時代に媚びずに21年、「おもろい」を追求し続ける笑い飯

2021.11.20 19:45

お笑いコンビ・笑い飯(左から西田幸治、哲夫)

(写真5枚)

芸人は裏を見せない環境で育って、それを実践している(哲夫)

──哲夫さんはいかがですか。

哲夫:「お寺めぐりの番組とかやらないんですか」とかよく聞かれるんですけど、そういうチャンネルって多いじゃないですか。企画を盗み取りしている気になるから、それはやりたくないんです。テレビでもお寺さんに関する企画は多いし、そもそもそういう内容のフォーマットを作った人がいらっしゃるなかで、自分の名前を出してYouTubeでやるのは違う気がするんです。でも基本的に、YouTubeに対してのこだわりはゼロですよ。

──YouTubeってその人の裏側や素顔が覗けたりもしますよね。そこがおもしろかったりする。だけど笑い飯は『M-1』出演時も密着映像や舞台裏インタビューでは必ずふざけていましたし、そもそも裏を見せるのが好きじゃないのかなって。

西田:それはそれでおもしろいものはたくさんありますよね。それにYouTubeなんかで知られざる裏側を見せると、話題になったり、再生回数も上がったりするでしょうし。つまり人の裏側って、多かれ少なかれお金にはなるんじゃないですか。だけど厳密に言うとそういう手法は、僕の好みではないですね。見せるか見せないかは、それぞれが考える品性の話なのかなって。

哲夫:『M-1』の裏側に密着した『アナザーストーリー』とかあるじゃないですか。あれは大好きでよく観ているんです。ミルクボーイやマヂカルラブリーの回はめっちゃ泣きました。でも基本的には僕も、「芸人は裏を見せない」という環境で育ったのでそれを実践しています。

1980年代に萩本欽一さんの『TVプレイバック』(フジテレビ系)という番組があったんですけど、ドリフターズのメンバーがいつも出演していて。そこでは、普段のコントでは観ることがないメガネ姿や、おっちゃんっぽいセーターを着た姿で登場していたんです。そういうところにドリフの素顔をちょっと覗けた気になっていた。芸事が表側だとしたら、裏側の分量としてはメガネとセーターくらいがちょうど良いですね。

「これくらいの世代で全国ツアーは珍しいと思う。仕事は長いことしたいですよね」と語った西田幸治

舞台だろうがテレビだろうが、場所はどこでも良い(西田)

──以前放送された『やすとものいたって真剣です』(ABCテレビ)のなかで、藤崎マーケット・トキさんが「笑い飯さんや千鳥さんがトップだったときのbaseよしもとの時代に戻りたくない。おもしろくなければ人にあらずんば、という空気が本当に怖かった」とおっしゃっていました。だからお2人のおっしゃっている「おもしろいと言われたいだけ」「笑わせたいだけ」という言葉がものすごくシビアに聞こえます。

西田:まあ、確かに藤崎マーケットの「ラララライ体操」のことを一度も褒めたことはないですからね(笑)。それに藤崎もあれが一番おもろいと思ってやっていたわけじゃないはず。だから、僕たちに対しては「きっとこの人らはおもしろくないと感じてはるんやろうな」と、どこかで後ろめたい気持ちがあったのかもしれませんね。

哲夫:トキは今「リズムネタ撲滅運動」の冊子を自分で作っているくらいやし。当時は「ララライ体操」を多くの人が求めていたけど、自分が本来やりたいスタイルとは違っていたかもしれませんしね。あと僕らの若手時代も、そういう怖い先輩はいましたから。特に中川家の礼二さんは怖かった。その恐ろしさをくぐり抜けているから、ある程度のことは耐えられる体になりました。

西田:全国ツアーだろうが、舞台やテレビだろうが、笑わせることができるなら場所はどこでも良い。そして、とにかくおもしろい人たちと仕事がしたい。もしおもしろい人たちがテレビの人気者になったら、そのテレビに出てずっと一緒に仕事がしたい。おもしろい人たちがいる場所に行きたいんです。

哲夫:個人的にはテレビに関しては、どんな形であっても大丈夫だから出させていただきたいんですが、コンビとしてはお任せで良いですね。ただ、千鳥があれだけテレビで売れてくれたのは自分にとってものすごく大きい。彼らはずっと一緒にやってきたし、おもしろいと思うものが似ていた。だから千鳥のふたりがテレビで何か話していると、何だか自分がそれを言っているような気持ちになるんです。リモートで僕の伝えたいことが言えている気になれるというか。

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