「兄弟愛なんてない」ミキ昴生、10年背負い続けた兄の覚悟

お笑いコンビ・ミキ(左から亜生、昴生)
「33歳、正直もうちょっとしっかりしてほしい」(昴生)

──その点、亜生さんは良い意味でそこまで背負いこんではいませんよね。
昴生:だから大変なんですよ。僕からしたら「いつまで弟やねん」と(笑)。誰かのひと押しがないと自分で決断できないし、誰に対しても弟感が出まくっていますからね。正直な話、33歳なんやからもうちょっとしっかりしてもらいたいですよ。
亜生:これ、ずっと要求されてるんですけど、まだ分からへん? 33年も変わらへんのやから、絶対に変わらへんねんて! 40歳、50歳になっても今のままでいくから、絶対僕より後に死んでくれ。先に逝かれると何もできへん。
昴生:僕には今家庭があるのに、なんでお前のことを考えなアカンねん。
亜生:家庭は後から付け足したものやんか。もっとこっちに重心を置かんと・・・何を弟から乗り換えてんねん。俺の主人(あるじ)やんか。
昴生:お前の主人ちゃうわ!
──ハハハ(笑)。
亜生:僕は自立心がないから、ピンの仕事はいつも不安なんです。ひとりやとツッコミも自分でやらなきゃいけないじゃないですか。『アメトーーク!』(テレビ朝日系)では最初、コンビじゃなくて僕がひとりで呼ばれて出たんですけど、めちゃくちゃ怖かったです。
昴生:はじめの頃は心配だから、亜生がひとりで出てる番組は全部チェックしていました。だってコンビを組んだときは、「芸人としての亜生の姿」を全然想像できなかったから。そんな弟がひとりで『すべらない話』とかに出るとか、心配なんで現場に付いていこうかと思ったこともありました。でも今は「なんとかなるやろう」と。(『アメトーーク!』の)「絵心ない芸人」とか一度も観たことがないですし。
亜生:えぇ!? ショックです・・・ちょっとは観てよ。お兄ちゃんに捧げて描いてるんやから。
昴生:どんな絵を描いてるねん! でも『アメトーーク!』は、プロデューサーの加地倫三さんが亜生をよく呼んでくれて。「ミキはまず亜生くんからいこうと思う」と、なぜか加地さんがミキの活動方針を決めてくれてたんです(笑)。
亜生:ただ僕も、ひとりで番組に呼ばれてもがいてるなりに「この仕事をお兄ちゃんに繋げなきゃ」と使命感を持っていました。そういう意味で、『アメトーーク!』にコンビで出るのはひとつの目標でしたね。
「寄席を捨てたら、絶対に賞レースは獲れない」(昴生)

──そういうふたりの関係性について、メディアは「兄弟愛」という言葉でまとめますよね。
昴生:確かによく言われますね。でも「兄弟愛」なんてまったくないですよ(笑)。僕らはシンプルに漫才コンビですし。亜生が僕のことを「兄ちゃん」と呼ぶから、余計にそう見られるんでしょうね。
亜生:中川家さんとか、弟の礼二さんが剛さんのことを「お前」とか言うじゃないですか。僕は、礼二さんに「兄ちゃんのことをお前とか言うたらアカンねんで!」って叱りたいくらいです(笑)。
昴生:こんなことを言うとまた「兄弟愛」と書かれるから嫌なんですけど、自分としては「弟を守る」という気持ちはあります。だって亜生が芸人になることをオトンとオカンは反対していたのに、「俺が引き受けるから」ってコンビを組んだから。あとね、僕らが尊敬する芸人の三浦マイルドさんから言われたことがあって。
──どんなことですか?
昴生:僕は借金もないし、ギャンブル、タバコ、酒もやらない。芸人っぽくないんです。だからマイルドさんに「そういうことをなんかやるべきか?」と相談したら、「そんなことをする必要はないやん。お前は亜生の人生を背負ってるんやから、それが一番やろ」と。そのときは噛みしめるものがあったんですけど、冷静に考えたら「そもそもなんで亜生の人生を背負わなアカンねん。で、それをなんでマイルドさんに言われんねん!」ってなりましたけど。でも、響いた言葉でしたね。
──昨今では『上方漫才大賞』を獲るなど、賞レースでも頭角をあらわしていらっしゃいます。最後にコンビとしての今後について伺いたいのですが、ファンとしては『M-1』の決勝に再び立つミキも観たいはず。
昴生:『M-1』も頭にはあるんですが、まずは寄席のお客さんを笑わせることに集中しています。「NGK」の舞台が基本としてあり、そこでウケないことには賞レースとか言っていられない。寄席を捨てたら、賞レースでは絶対に優勝はできないと思っています。
亜生:でも長く漫才をやったり、「NGK」でトリをつとめたりするには、賞はもっともアピールしやすい材料なんです。だからいろいろ狙っていきたいですね。
昴生:賞をいただくとギャラもちょっと上がるので。こうやってお金の話をするとコスく聞こえますけど、舞台の給料が上がって生活に余裕ができれば、もっと漫才に集中できますから。
亜生:「これだけもらっているんだから」と、1つひとつの舞台の緊張感もより上がりますし。
昴生:僕らはずっと漫才をやっていきたい。テレビに出るのも「漫才師としてのミキ」を知ってもらいたいからなんです。寄席での漫才に集中するためには、今以上に生活を充実させたい。そうするために、賞を意識して活動していこうと思います。
◇
ミキらが出演する、大規模イベント『Warai Mirai Fes 2022 ~Road to EXPO 2025~』は、4月29日より3日間「万博記念公園」(大阪府吹田市)で開催。SDGs(持続可能な開発目標)の達成を旗印に、大阪の笑いやグルメ、音楽が楽しめる。
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