「セルフプロデュース」で築き上げた、人気俳優・ムロツヨシの格
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俳優のムロツヨシ
コメディからシリアスまで幅広い役柄を演じ、今や誰もが知る人気俳優となったムロツヨシ。その一方で、みずから脚本・演出・出演までをすべて手がける舞台『muro式.』を約14年にもわたって開催するなど、自分の好きな表現ができる場所も常にキープし続けている。
このセルフプロデュース術によって、俳優の道を大きく切り拓いたムロだが、40代になったことや、昨今の新型コロナウイルス(ムロいわく「なんちゃらウイルス」)の状況によって、そのスタンスに変化が現れているという。5月に大阪で上演する『muro式.がくげいかい』のことや、今抱いている「野心」について、大真面目に語ってもらった。
取材・文/吉永美和子 写真/續木光
「なんでもありだからワクワクする学芸会」
──2台のトラックを舞台代わりにして、大の大人が『桃太郎』を上演する野外劇『がくげいかい』。ダメな演劇を「こんなのは学芸会だ」と言うなど、演劇界ではマイナスイメージの強い言葉ですが、それをあえてタイトルにしたのは?
『桃太郎』って、誰もが知ってる物語だけど、演劇ではあまり上演されないから、逆にやってみたいと思ったんです。それを大先輩のリリー・フランキーさんに、お酒の席で相談したら「タイトルを『桃太郎』にしても、内容がわかってるから期待が薄いけど、『学芸会の出し物として桃太郎をやる』と言われたら、ワクワクするかもなー」と言われて。そこから、みんな子どもの頃からなじみのある「学芸会」というものを、演劇のプロとして、どうにかエンターテインメントにできないか? と考えて作り始めました。
──2021年に上演された東京公演の映像を見たら、野外という開放感と、俳優たちのリラックスした雰囲気が、いい意味で「学芸会」ぽかったです。
ありがとうございます。でも俳優だけでなく、舞台を支えるスタッフたちの仕事も見てもらえるのも、この『がくげいかい』の良さです。「舞台監督」や「照明」など、背番号ならぬ「背役どころ」を付けてもらい、みんなにウロウロしてもらってます。普通の劇場だと、観客から見えないように作業する人たちに、逆に照明を当てたりして。だから「舞台って、こんな風に作ってるんだ」ということも、知ってもらえる機会になると思います。
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──「俺を見て!」じゃなくて「俺以外も見て!」ということに。
やっぱり舞台だけじゃなくて、いろんな所を見てもいいのが、野外の面白さですからね。特に大阪の会場(花博記念公園)は広さがあるので、それをうまく使いたい。おじさんが広い所を走るだけでも、なんか笑えたりするので、そんなシーンを僕ではなく、(共演の)永野宗典か本多力に作りたいと思います(笑)。あとチラシの絵とか(劇中の)鬼のデザインを、永野さんの息子さんやスタッフの子どもたちに描いてもらってるんですよ。
──ムロさんなら、いくらでもカッコいいデザイナーを使えそうな所を、あえて。
それはまさに、なんでもありだからワクワクする「学芸会」からの発想。あと、世代間の距離が出てきてしまっている今の時代だからこそ、子どもたちのセンスを借りたいという思いもありました。
──「学芸会」のマイナスイメージがくつがえりそうですね。ただ関西は、野外劇のカリスマ的な集団「維新派」(2017年解散)がいた影響で、数年前までかなり野外劇が盛んだったんです。だから野外劇に対して、目の肥えたお客さんが結構いると思うのですが・・・。
維新派と同じことはできないにしても、舞台は研究していました。今回は元維新派の方や、テント芝居に関わってる方々が、こころよくスタッフを引き受けてくださっているので、緊張はするけど頑張りたい。維新派を知るお客さんにも「まあ、こういうのもアリだな」と思ってもらえるものを、お見せできたらと思います。良い脅しをありがとうございます(笑)。
『muro式.がくげいかい』
会場:花博記念公園鶴見緑地パーゴラ広場 特設会場(大阪府大阪市鶴見区緑地公園2-163)
期間:5/3(火)〜5/11(水)
料金:14時公演(ショート・キッズバージョン):一般5000円、高校生以下2000円
19時公演:8000円
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