評論家鼎談、2021年・下半期「ベスト外国語映画」はこれだ!

映画評論家のミルクマン斉藤氏、田辺ユウキ氏、春岡勇二氏(左より)
「どれだけのSF映画に影響与えたか」(春岡)
斉藤「『ミラベル〜』はやっぱり音楽が最高!」
田辺「スパニッシュというか、コロンビアですよね」
斉藤「そうなのよ。いきなり(コロンビアの伝統的音楽)クンビアから始まるの。手がけているのは、『メリー・ポピンズ リターンズ』でガス灯の点灯夫を演じていた天才音楽家、リン=マニュエル・ミランダですよ」
田辺「町中を巻き込んでの音楽シーンとか絶品でしたね」
春岡「オープニングのミラベルの歌もすごく良かったよ。あれ長かったよな、5分ぐらいあった」
斉藤「リン=マニュエル・ミランダは天才ですよ。だって(1964年の『メリー・ポピンズ』の準主役)ディック・ヴァン・ダイクの役を演ったんだし」
春岡「それだけで天才だよ」
斉藤「しかも、本職は音楽家っていうんだから。まさに今のミュージカル界の大スター。いや、スゴいよ」
田辺「あと、これもNetflix映画ですけれど、イタリア映画の『ハンズ・オブ・ゴッド』ですね。1カット1カットが素晴らしかった。監督の少年時代の話なんですけど、舞台となっているナポリにサッカー界のスーパースター、ディエゴ・マラドーナがやってくるんじゃないかって話が中心なんです」
斉藤「パオロ・ソレンティーノ監督でしょ。俺、大嫌いなんや(笑)。これまで1本も好きな映画がないのよ」
田辺「僕も、もともと好きじゃなかったんですけど・・・」
春岡「俺もあんまりだったかな、『ザ・ハンド・オブ・ゴット』ってどんな映画かなと思って観てたら、マラドーナのハンド(神の手)のことかよって(笑)」
田辺「フェデリコ・フェリーニの『8 2/1(はっか にぶんのいち)』(1963年)みたいなところがあった」
斉藤「ソレンティーノって、いつもそういうのやるやん。ローマを撮ったらフェリーニっぽい。インテリぶってるところが嫌いなのよ」
田辺「たしかにそうなんですよ。でも今回はそれを開き直って、フェリーニを真正面からやってる。僕も好きじゃなかったんですけど、ただ、これはちょっと様子が違うかもしれない」
春岡「俺はジェーン・カンピオン監督の『パワー・オブ・ザ・ドッグ』を推したい」
田辺「あれは素晴らしかったですね」
斉藤「俺、ジェーン・カンピオンも苦手なのよ。『ピアノ・レッスン』はいいけど、あとは基本的に苦手。でも彼女の作品としては、一番良かったんじゃないかな。やっぱり根性悪いけど(笑)」
春岡「主演のベネディクト・カンバーバッチ、これでオスカー獲るんじゃない。伝説のカーボウイの出し方だって、なんだこの演出は!って。あのシーンは堪らんかったなぁ」

田辺「同じ西部劇でも、クリント・イーストウッド監督の『クライ・マッチョ』は厳しかったですね。僕は全然、褒められない」
斉藤「正直、イーストウッドの老いを初めてまざまざと感じた。単純な話を映画的に見せきってしまう演出のパワーが落ちてるねん。まぁ、脚本も酷いけど」
春岡「そうなんだよなぁ、好きなだけにちょっとツラかったなあ」
斉藤「あれは観た? イーストウッドのプロデューサーだったロバート・ローレンツが撮った、リーアム・ニーソンの主演映画」
春岡「元海兵隊の狙撃兵を描いた『マークスマン』?」
斉藤「そうそう。『クライ・マッチョ』とほとんど同じ話。国境を越えてきたメキシコ人の少年を麻薬カルテルから助けるという。こっちの方がベタなんだけど面白いのよ。脚本もイーストウッド映画っぽいし、主人公は元海兵隊で、今は自分の家もトイレもない。こんなに国に尽くしてきたのに・・・っていうおなじみのイーストウッド節」
田辺「それ、まんまイーストウッドの『アメリカン・スナイパー』(2015年)じゃないですか」
斉藤「まったく一緒(笑)。それでも、面白いねん。リーアムが吐く台詞がいちいちイーストウッドっぽいという」
春岡「俳優として面白いよなぁ。リーアム・ニーソンとアダム・ドライバーから俺は目が離せない」
斉藤「アダムといえば、『最後の決闘裁判』と『ハウス・オブ・グッチ』のリドリー・スコット組連続出演。映画的には『最後の~』が圧倒的だけど、『グッチ〜』もむちゃくちゃ下世話で面白い。レディ・ガガってやっぱりスゴいってのも感じさせるし」
春岡「そうそう。アダムの受ける芝居があってなんだけど、やっぱガガって魅せるなぁって」

