【鎌倉殿】悲劇の展開にSNS激震、新垣結衣だからできた八重像

2022.5.30 20:15

義時の館にて。八重が数多くの孤児を養育していることについて、「わたしだけではだめなのですか」と寂しそうな金剛(森里優斗)を、「あなたが一番大事」と抱きしめる八重(新垣結衣)(C)NHK

(写真12枚)

三谷幸喜脚本・小栗旬主演で、鎌倉幕府二代執権・北条義時を中心に描く大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)。5月29日放送の第21回『仏の眼差し』では、ちゃくちゃくと武士政権の基礎を築いていく源頼朝(大泉洋)の快進撃と並行して、義時一家を襲った突然の悲劇が描かれた(以下、ネタバレあり)。

源義経(菅田将暉)という大将軍を失った奥州藤原氏は、鎌倉勢の総攻撃で滅亡。これによって頼朝は、日の本のすべてを平らげることに成功し、残る気がかりは後白河法皇(西田敏行)の出方のみとなった。しかしそれを喜ぶどころか、義経を死に追いやった悔恨から抜け出せない義時に、頼朝は「己のしたことが正しかったのかそうでなかったのか、自分で決めてどうする。決めるのは天だ」と言って、その迷いを払拭しようとする。

義時の妻・八重(新垣結衣)は、孤児たちの救済に生きがいを見出し、頼朝の本妻で義時の姉・政子(小池栄子)も安堵する。その一方、かつて八重と子を成した仲だった頼朝は、八重に昔話を無理やり振ったり、息子の金剛(森優理斗)を「わしに似ておる」と評したり、なにかと未練のある様子を見せる。それを不安に思う義時だが、八重は「小四郎殿(義時)でよかったと思っています」と、彼への愛情を確信させる。

義時は父・時政(坂東彌十郎)と、異母弟・時連(瀬戸康史)とともに、運慶(相島一之)に依頼した仏像の完成を見届けるため、伊豆に向かう。運慶が「俺の母によう似ておる」と語る阿弥陀如来に、八重の面影を重ねる義時。しかしまさにその頃、川で亡くした息子と似た名前を持つ孤児を助けようとして、川で行方不明となった八重の悲報が、政子のもとに届くのだった──。

■ 癒やしオーラの配分を柔軟に調整、新垣結衣による「八重」像

前回、八重になにかが起こることを暗示する予告が流れた直後から、SNSではその身を案じる声が上がっていた。そしてここ最近ではドラマ内の死者数がもっとも少ない状況ながらも、そのなかに八重が入ってしまったことに、「いつかこうなるとは思っていたけど・・・しんどい」「冒頭の天罰の話が小四郎にかかってくるの、人の心がねえ!」と、予測はしたけど心が付いていかない、という嘆き節があふれかえった。

本作の八重は、「頼朝の最初の妻だが、政子登場でフェードアウトした八重姫」と「義時の妻で泰時(金剛)の母だが、出自不明の阿波局」という、謎多き2人の女性のハイブリッドと言えるキャラクター。これは時代考証の坂井孝一氏の「八重姫と阿波局は同一人物」という仮説が元になっており、事実関係はさておき設定としてはかなりドラマティックなので、三谷が採用したと思われる。つまり史実をベースにしつつも、ほぼフィクションに近い存在なのだ。

第18回より。鎌倉・義時の館にて。元気のない大姫(落井実結子)に習字を教える八重(新垣結衣) (C)NHK

そのためかなり自由度の高い役だったが、新垣結衣は天性の癒やし系オーラを封印して、「恋に盲目で思い込みの激しい面倒くさそうな女性」として登場。

当初は新垣も「どういう意図があってこの行動をとっているのかというのが私自身理解しきれていなかった」(公式インタビューより)そうだが、義時の好意を受け入れてからは、慈愛にあふれた・・・まさに今回のサブタイトル通りの「仏の眼差し」を持つ女性へと、いつの間にか変容。あふれんばかりの癒やしオーラの配分を、物語の流れや義時との関係の変化に応じて柔軟に調整する、新垣だからできた「八重」像だったと言えるだろう。

SNSでは「溺れかけの鶴丸のため命を張った八重さん、本当に仏のような生きざまだった」「なんと業の深い、なんと愚かしくも美しい、けれどこれが母というものなのだ」と、その自己犠牲をたたえる声が相次ぐ一方、「八重姫は川に入って死んだという説が・・・まさか千鶴丸(息子)の死からこんなに経ってから、あの説を拾ってくるなんて」と、今回も史実とフィクションの狭間で衝撃的なストーリーを導き出す、三谷の発想のあざやかさと鬼具合に敬服する声が多く上がった。

■ 三谷脚本恒例、山本耕史の脱衣シーンにざわつくSNS

そんなシリアスな展開のなか、八重たちを助けに川に入った三浦義村を演じた、山本耕史の立派な裸の上半身に、つい視聴者の目は釘付けになってしまったよう。SNSでは「山本耕史の筋肉に目をやってしまって、八重さんから目を離してしまった我々視聴者にも責任があります」「『そんな立派な大胸筋してるくせになんで八重さん救えなかったんだバカバカ!!』としか思えなくてすまなんだ」と、遠回しながらもその筋肉美を称賛する声が続々とあがった。

山本の脱衣シーンは、三谷脚本の歴代の大河ドラマ『新選組!』(2004年)や、『真田丸』(2016年)にも登場しているため、「山本耕史を脱がせずにはいられない三谷幸喜の方が気になって仕方ない」「三谷幸喜は大河のなかで1回は山本耕史を脱がす誓いでも立ててるんだろうか」などのコメントが。

そういえば三谷幸喜作・演出の舞台『大地』(2020年)でも、山本耕史が上半身裸で筋肉自慢をするシーンがあったので、やっぱり「一作品につき一脱衣」を狙ってるんじゃないだろうか? と、個人的には邪推するところだ。

『鎌倉殿の13人』の放送はNHK総合で毎週日曜夜8時から、BSプレミアム・BS4Kでは夜6時からスタート。第22回『義時の生きる道』は、頼朝が上洛して後白河法皇(西田敏行)と対峙する一方で、そのことに御家人たちが不満を募らせる様が描かれていく。さらに比企能員(佐藤二朗)の姪で、のちに義時の正室となる比奈(堀田真由)が初登場する。

文/吉永美和子

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