【連載No.13】見取り図リリー、山口晃展を観る

2021.9.3 12:35

和を感じさせてくれるのが、山口晃さんの作品。懐かしさを感じさせつつ、どこか新しいのが特徴です

(写真14枚)

アート大好き芸人「見取り図リリー」が、色々なアート展を実際に観に行き、美術の教員免許を持つ僕なりのおすすめポイントをお届けするという企画「リリー先生のアート展の見取り図」でございます。今回は京都・祇園にある小さな美術館「ZENBI-鍵善良房-KAGIZEN ART MUSEUM」(京都市東山区)でおこなわれている『山口晃-ちこちこ小間ごと-』展です。

まずはじめに、今年オープンしたこの美術館の館長は、なんと江戸時代から続く老舗和菓子屋「鍵善良房」の15代目の社長なんです。社長兼館長! そして、12代目が、人間国宝である黒田辰秋(たつあき)さんと親交が深かったそうで、たくさんの作品を所有されていることから、山口晃さんなりに黒田辰秋さんの作品を展示してるのも見どころのひとつです。漆(うるし)や螺鈿(らでん・貝殻の内側のきれいな方を貼っている装飾技法)を見たら、人間国宝!と思ってください。

そして、山口晃さんがまぁすごい。日本美術の手法を取り入れつつ、油絵の技法で描く画家。現在52歳で「成田空港」の出発ロビーのパブリックアートを手がけたり、2021年のパラリンピックのポスターも手がけています。ただ、それだけじゃなくマンガや立体作品、空間演出も手がけたり、すごすぎ!

全部で3つの部屋があり、その1室目で目に入ったのは、「好きなカフエーのおじさん」という作品。この絵なんですが「鍵善良房」さんの紙袋に実際デザインされている絵なんです。おじいさんがゆったりお茶している姿を子供や犬が見ていて、すごく温かみを感じる絵でした。和菓子買ってこのデザインの紙袋なら、そらうれしい。

ほかの作品でびっくりしたのは、黒田辰秋さんの作品を山口晃さんが並べている作品なのですが、これが自由なんです! 子どもがなんの固定観念を持たず並べたように、自由に展示していて、さらに展示台まで逆向きに置くという発想。黒田辰秋さんの作品を使って、空間そのものを作品にしてしまうという神技でした。

あと、これもすごかった。壁に四角いダンボールが貼られていて、気になり美術館の方に理由を聞くと、ダンボールに目がいくとそれをきっかけに、壁はこんな色で、こんな所に窓があるんだなど色々な考えを深められるということ。本当に空間そのものをアートにしてるんだなと感動しました。ただただ何も考えず、適当に棚やテレビを置いているだけの自分の部屋が恥ずかしくなり、頭のなかで焼き払ってやりました! ほかにも空間にさまざまな仕掛けがあったので、そこも想像して楽しみながら鑑賞して欲しいです。

『親鸞』挿画の部屋にて

2室目には、新聞で連載していた五木寛之さんの『親鸞』という小説の挿絵の原画がたくさん。これぜひ観てほしいです。当たり前なのですが、まぁ絵がうまい。線がきれいすぎ! 上手いだけじゃなく、本当に同じ人が描いたのかと疑いたくなるほど、1枚1枚、作風、タッチ、使っている画材などさまざま。何個の顔を持ってるんですか、キングギドラ越え!

あと個人的に、浮世絵調の絵のなかに現代人や現代の景色が入り混じっていて、その不条理さといいますか、パラドックス感といいますか遊び心がありとても好きな作品でした。ほかにも雑誌の表紙を描いた原画もあり、間違いなく只者じゃないなと確信しました!

そしてグッズショップも併設しており、山口さん、黒田さんのグッズなどがあります。機嫌良く僕がお土産を見ていると、ひとりの男性が来ました。ダンディなイケメンのおじさまが。お客さんかなとか思っているとき、話しかけてくれました。

っっっ!!?? な、なんと鍵善良房の現社長だったんです(!!!) 動揺とあせりがばれないよう冷静をよそおって「見取り図リリーと申します、今日はありがとうございます」となんとか言ったんですが、内心は地面に頭をすりつけ「しゃ、社長!!どうかどうかなんでもやるんで見取り図に仕事をください社長ーーー!!!」と叫びちらかすギリギリでした。

『親鸞』の挿画に登場する、「ためいきちゃん」が和菓子に。こちらは会期中であれば「鍵善良房本店」で販売されています。1個600円

そんな社長から山口晃さんと鍵善良房さんのコラボ和菓子もいただきました。作品にも出てくる「ためいきちゃん」の顔が焼印で押されているのですが、かわいすぎ。味はさすが老舗とあって、上品な味でした。いやぁ、この美術館の後に「鍵善良房」さんに寄ってあの紙袋でお土産買って帰るなんて、グルメも楽しむアートもありなんじゃないでしょうか。歩いてすぐですしね! 皆さま、感染対策を充分に足を運んでみて下さい。

『山口晃-ちこちこ小間ごと-』

絵画だけでなく、立体、新聞雑誌の挿画やインスタレーションなどさまざまなジャンルで活躍する山口晃の企画展。今回の展示では黒田辰秋の作品を使用したインスタレーション、五木寛之の小説『親鸞』の挿画、京都を訪れて描いた作品などを展示。『親鸞』挿画は9月14日、10月19日で展示内容が変更。期間は11月7日まで、一般1000円、中学生〜大学生700円、小学生以下無料。

【見取り図の近況】

単独ライブ『バックトゥザミトリズ』を9月16日にやります、こちらオンライン配信もしているのでぜひ。そのほかにも『よしもとお笑いライブ~初秋の祭典! 森ノ宮WWホールに大集合~』をはじめ、「よしもと漫才劇場」に出演しています。ちなみに、今回着ているTシャツは、僕が住む岸里への思いを込めた「KISI VILLAGE(岸里)」。「CLASSY GRAPHIC T−SHIRTS SYNCLAPH」でオンライン販売中。

『山口晃-ちこちこ小間ごと-』

期間:2021年7月6日(火)~11月7日(日)
※9月14日(火)からほぼすべての作品が替わる
『親鸞』挿画は~9/12(月)、9/14(火)~10/17(日)、10/19(火)~11/7(日)で展示内容が替わる
時間:10:00~18:00(入館は17:30)月曜休館(祝日の場合は翌平日)
会場:ZENBI-鍵善良房- KAGIZEN ART MUSEUM(京都市東山区祇園町南側570-107)
料金:一般1000円、大学・高校・中学生700円、小学生以下無料
※会期中4回入館できる限定パスポート(3000円)もあり

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