森山未來×神戸、次に挑むのは「この場所でしか感じれないもの」

2022.4.30 08:05

俳優の森山未來

(写真3枚)

俳優のみならず、ダンスやアートの世界でも際立つ存在感を放つ森山未來。今年で38歳となるが、彼の表現に対する探究心は尽きることがなく、創作活動をするためならば国内外問わず自ら足を運ぶ。

「神戸のポテンシャルに親和性を感じる」と言う森山は、神戸のカルチャーを盛り上げるべく、ダンス公演をはじめさまざま活動をおこなってきた。そして次なる挑戦として選んだのは、滞在してアート制作をおこなう施設「アーティスト・イン・レジデンス神戸(AiRK)」。森山未來×神戸の化学反応から、新たに何が生まれるのか・・・?

◾️海外のアーティスト・イン・レジデンス体験「香港にいたときはデモの真っ最中」

──アーティスト・イン・レジデンスとは、アーティストを呼び込んで滞在制作をおこなう場所の意味ですが、日本ではあまり馴染みがないように思います。森山さんが今回「滞在施設」にフォーカスした理由はどこにあったんですか?

僕自身が海外に行ったときによく使わせていただいて、共同のキッチンがあって寝食をともにしながら作品を作るんです。そうすると、コミュニケーションの密度が違うんですね。またそれが作品の密度にもつながってくるし、そんな施設を神戸に作るべきだとずっと言ってたんです。

──森山さんの創作スタイルにマッチしているということですね。

ひとつの場所にとどまるというより、いろいろな場所に行ってそこで創作活動をおこなうことが多いですし、そこでの出会いも大切なので、(アーティスト・イン・レジデンスは)自分の性質にすごく合うんだと思います。

──アーティスト・イン・レジデンスを魅力に感じたきっかけとなるような、印象的な出来事があれば教えてほしいです。

パリの中心部から電車で南下したところにモンテロンっていう何にもない牧草地があって。そこに昔のブルジョアが持っていたシャトー(城)をリノベーションしたレジデンスに滞在したのですが、初めてチリの人と知り合って、彼らの文化を知って衝撃を受けたり・・・。

また、香港のレジデンスに滞在していたときは、ちょうどデモの真っ最中で、ランニングしていたら催涙ガスの残り香で目と鼻がやられたり(笑)。あと滞在先の下で黒い学生服を着た人たちが逃げ回ってたりしていて。そういった環境のなかでクリエーションしていると、やっぱりその場の緊張感なども感じるので、また違ったイメージが浮かんできます。そんな経験をしながら、アイデアをあたためて作品を仕上げていくんです。

「AiRK」の館内は改修工事などせず、元あった姿のまま利用。「今後、ここに何を盛り付けていけるか」と、森山は話す

──刺激的なエピソードですね・・・。これまでは森山さんがそういった色んな国のレジデンスに出向いていく方だったのが、今回はその受け皿を作る側になられたんですね。

なっちゃいましたね(笑)。これまで口では言いまくってたんですが、まさか自分がメンバーの1人になるとは思っていなかったです。すでにフィンランドやアメリカのアーティストなど、数名の入居は決定しているものの、まだまだ経済的な面では出資者を募っているような状況なので、周りの人から見たら「なにやってんの?」って人もいるかもしれない。現在メンバーのみなさんで運営体制を含めて構築している最中です。

◾️森山「神戸でどういう遊び方ができるかな」


──今回の神戸での取り組みに期待することはなんですか?

神戸の港が、文化の港として再興してもらうことですかね。神戸の北野という場所に色んな国の人が集まって、ムスリムもジューイッシュもクリスチャンも、いろんな文化がぶつかり合って、絡み合っていたかつてのように、盛り上がる場所になったらいいなと思います。

──これは森山さんの神戸への愛情がそうさせているのかなって。

もちろん出身地でもあるし、愛着もあるんですが・・・。神戸が持ってるポテンシャルを改めて自分が感じているので。それをどういう風に「HAAYMM (ハイム)」(AiRKの設立に関わった6名)のメンバーや地元の人、外からやってくる人たちと発見したり、盛り上げていけるのか。それは「神戸愛」というより、この場所でどういう遊び方ができるのかな?というプロジェクト的なイメージがありますね。

──その「遊び」からどういった景色を見ることができるのか、ワクワクします。

アーティストにここに集まってもらうためには、まず僕らが神戸という場所を見ないといけない。例えば、海外からやってくる観光客を考えると、京都には行く、渋谷にも行く、では神戸で何が見たい?っていうのを、まずは僕ら自身で再発見していかないといけない。神戸という場所でしか感じれないものを、今後どういう風に提示できるのか・・・。

──今までなかったものが、ここから新たに生まれていくんですね。

こういうことは即効性があるものではなく、時間をかけて成り行きを見守っていくので10年は必要だと思っています。でも、こういった場所が生まれることで、ものの流れは変わるだろうから、あえて「何かを変えよう」という意識は持ちすぎないようにしています。成り行きに任せられることも大事かなって。もちろん頑張らないといけないところ、踏ん張るところもありますが!

──森山さんの探究心や行動力が神戸という地に新たな変化をもたらしてくれそうです!

この場所に来たら、いろんなアーティストの人と出会えたり、さらに彩のある場所になればいいなと思います。いやぁ、理想ばっかりです(笑)。

「AiRK」設立のために新たに結成されたチーム「HAAYMM(ハイム)」左から小泉亜由美、遠藤豊、小泉寛明、森山未來、松下麻理

「アーティスト・イン・レジデンス神戸」への滞在は、まずは神戸市内の文化施設に滞在して制作をおこなうアーティストの受け入れから始め、将来的には公募も視野に入れて活動を続けるという。

取材・文/Lmaga.jp編集部

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