劇団ひとり監督、浅草キッドを映画化「一番尊敬してる人」

2021.12.14 17:45

映画で監督・脚本の両方を務めるのは、『青天の霹靂』(2014年)以来2本目の劇団ひとり

(写真6枚)

「見えすぎるよりも、見えないワクワク感が欲しい」

──今回、門脇麦さんが出てられるんですけど、門脇さんとか鈴木保奈美さんは初めてですね?

そうですね。今回の映画で、唯一実在しないのが門脇さんのやった千春という役で。踊り子さんのドラマも欲しかったですし、踊り子さんから見たたけしさんも欲しかったので。門脇さんは、本当に細かい表情を作るのがお上手でね。特にツービートの漫才を初めて見たときの千春の表情は、ちょっと見ててシビれましたね。

──あれ、誰もがシビれると思いますよ。

ねぇ。で、保奈美さんが演じた深見師匠の妻・麻里役は、最後まで難航して。昭和の芸人、破天荒な芸人を支える妻みたいな、そういうステレオタイプになるのがイヤだったんですよね。そんなとき、クイズ番組で鈴木保奈美さんとご一緒する機会がたまたまあって、そのとき、「この人だったら、深見師匠と対等に渡り合えるな」と思って。

──経験者ですもんね。

それもちょっと面白いなと思って。僕はあんまり見えすぎることが嫌いで、見えないワクワク感が欲しいんですよね。やっぱり保奈美さんにして良かったなぁって思います。麻里さんがすごくかっこよく見えたし、深見師匠はそれで可愛く見えたし。

──たけしさんの曲『浅草キッド』でおなじみの居酒屋「捕鯨船」にいたり(笑)。あのセットは全部作られたんですか?

いや、あれはロケです。「捕鯨船」ではない、別の居酒屋さんをお借りしました。実際の「捕鯨船」はね、かなり狭いのでロケには不向きだし、実際に芸人のサインが山ほどある。

たけしと深見の関係について、「自分で撮りながらも良い関係だなぁと」と語った劇団ひとり

──まぁ、浅草と言えば「捕鯨船」ですからね。

ただ、「捕鯨船」の大将は、前回の『青天の霹靂』で「捕鯨船」を出したときもそうだったんだけど、いわゆる煮込みをスタッフが買いに行くんですよ、映画で使うから。それを買い取ろうとすると大将が「劇団ひとりから金を取る訳にいかねぇ」っていつもただでくれるんですよね。

──舞台となった「浅草フランス座演芸場東洋館」(通称:フランス座)はどうだったんですか? 今と昔じゃ全然違うじゃないですか。やっぱり全部作られたんですか?

あれは長野にある劇場でやらせてもらったんですよね。それも『青天の霹靂』のときに借りた劇場。明治時代の天井なのかな? 結構昔のまま残ってて、梁や雰囲気がすごく良くて。そこの支配人がすごく協力的なんでね。「上田映劇」って場所なんですけど、そこにお願いして。

──あ、「上田映劇」聞いたことあります。実に美術と撮影もすごいなと思ってたら、エンドロールのクレジットに、磯田典宏さんの名前があって。磯田さんといえば、北野映画常連の美術さんですけど、それは意識されたんですか?

実はコロナの影響で磯田さんが取りかかってた映画が流れちゃって。こっちは棚ぼたなんですけど、磯田さんのスケジュール空いたっていうのでお願いしたんですよ。すごい大ベテランだけど、本当に物腰が柔らかくて、どんなことでも相談してくれたんで、すごくやりやすかったですね。

──磯田さんって大ベテランのわりには若い監督とも組まれてましたし。それにたけしさん・・・北野監督も感覚はすこぶる若いし。

なんかカッコいいんですよ。磯田さんとロケハンに行くと、僕が知ってるほかの美術さんは写真とか撮って、大体そこでCG作って、イメージ図にしてくれるんですけど、磯田さんは全部手書きなんですよ。小っちゃいメモ帳に鉛筆でパパパパパ~って描いて、それがなんかカッコいいんですよ、なんか昔の職人さんだなぁって。

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