斉藤「あの2人をちゃんと据えるところがリドリー・スコット監督の良いところ。ヒットメーカーゆえに、映画人としてちょっと過小評価されてると思うんだけど」
田辺「大作ばっかり撮ってたから、商業的な成功ばかりにスポットが当たるからでしょうね」
斉藤「せやねん。でも、あの人の作家性っていうのは、『デュエリスト/決闘者』(1977年、日本公開は1982年)から始まってる。『エイリアン』も『ブレードランナー』も『グラディエイター』も、やっていることはほとんど同じ。肉親同士の相克とか父親殺しとかさ、本当に一貫してる。まさに作家なのよ、あの人は」
田辺「『アメリカン・ギャングスター』(2008年)もそうでしたね。いや、改めて作品リストを見るとスゴいですね」
春岡「一級品だよ。だからこそ巨匠と呼ばれるんだよ。どれだけのSF映画に影響与えたか」
斉藤「『エイリアン』と『ブレードランナー』の2本で、それに影響された映画が何百本生まれたことか。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『DUNE/デューン 砂の惑星』はどうだった? 僕は今年のナンバー1にしても良いくらい」
田辺「僕は観終わってから春岡さんと話してたんですけど、面白かったけどちょっと疲れたなぁって」
春岡「全然悪くはなかったけどね」
斉藤「撮影にまで至らなかったホドロスキー版も含め、ヴィルヌーヴがあらゆる角度から考え抜いてるのが分かる。僕みたいな原作好きにとっては、まさに理想型。よくぞやってくれましたって感じ。デヴィッド・リンチ版(1985年)も好きだけど、あれは『デューン』じゃなくてリンチやねん」
春岡「主役のティモシー・シャラメがスゴいよ」
田辺「『ドント・ルック・アップ』でも良かったし」
斉藤「彼が演じるのがアトレイデス家の後継者で、全宇宙から命を狙われる悩める王子・ポール役がすごく合ってるんだよなぁ。面白かった、というより圧倒されまくった」
春岡「砂漠の映像をはじめ、どのシーンも素晴らしい」
斉藤「それに、謎の女・チャニ役のゼンデイヤがいいのよ、意外と。『スパイダーマン』よりずっと」
田辺「あと、砂の物音を立ててしまうと巨大生物サンドワームがやってくるシーンも」
斉藤「砂の惑星と言えば、『風の谷のナウシカ』の王蟲の原型にもなったサンドワームだから。ただ、続編に向けてまだまだ出し惜しみしてますよ」

田辺「それこそ、デザインと設計の映画だと思いましたね」
斉藤「ティモシー・シャラメが研究所に逃げ込むんだけど、帝国軍とハルコンネン男爵の軍隊が上から降りてくる。その前に砂と建物と、周りの壁の影だけをずっと映すの。そこにまったく無音でサーッと・・・」
春岡「あの、建物の陰に降りてくるシーン。かっこいいよね」
斉藤「映像の画角もソール・バス的で(註)、非常に硬質。そこから続く戦闘シーンはセルゲイ・エイゼンシュテイン監督の『戦艦ポチョムキン』(1925年)を思わせたりしてね。あれがかっこよくて」
註:ソール・バス=ヒッチコック、プレミンジャー監督作品のタイトルデザインでも知られる名グラフィックデザイナー
春岡「そう、色を廃してね。ほとんどモノクロ・サイレント映画の制作解釈。でもまぁ、疲れたなぁ(苦笑)」
斉藤「疲れるよ。だって密度が濃いもん(笑)」
田辺「そのあたりを理解せず観ちゃうと、『エターナルズ』もこれも変わらないと思うんですね(笑)」
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