
出演:松坂桃李 鈴木亮平 村上虹郎 西野七瀬
斎藤 工 ・中村梅雀 ・ 滝藤賢一  中村獅童  吉田鋼太郎 ほか
配給:東映

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