【連載vol.14】見取り図リリー、メトロポリタン美術館展を観る

2021.12.18 10:45

こちらが、ペトルス・クリストゥスの《キリストの哀悼》。より暮らしを感じる宗教画になっています。時代とともに変化していくさまを見てみてください!

(写真11枚)

アート大好き芸人「見取り図リリー」が、色々なアート展を実際に観に行き、美術の教員免許を持つ僕なりのおすすめポイントをお届けするという企画「リリー先生のアート展の見取り図」でございます。今回は「大阪市立美術館」(大阪市天王寺区)で、2022年1月16日まで開催中の『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』です。

この展覧会では、15世紀初期ルネサンスから19世紀のポスト印象派までの約500年の西洋絵画の歴史がわかるんです。とりあえず、まず感情的に言わせて下さい。この展覧会めちゃくちゃすげぇじゃねぇか! もう当たりも当たり、大当たりの展覧会!!! まじで作品のラインアップがすごすぎる!!!! ビックリマークの数で興奮が伝わるでしょ!!!!!

僕、リリーの勝手な推しなんですが、ルーベンス、レンブラント、ベラスケスの天才御三家が同じ展示で観られるとは。ほかも、やばすぎで、パッと思い出すだけでも、クラーナハ、ティツィアーノ、エル・グレコ、カラヴァッジョ、フェルメール、ゴヤ、ターナー、マネ、モネ、ドガ、ゴーギャン、ゴッホ、セザンヌ・・・。もう止まりません、興奮!

一度落ち着きましょう。まず、「メトロポリタン美術館」というのはアメリカのニューヨークにある、とりあえず超でかい超有名な美術館です。その美術館から選りすぐりの65点が集まったんです。しかも日本初公開は46点も。これも、こちらの美術館のヨーロッパ絵画部門の常設展ギャラリーが改修工事中ということで、実現できた内容なんです。

さて、西洋美術の歴史は、めちゃくちゃ簡単にざっくりいうと、教会に頼まれた絵画→国王や金持ちに頼まれて描く絵画→画家が自分たちの感覚で描き出す絵画。というような流れなんですが、これだけ頭に入れて、作品を観ていくだけでも時代の変化に興奮しながら観ることができる展覧会になってます。

1室目から作品がいきなり超大物! フラ・アンジェリコの《キリストの磔刑》(1420〜23年頃)から始まります。まだ油絵という技術がないときの宗教画で、初期ルネサンスの画風を観ることができます。このときは、板の上にテンペラという、卵と絵の具を使って描いている技法です。

そして、ペトルス・クリストゥスの《キリストの哀悼》(1450年頃)は、先程のアンジェリコの作品から約30年後。油絵具で描かれるようになり、宗教画という題材は同じなのですが、画面上には広がる空や、道を歩く人など、それまでにはなかった風景が描かれています。こうやって、表現方法や技法の変化を順番に見ていくと感じることができます。

そこからさらに50年後のルカス・クラーナハの《パリスの審判》(1528年頃)ではタブーとされていた女性の裸が登場し、風景の方がメインではないかという構図で宗教画が描かれています。趣味や感性が入ってきてますよね!

どの作品も見入ってしまうものばかり!

そしてさらに時代は移り、1600年代に入ると宗教画のためだけではなく、国王ら権力者からの依頼で描くようにもなります。ディエゴ・ロドリゲス・デ・シルバ・イ・ベラスケスの《男性の肖像》(1635年頃)などがそうです! 写真がない時代とあって、肖像画で権力や威厳を示そうとしたんですね!

そしてジョルジュ・ド・ラ・トゥールの《女占い師》(おそらく1630年代)は、占ってもらっている男が占い師に集中している隙にほかの女がポケットの中身や持ち物を、盗んでいる瞬間を描いています。もう宗教画なんての要素はまったくなく、まるで物語の一場面です。エンタテインメントの要素が強くなってます!

フランス国王の権力がピークだった頃のジャン・オノレ・フラゴナール《二人の姉妹》(1769〜70年頃)もあります! ルイ15世の愛妾であるデュバリー夫人に絵を描いたのに気に入られなかったなんて過去もある画家なのですが、フランスを代表する画家のひとりで、ロココ時代ならではな華麗で繊細なタッチに注目です。個人的にフラゴナールを観られてうれしかったです!

篠館長に説明してもらって、男の人が財布をすられていることに気づきました! ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの《女占い師》

1800年代になると完全に絵画のあり方が変わってきます。教会や王室など関係なく、絵を求める金持ち階級の人たちが購入者となってきます。そこで、カミーユ・コロー《遠くに塔のある川の風景》(1865年)では情緒のある風景が描かれています。

ここから一気に絵画表現は解き放たれます、セザンヌ、ルノワール、シスレー、モネ(いつもとちょっと違う《睡蓮》があります)、ゴッホ、ゴーギャンの作品がずらりと並んで、この展覧会は終わります。西洋美術の流れを見てきて、後半に展示された印象派の作品の爆発感は圧巻です。

展示の仕方にもこだわっていて、例えば、一緒に住んでいたこともあるゴッホとゴーギャンの絵を隣り合って並べてたり、同じ国の同じ時代の画家の作品を並べて違いを楽しませたり、色んな工夫がされてました。はぁはぁはぁ、言葉だけじゃ伝えきれない事だらけです!!

ちなみに今回は、「大阪市立美術館」の篠館長と一緒に、解説を受けながら観させてもらいました。さすがは展示の順番などを決めた館長。細かい情報や、この額縁はこの模様だからオランダのやつだとかめちゃくちゃ色々教えてくれました。一度じゃ覚えられなかったんで、今度一緒に2泊3日くらいでグランピングでも行ってくれんかなぁ。

「大阪市立美術館」の篠雅廣館長(左)と一緒に巡りました。絵の展示方法に篠館長のこだわりが詰まっています! 次の展示室に進む前に、通路から何が見えるのか、そんなこともチェックしてみてください

『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』
世界三大美術館のひとつである、アメリカ・ニューヨークの「メトロポリタン美術館」。今回はヨーロッパ絵画部門のコレクションより、15世紀初期のルネサンス絵画〜19世紀のポスト印象派までの名作65点を展示。「信仰とルネサンス」「絶対主義と啓蒙主義の時代」「革命と人々のための芸術」の3章を通じて、西洋絵画の500年を彩った名画を紹介する。大阪展の会期は2022年1月16日まで。料金は一般2100円、高大学生1500円(東京では「国立新美術館」で、2022年2月19日〜5月30日に開催)。

【見取り図の近況】
YouTubeの『見取り図ディスカバリーチャンネル』では、今年150本を目指して次々と公開中です(目標を達成するために、一部は仕事の合間にスマホでも撮っています。達成できない場合のペナルティもアリ)。僕の第二の故郷である岸里を特集した企画や、相方の彼女気分が味わえる企画などいろいろあるので、チャンネル登録ぜひ。2022年の年始は「よしもと漫才劇場」をはじめとした劇場にたくさん出演します!

※館内は主催者の許可を得て撮影。

特別展『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』

期間:2021年11月13日(土)〜2022年1月16日(日)
時間:9:30〜17:00(入館は閉館30分前) 月曜休(1月10日は開館)
会場:大阪市立美術館(大阪市天王寺区茶臼山町1-82 天王寺公園内)
料金:2100円 高大生1500円 ※日時指定予約優先

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