現実離れネタで挑む、個性派芸人・ビスブラの「究極の笑い」とは

2022.5.19 11:15

お笑いコンビ・ビスケットブラザーズ(上から原田泰雅、きん)

(写真4枚)

原田は行動とギャラリーの数が釣り合っていない(きん)

漫才とコント、両刀のビスブラだが、今回の単独はコントのみで構成するという

──そういえばYouTube『ビスケットブラザーズチャンネル』では、原田さんが自分が自分でなくなるほど落ち込んでいた時期のエピソードも話していらっしゃいましたね。それも現実逃避に結びつくのかなって。

原田:いわゆる「フェニックス事件」ですね。あのときは、きんとも口論になったりして自己否定に陥り、「俺、お笑いを辞めるかも」となったんです。ドーンと構えて芸人として闘おうとしている僕と、闘いの場には向いていないという僕のあいだでグラついて。自分のことを俯瞰で見ていました。

きん:あのときの原田はいろんな先輩に怒られたり・・・いろいろ重なっていた時期でもあったよね。

原田:「やばい、やばい」となったとき、目を閉じたんです。そして「こういう自問自答を繰り返してこれからも生きるんや。そこにすべてがあるんや」と考えた瞬間、口から「フェニックス!」という言葉が出てきて、メンタルが復活したんです。不死鳥が火に包まれて燃えさかり、そこからまた雛が誕生した感覚。

きん:原田とルームシェアしている相手が「急にフェニックスって聞こえてきたんやけど。怖い!」と、僕に連絡をしてきました。

原田:気持ちが落ちることって普段はまったくないんです。ただ、僕はひとりっ子でかまってちゃんだから、落ち込んでいる風を装うことはあります。やっぱり自分のことを気にしてもらいたいんです。だから自分以外の人間は、生きてないと思って生活してます。

きん:一番ヤバいサイコパスやん。

原田:僕の存在って僕にしか分からないじゃないですか。だから自分以外の人間は、僕の物語のなかの登場人物ではあるけど脇役だと考えています。

きん:そんなやつの公演、誰が観てくれるねん!(笑)でも原田はそのかまってちゃんのクセがよく発動するんです。舞台でネタが終わったときも、原田が先輩に「僕らのネタ、どうでしたか」と感想を聞くんですけど、「うーん、そうやな」と悩んでいらっしゃる瞬間には、もうそこにはいない。で、僕が代わりに感想を聞くことになるんです。原田はきっとその瞬間に言いたいこと、格好良いと感じたことを口にしたいだけなんでしょうね。

原田:確かにそれはある。ちょっと話がずれるかもしれんけど、ラジオのときも常に「俺はスーパースターなんや」と考えながらやっているんです。人間味を出したり、逆に出さへんかったり。どの原田が人に刺さるか分からんから、いろんな原田になりきる。「原田のビュッフェ方式」なんです。人間味を出す前菜、人間性のないプリンとか。

きん:本当にその場で思っていることを口に出すんで、「誰?」っていうときもありますけど。 

撮影時は「赤×青」が映える、漫才時の衣装で!

──ハハハ(笑)。でもきんさんは、そんな原田さんを「信じられないくらいのエンターテイナー」と絶賛されていますよね。

きん:原田って、その場に僕しかいないときもいろいろ何かやってくれるんですよ。最近だと、いきなり地面に転がって股擦れした箇所を見せてきて、そこを指でなぞって臭いを嗅いでずっと笑っていた。人を笑かそうとする行動とギャラリーの数が釣り合っていないんです(笑)。でも、そこが素晴らしいなと。お客さんがいなくてもそういうことをやっているところを、もっと知ってもらいたいんです。

原田:自分で自分を喜ばせているだけなんですけどね。でも、こういう意味の分からんことをやってる2人の単独公演を「なんばグランド花月」という大舞台で観てほしいなって。

きん:気持ちが高ぶるよね。「なんばグランド花月」という吉本最高峰の舞台で、師匠たちがいるなかで60分という僕らだけの時間が用意されている。あらためてすごいことやなあって。

原田:まさに聖地。甲子園で野球を、TOTOの本社でおしっこするくらいの。

きん:またそれはちゃうなあ(笑)。でもそんな聖地に、こと股擦れで笑い合ってる2人が、一生懸命ネタをやっていたらおもしろいんちゃうかな。そういうことが自分たちにとっての「究極の笑い」ですね。

ビスケットブラザーズ単独ライブ『町のクチビル代理店』は、「なんばグランド花月」にて5月20日・夜8時開演。チケットは前売3000円、当日3500円で現在販売中(全席指定、配信なし)。

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