【鎌倉殿】義経ロスも、菅田将暉&田中泯の圧倒的存在感に称賛
三谷幸喜脚本・小栗旬主演で、鎌倉幕府二代執権・北条義時を中心に描く大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)。5月22日放送の第20回『帰ってきた義経』では、奥州藤原氏の元に落ち延びた源義経(菅田将暉)が、義時をはじめとする鎌倉方の周到な手引きで、鎌倉に「帰還」するまでが描かれた(以下、ネタバレあり)。
兄・頼朝(大泉洋)に対抗できる勢力を持つ、藤原秀衡(田中泯)が支配する平泉にたどり着いた義経。しかしそれからまもなく、秀衡は義経に「そなたが(藤原家の)大将軍だ」と言い遺して逝去した。頼朝は、跡を継いだ泰衡(山本浩司)を焚き付けて義経を討たせ、それを口実に平泉を攻めるという策略を立てる。
義時はその種をまくために平泉へおもむき、泰衡の不安をあおっていく。さらに義経には静御前(石橋静河)が鎌倉方にとらえられ、2人の間にできた子どもが、生まれてすぐ殺されたことを告白。鎌倉が攻めてこない限り、穏やかに過ごすつもりだった義経だが、このことで怒りをあらわにしてしまう。すかさず義時は泰衡を言いくるめ、狙い通り義経暗殺を決意させる。
役目を終えて平泉を去ろうとした義時を、義経の家来・弁慶(佳久創)が引き止め、今まさに泰衡の軍勢が押し寄せる義経の館へ。すべてを悟った義経は、もし鎌倉と戦をすることになったときの戦略を生き生きと披露し、義時を笑顔で送り出した。やがて平泉から届いた、義経の首が入った首桶に、頼朝はねぎらいの言葉をかけ、かき抱いて滂沱(ぼうだ)の涙を流すのだった──。
■ 生き生きと戦を楽しむ…菅田「義経」らしい最期
サブタイトル「帰ってきた義経(ただし首だけ)」を、悲しくもきっちりと回収。義経だけでなく、藤原秀衡や義経の妻・里(三浦透子)と娘、藤原頼衡(川並淳一)、静御前の子ども、そしておそらく武蔵坊弁慶も・・・と大量の登場人物が退場するジェノサイド回となった。
SNSでも「まだ5月なのになんでこんなに地獄なんだよ」「『炎立つ』(1993年)、『義経』(2005年)を思い出すけど、こんなに悲惨な話だった?」と、過去の大河とも比較しながら、悲劇性のハンパなさを指摘する声が相次いだ。
なかでももっとも退場を惜しまれたのは、当然義経だ。しかし、従来の義経像をことごとく打ち破ってきた本ドラマらしく、悲嘆の影など一切見せず、満面の笑みを浮かべながら泰衡との対決に臨むという菅田「義経」らしいラストに、「(弁慶の)立ち往生を楽しげに観戦する。この作品の義経だ。これでこそだ」「『儚く美しく散る悲劇の貴公子』ではなく『クソガキ』として退場するのが、今回の義経には1番合ってる」との声が。
演じた菅田将暉にも、「あんなクソガキと戦略家と寂しがり屋を同居させた人物を演じて破綻のない人いるんか」「個人的にベスト義経を更新」などの、ねぎらいの言葉があふれかえった。
■ 「人間とは思えない」秀衡を演じた田中泯の舞踊
そしてもう1人、どうしても触れておきたいのが、藤原秀衡を演じた田中泯だ。もともとは世界的な即興ダンサーだが、次第に俳優としても活動の場を広げ、大河ドラマは『龍馬伝』(2010年)にも出演。「秀衡の内部に秘められた『静のエネルギー』を大切にした」(公式HPインタビューより)という秀衡像は、そのあまりの風格ぶりに「タイムスリップしてきた(秀衡)本人なんじゃない?」という声が上がったほど。
ヨロヨロと庭に歩み出て倒れるという絶命シーンも、「命が抜けて物体となったかのような、臨終の瞬間の動きはさすが」「繊細な重心移動からにじむ足の指の表情だけですごい」などの称賛が。さらに義経が、畑のなかで舞う秀衡の幻影を見るシーンまで盛り込まれ、「ダンサーならではの『人ならぬものの動き』がすごい」「あますことなく田中泯を出す、三谷脚本ありがとう!」など、感激の声が相次いだ。ダンサーの田中は、7月に「THEATRE E9 KYOTO」(京都市南区)で目撃できるので、興味が出た方は調べてみてほしい。
ちなみにこの第20回が放送された5月22日は、今から689年前の1333年に、鎌倉幕府が滅亡した日。義経のシミュレーション通り、「海から奇襲をかけ、戻ってきた兵を包囲してから、街に火を放つ」という方法で攻略されており、特に歴史に詳しい人ほど「よりによってこの日に放映するのか!」という驚嘆と感心の声を上げていた。
◇
『鎌倉殿の13人』の放送はNHK総合で毎週日曜夜8時から、BSプレミアム・BS4Kでは夜6時からスタート。第21回『仏の眼差し』は、頼朝が奥州藤原家を攻め滅ぼし、後白河法皇(西田敏行)が君臨する朝廷との関係を探っていくのと並行して、義時の妻・八重(新垣結衣)のエピソードも描かれる。
文/吉永美和子
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