自分を馬だと思ってる牛が六甲山に…話を訊くとドラマがあった

2021.9.2 08:45

ランボルギーニに乗る前田さん(写真提供:六甲山牧場)

(写真3枚)

のどかな牧場でホルスタイン牛が人を乗せる、乗馬ならぬ「乗牛」の写真がツイッターで2万いいねがつくなど突如話題に。写真とともに投稿された「六甲山牧場には自分の事を馬だと思っている牛がいます 名前はランボルギーニ!!」との文言に、リプ欄には「この光景は衝撃的すぎる」「ランボルギーニみたいに早く走るの?」など、反響が続々寄せられている。

投稿主は、動物たちとふれあえる兵庫県の「六甲山牧場」(神戸市灘区)。そもそも、なぜこの牛は自分のことを馬だと思うようになったのだろう・・・? そんな素朴な疑問をぶつけてみると、「実はこの子、語りだすといろいろとドラマがあるんです」と返答が。5年近く、ランボルギーニを担当してきた飼育員の前田浩樹さんに話を訊きました。

◆ 馬に混ざり約5年育てられた乳牛「ランボルギーニ」

──ランボルギーニは乳牛ですが、生まれたときから馬とともに育ってきたのでしょうか。

生後3カ月までは乳牛舎で育ち、離乳のタイミングで馬舎に移りました。その後は5才の現在まで、馬に混ざり成長してきました。

──話題のツイートでは前田さんを乗せていますよね。ランボルギーニは人に触られることに慣れているのですか?

もともとうちの乳牛たちは人に慣れている方なのですが、特にランボルギーニは人が大好き。人懐っこく、名前を呼ぶと寄ってくるほどです。

──前田さんは10年以上、馬舎を担当されているとか。突然牛を担当するとなって、驚いたのでは?

実は、ランボルギーニを馬舎で育てることは僕が提案したことなんです。馬のトレーニングや世話をするなか、牛も馬も同じ大型の草食動物で、どちらも人と関わってきた歴史が深いということに気づきました。

もしかしたら、乳牛も馬と同じようにトレーニングすれば人を乗せるようになるんじゃないか・・・。そう思い上司に相談したところ、「面白そうだ」となって。そのタイミングで生まれたのが、ランボルギーニなんです。

──「乗牛体験」も計画中だとか。

以前からランボルギーニファンはいて、「乗ってみたい」という声を聞くこともありました。ただ、年齢的にまだ人を乗せられるような状態ではなく・・・。身体も成長した今「そろそろデビューをさせたいな」、そんな思いであの投稿をしたんです。

幼少期のランボルギーニ。まだ仲間に入れていない様子(写真提供:前田浩樹さん@npizY6bO6hlXXfp)

◆ 馬の仲間として徐々に認められていく

──ほかの馬との関係も気になるところです。

馬たちも、初めは「なんだこいつは?」というような目線で見ていたようです。段々と、ぽつぽつそばに近寄っていく馬が出てくる一方で、「群れの一員として認めない!」というような態度の馬もいたり。

「ジージー」という3~4年前に競走馬を引退した馬がいるのですが、その子と特に仲良しです。今回投稿した写真にも写っているのが、そのジージーで。

──ジージーとは最初から仲が良かったんですか?

「ヤスヒデ」という馬がいるんですが、初めはヤスヒデとランボルギーニ、ヤスヒデとジージーで放牧していたんですね。このヤスヒデがかなりヤンチャで、2頭にちょっかいをかけるんです。

それなら、3頭を一緒に放牧すれば矛先が分散されるんじゃ?ということで同じグループに。すると、いたずらを仕掛けられている同士で結託したのか、ジージーとランボルギーニの仲が深まったんです(笑)。

でも、ランボルギーニはヤスヒデにも歩み寄っているんです。はじめは嫌がられながら、1年をかけて積極的関わっていくうち、ついにはヤスヒデとも仲良しになりました。

仲間の馬と寄り添うランボルギーニ(写真提供:前田浩樹さん@npizY6bO6hlXXfp)

──素敵なお話! 人間界の関係性にも通じるものがありますね。

そうなんです。そんな光景を見ていると、こちらが気付かされるというか、大事なことを学べるような気持ちになりました。

──そんな馬たちとの友情や、ランボルギーニが動いている姿をぜひ見てみたいです!

今後「乗牛体験」の日程や、走行動画などもどんどん投稿していくので、ぜひSNSをチェックしつつ待っていただければ。

「六甲山牧場」の営業時間は朝9時から夕方5時(入場は閉場30分前)。入場料は大人500円、小・中学生200円(幼児無料)。

取材・文/つちだ四郎

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