神戸にある「コンバースの聖地」、名物店主は伝説づくしの81歳

2022.5.29 08:05

神戸・元町商店街で「柿本商店」を営む店主の周春陽さん(81歳)

(写真15枚)

神戸・元町で「コンバースの聖地」として知られるスニーカーショップ「柿本商店」(神戸市元町通り)。1968年に店を起ち上げた店主の周春陽さんは、コンバースの歴史の半世紀をともに生きてきた81歳の名物店主。だが、実は「コンバースを一度も履いたことがない」という意外な事実があったりと、話を訊けばさまざまなエピソードが飛び出してきた。

写真/横江実咲

■4万7000足のブーツが始まり「わしが買うたるから」

「柿本商店」とは、コンバースを専門に扱う老舗スニーカー店。店内は壁一面靴に覆われており、聞いてみるとその数は約5000足。全国からマニアが集い、老若男女から愛される同店は、今や神戸の名所のひとつになっている。

1976年創業のコンバース専門店「柿本商店」は、高架下「モトコー」から「元町商店街」へと移転したばかり

──以前は「モトコー」と言われる超レトロな神戸・元町の高架下で営業されてましたが、2022年5月に「元町商店街」に移転されたんだとか。前の店舗に比べるとお客さんも訪れやすくなったのでは?

そうそう、こっち(元町商店街)の方が人通りが多いやろ。それに、前は高架下だったから柱が多かった分、今回は見やすいようになったかな。急な引っ越しだったもんだから、店はまだ半分しかできてないけどね。

──確かに。天井とともに陳列棚の背も高くなりましたね、でも「柿本商店」の名物でもある陳列棚を埋め尽くすような並べ方は変わらずですね!

長年の経験ですわ、30年、40年の。

──周さんは同店の発起人であり、ずっと店主として営まれてきましたね。今さら聞くのもお恥ずかしいのですが、「柿本商店」誕生のきっかけを教えてください。

若い頃、船の仕事をしていたときに出合った「ブーツ」がきっかけだった。貿易会社で働く友だちが、アメリカに輸出する商品の納期が遅れたんよ。でもその時すでに手形を切ってたから「助けてくれ」ということで、「なんぼあんねん?」「4万7000足ある」「ほんなら、わしが買うたるから」と全部買い取った。27歳、28歳のときかな。

──行動力といいますか、すでに決断力がおありだったんですね。

でも、まだそのときは店を持っていなかったから、最初は田舎の納屋に在庫を置きながら、車で港に行って売る、そういうビジネスをしていた。それで29歳のとき、当時バラック(空地や災害後の焼け跡などに建設される仮設の建築物)だった店舗を買って、嫁さんの名前が「柿本」って言うんで、柿本商店にしたんよ。自分の名前より良いやろ!と思ってな。

創業当時からのエピソードを語る周さん

──そこから商店はすぐに軌道に乗ったんですか?

そのバラックの戸板を外してブーツを1足ぶら下げとったんよ。ほんなら背中叩く外国人がおって、ロシア語で「スコリカ、スコリカ」言いながら「How much?」って聞いてきた。その夕方には税関通して2500足のブーツを納めたね。

──そんな口約束でビジネスが成立・・・。すでにパンチの効いたエピソードが飛んできました。

そうやって、そのロシア人がまた次の航海に来たら注文してくれるようになり、ほかの業者も「おたくブーツ売ってるそうやけど?」って電話をかけてくるようになったり。そして、ちょうどそのときが宝塚で『ベルサイユの薔薇』(1974年初演)が始まったときやった。

──もしかして、あの衣装を手がけられたのですか?

そうそう、ストレッチで伸びて、編み上げでチャックついてるやつ。サイズ展開もあるから、大根足でもどんな足でも合うねん。わし、舞台は見てないけど(笑)。

柿本商店

住所:神戸市中央区元町通4-1-14
営業:平日11:00〜17:30、休日11:00〜18:00
電話:078-351-0997

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