「アステア様に敬意と責任を」柚香光主演の花組、TOP HAT開幕

2022.3.21 19:35

男役としても憧れ続けてきたフレッド・アステアの代表作『TOP HAT』のダイナミックな群舞で、最高の笑顔を見せる柚香光

(写真5枚)

黒燕尾服を日常スタイルのように自然に着こなし、湧き上がる思いを軽やかにステップで表現する宝塚歌劇団花組トップスター・柚香光(ゆずかれい)。「ダンスの神様」と称されるフレッド・アステアのスマートさが乗り移ったかのように、生き生きと演じるミュージカル『TOP HAT』が3月21日、「梅田芸術劇場メインホール」(大阪市北区)で開幕した。

ハリウッド黄金期の映画を舞台化した同作は2011年にイギリスで初演、ローレンス・オリヴィエ賞に輝き、日本では2015年に宙組で初上演。アーヴィング・バーリンの心浮き立つ音楽に乗せて、フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースがスクリーンに刻んだ名場面はもちろん、映画にはないバーリンの楽曲を加えた舞台版ならではの華やかなナンバーも見どころだ。

脚本・演出の齋藤吉正が、より映画のオリジナルに近づけたという今回の再演では、タップの群舞などに、「ダンスの花組」の心意気と熱量、クオリティの高い技が詰まっていて目が釘付けとなった。

柚香演じるブロードウェイの人気スター・ジェリーは、同じホテルに滞在しているファッションモデルのデイル(星風まどか)に一目ぼれ。デイルも彼に惹かれるが、友人マッジ(音くり寿)の夫であるホレス(水美舞斗)と勘違いしたことから、彼の想いを突っぱね、騒動が巻き起こる。

華麗なターン、リフトと高度な技を織り交ぜながら華麗に「CHEEK TO CHEEK」のナンバーを踊る、柚香光と星風まどか

デイルにビンタをされても、物おじせず彼女に真っすぐアピールしてゆくジェリーの懐の深さが、男役キャリアを重ねてきた柚香の充実を物語っている。ジェリーを心配するプロデューサーで友人のホレス役・水美舞斗、クセある付き人ベイツ役の専科・輝月(きづき)ゆうま。この3人が同期ということもあり、芝居の息がぴったりで、よりコメディの勢いを加速させている。

星風はジェリーにフェイクの誘惑を仕掛ける場面でのコケティッシュな愛らしさが新鮮。流れるように優雅なダンスをジェリーと踊る「CHEEK TO CHEEK」では、花組のピンクカラーのドレスに身を包み、まさに天国に昇るような幸せな表情を柚香とともに見せた。ふたりの高まる感情が音楽とダンスと一体化するファンタジックな場面で、いつまでも心に残る。

支配人、ウェイター、メイドまでそれぞれ個性的で愉快な明るいコメディ。仲人気質なマッジを痛快に演じた音くり寿、デイルへの想いが空回りして笑いを誘う、イタリア人デザイナーのベディーニ役・帆純(ほずみ)まひろの好演も印象的だ。

初日は拍手が鳴りやまず、最後はオールスタンディングオベーション。柚香は「とうとう始まりました!」と感無量の様子で、「尊敬してやまない(フレッド・)アステア様の名を汚さないよう、敬意と責任をもって努めていきたい」などと挨拶した。また、水美・輝月と3人、「奇跡の95期トリオ」と副組長の航琉(わたる)ひびきから紹介され、3人並んで笑顔を見せていた。

同作は4月6日まで。なお3日16時半の公演は、映画館でのライブ・ビューイング、ライブ配信がおこなわれる。詳細は公式サイトへ。

取材・文/小野寺亜紀

宝塚歌劇花組 梅田芸術劇場メインホール公演 ミュージカル『TOP HAT』

日程:2022年3月21日(月・祝)~4月6日(水)
会場:梅田芸術劇場メインホール(大阪市北区茶屋町19-1)
料金:S席9000円、A席6000円、B席3000円
電話:06-6377-3800(梅田芸術劇場メインホール)

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