アニメ映画史を揺るがす大傑作「犬王」、湯浅政明監督に訊く
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その圧倒的なまでの独創性で、国内外から高い評価を受けるアニメーション監督・湯浅政明
「そこを犬王のゴールじゃないようにしようと」(湯浅監督)
──それにしても大友良英さんとのコラボレーションは強力です。
音楽の大友さんにしろ、脚本の野木さんにしろ、(キャラクター原案の松本)大洋さんにしろ、最高峰のクラスですから。プロデューサーから「音楽は大友さんはどうでしょう?」って提案があって、「そりゃあやって欲しいですよ」となって。
でも大友さんと「室町時代のロック感」がうまく共有できなくて苦労はおかけしました(苦笑)。最初のセッションで違うな、となって。説明していっても、大友さんは全然わからないと。「振り付けが先に欲しい」と言われて。
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──曲の展開をどうすればいいか、今ひとつ見えなかったんでしょうね。
後から思えば、ですけど。ミュージカルは1つの感情で1曲作って、数曲を並べてお話を作っていくと思うんですけど、「犬王」は1曲のなかで舞台上のお話が展開して、それ以外に外のストーリーも展開しているので、抑揚付ける希望したタイミングなどもいろいろあって。それ、「劇判」に近いんですね。抑揚も絵が見えないと程度が分からない。
ロックと言っても、弾き方や、歌い踊ってる感じが分からない。だけどこっちも音楽なければ、絵を作れないと思ってましたが。このままでは進まないと思って、イメージに近い曲を編集してそれに歌詞を想定して展開した絵コンテを切りました。それでムービー作って。すると、それに合わせて大友さんがぴったりとムービーに合わせて作曲してくれた。
そのときにやっと、僕の求めていた力強いロックみたいな、不敵な歌がでてきて。それからアヴちゃんに好きなように・・・といっても、映像の筋や展開に合わせた感じでワードを入れてもらいつつ、歌入れになると、どんどんアヴちゃんがアイディアが出て先導してやってくれて。
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──犬王の声を演じたアヴちゃんは、湯浅監督が手がけた『DEVILMAN crybaby』(2018年・Netflix作品)にも大魔王ゼノン役で出てましたが、やっぱり声が素晴らしいですね。あの驚異的な音域の広さとダイナミズムは、なかなか見当たらない。
芝居はゼノン役のイメージしかなかったんだけど、女王蜂でのステージングがとにかく素晴らしいってことで、アヴちゃんと森山未來さんに、登場人物(犬王と友魚)を寄せていった方がまとまるのかなって思い始めて。
こっちが想定してるキャラクターに合わせて人を探としてもなかなか上手くいかない。こっちもキャラ設定がふらふらしてましたから。才能のある2人にキャラクターを合わせていった方が良いなと思って。途中で方向転換して、犬王と友魚の根本的なニュアンスが決まっていった感じがありましたね。
──犬王はそもそも異形で生まれるじゃないですか。芸を極めるたびに体が変化していく点など、手塚治虫さんの『どろろ』の百鬼丸を思い出させます。
僕も最初、その印象がありました。そこがまた面白いところでもあったんですけど。ただ、やっていくうちに決定的に違うことがハッキリしてきて。百鬼丸は魔物を1匹退治するごとに身体が戻っていく。つまり自分を取り戻していく話なのに対して、犬王は意外とそれは求めてないし、暗くない。
犬王は天真爛漫に踊りたいだけで、それを観たみんなが勝手に癒やされていく。そしたら、自分の身体も変化していくみたいな。彼としては、初めて足が伸びて変化したところで120%うれしいんですよ。だから、身体を取り戻すことが犬王のゴールじゃないようにしようと。
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──橋の下でのロックの場でも、群衆の一番前で障害をもった人たちが見事なブレイクダンスを踊るシーンが何度か出てきます。当時の社会的ヒエラルキーの下層にいる者があそこで一番素晴らしい舞を見せているというのが、犬王と呼応するようで。
社会から無視されていた人たちですよね。犬王をはじめとする能楽師も、将軍に人気がありながら、地位としてはすごく低かった。だから、町民の見る目もちょっと不思議なものを、自分より下なんだけどなんかすごいことをしていると、尊敬の部分もあったりして。
当時、あそこから地位を駆け上っていくには、芸事か侍になって功を立てるしか方法がないんです。調べていくと、いろんな芸術家がそこから出ていたけど、地位までは認められていなかった。そんななか、姿が異形であることから、やはり社会から抹殺されていた犬王が、逆にその異形であることをも利用してのし上がってゆく。面白いので、感化されてみんなも自分なりにやり出したり、力を与えてるような感じに見えればなと。
──盲目の琵琶法師である友魚もそのひとりですもんね。
そうですね。「自分たちは侮られる存在ではないんだぞ」というところが描きたい部分でもありました。
映画『犬王』
2022年5月28日(土)公開
監督:湯浅政明
脚本:野木亜紀子 キャラクター原案:松本大洋 音楽:大友良英
出演(声):アヴちゃん(女王蜂)、森山未來、柄本佑、津田健次郎、松重豊
配給:アニプレックス、アスミック・エース
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