俳優・村上淳「あれから10年、その景色はメインストリームへ」

2022.2.4 20:45

映画『夕方のおともだち』で主演を務める村上淳(写真/Chisako)

(写真12枚)

「おもしろい時代を過ごせたなって」

──村上さんの芸能生活30周年を迎えられましたが、これまでメジャーからインディーズの映画まで、そして若手からベテランの監督までかなり幅広くお仕事されてきました。ある意味、近年の日本映画界の目撃者的な立ち位置にいると思います。

僕としては、2011年から2014年までの3年間、東京の「オーディトリウム渋谷」(2014年閉館)での光景が特に大きかったです。プログラムディレクターの杉ちゃん(杉原永純)、支配人の千浦僚くん、そして、監督の濱口竜介くん、俳優の渋川清彦、川瀬陽太、『海炭市叙景』(2010年)で一緒に仕事をした監督・熊切和嘉くん、富田克也や相澤虎之助ら空族の面々・・・。あと、『いとみち』(2021年)の横浜聡子監督や『脳天パラダイス』(2020年)の山本政志監督たちとあの劇場でよく過ごしていました。

──「オーディトリウム渋谷」で日本映画について、さまざまな話をしていたと。

当時はそこを起点に、空族の『サウダーヂ』(2011年)、三宅くんの『Playback』、大根仁監督の『恋の渦』(2013年)、カンパニー松尾監督の『劇場版テレクラキャノンボール2013』(2014年)が全国的にものすごいヒットを飛ばした。劇場自体に、映画の作り手を引きつける熱があった。藤井道人くん(映画『新聞記者』監督)もいて、彼は当時からみんなとは毛色の違う客層がついていた。それがきっちりと今に繋がっている感があります。

ほかにも、撮影監督の四宮秀俊くん(『ドライブ・マイ・カー』)や鎌苅洋一くん(『花束みたいな恋をした』(2021年)、録音の山崎巌くん(『サウダーヂ』)とか。あれから10年、そのとき見ていた景色が今、メインストリームへ行きだした。だから、おもしろい時代を過ごせたなって。30年のなかでも当時の記憶は宝物みたいなものなんです。

映画『夕方のおともだち』で主演を務める村上淳(写真/Chisako)

──例えば10年前、村上さんは濱口監督のインディーズ映画『THE DEPTH』(2011年)に出演していましたね。そんな濱口監督は今、最新作『ドライブ・マイ・カー』で世界を席巻しています。

濱口くんが今のポジションまで来ることは、想像できるところもありました。だからこそ当時、作品に出たいと思ったので。これは三宅くんも含めて言えることだけど、僕としては「ここのポジションまで来ることは、君たちなら難しくないよね」と。自分はあえて、イジワルな目で彼らを見るようにしています。「じゃあ、シネコン400館で作品をやるのは誰かな?」という期待を彼らに向けたい。

僕はいろんなインディーズ映画に出ているけど、やっぱり超メジャーな作品に出ると、そこでやる意味の大きさをいつも感じますから。これまで名誉しか拠りどころがない人もたくさん見てきたけど、彼らはそんなものに溺れるとは思えない。だからこそ名誉ってものは、一度パーっとお祝いしたら捨てちゃって、「さあ、次の映画を作ろうぜ」と一緒に現場へ向かいたいですね。

映画『夕方のおともだち』

2022年2月4日(金)公開
監督:廣木隆一
出演:村上淳、菜葉菜、田口トモロヲ、AZUMI、烏丸せつこ
配給:彩プロ
R18+
© 2021「夕方のおともだち」製作委員会

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