園子温監督、ハリウッドデビューは「色を付けたくなかった」
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『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』でメガホンを取った園子温監督
『冷たい熱帯魚』(2010年)、『新宿スワン』(2015年)などで知られる園子温監督のハリウッドデビュー作『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』が、10月8日より日本でも劇場公開される。同作は、銀行強盗で投獄された主人公「ヒーロー」が、自由を手に入れるために、行方不明中のひとりの女性を探し回る物語だ。今回は同作の話を中心に、今後の展開についても訊いた。
取材・文/田辺ユウキ
「僕にとっては文句のない話だと思った」
──主演のニコラス・ケイジはもともと園監督のファンだったそうですね。
なぜ僕の映画に出ようと思ったのか、と尋ねたとき、「『紀子の食卓』(2005年)と『アンチポルノ』(2016年/ともに園監督の過去作)が大好きなんだ」と言っていて、「とんでもなく変わった人だな」と(笑)。
──どういった経緯でニコラス・ケイジの主演が決まったんですか。
まずこの映画の企画の発端は、2017年くらいにメールで「この企画をやってみないか」と台本が届いたことなんです。それから約1年後「ニコラス・ケイジがこの映画に出たいって言っているけど、どう?」って、僕にとっては文句のない話だと思いました。ただ予算の関係もあるでしょうし、ハリウッドのビッグスターはギャラもものすごいから「お任せします」とだけ伝えていました。
そういうやりとりをしていたらニコラス・ケイジが用事で東京へやって来たので、お会いしたんです。で、「僕は君のファンなんだ」と言ってくれて。その夜は安い居酒屋の飲み放題2時間コースで盛り上がって、カラオケにも行きました。それから友だち感覚での付き合いが始まりました。
──『リービング・ラスベガス』(1995年)でアカデミー賞主演男優賞を受賞するなど、ハリウッドの大スターで知られるニコラス・ケイジですが、近年はハリウッド超大作とは距離を置いている感がありますよね。
まあ、そもそもニコラス・ケイジ自身がハリウッドの歴史を横断してきた人物ですし、いまさら『ザ・ロック』(1996年)のような作品に出る感じでもない(笑)。ギャラは気にしないから自分が好きなものに出ようとなったらしいんです。
※編集部注/『ザ・ロック』:ショーン・コネリー、ニコラス・ケイジが主演したアメリカの大規模なアクション映画
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──そういう姿勢は、園監督もシンパシーを抱くんじゃないですか。
いやいや、僕は彼のようなそんなきらびやかな半生はないですから(笑)。彼はフランシス・フォード・コッポラ家に生まれて、ハリウッドの貴族のようなもの。ニコラス・コッポラという名前だとそういう風に見られるから「ケイジ」に変えたそうです。
それに現在の付き合い方としては幼馴染のような感覚です。だけど撮影中、カメラのモニターに彼の顔がアップで映ったとき「・・・これ、ニコラス・ケイジじゃん!」と、ふと我に返るというか。そういうときは、ハリウッド映画を撮っているんだって意識に戻りますね。
※編集部注/フランシス・フォード・コッポラ:アメリカの映画監督 娘と息子も映画監督で、ニコラス・ケイジは彼の甥
──たとえば年末、映画のベストテンなどを選ぶ際もこの映画は「海外映画」「外国映画」に振り分けられるんですよね。
そうです、アメリカ映画です。もともとメキシコで撮影する予定だったけど、僕が心筋梗塞で倒れちゃって。ニコラス・ケイジが体調を心配して、「メキシコで撮る必要ないよ、日本でやろう」と言ってくれたんです。
メキシコで撮りたかったからちょっと残念だったけど、ニコラス・ケイジを主演に日本でハリウッド映画を撮るのは海外から見たらむしろフレッシュじゃないかと考えました。日米合作みたいに思われてしまうけど、まったくそうじゃない。レオナルド・ディカプリオの『ブラッド・ダイヤモンド』(2006年)ってアフリカが舞台だけど、アフリカ映画ではないじゃないですか。今回の映画もそういう感覚なんですよね。
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