逃虫グッズが話題…大阪のものづくり会社、発明へのアツい思い

2022.6.16 17:45

「旭電機化成」の独自ブランド『スマイルキッズ』の開発を手掛けてきた原守男専務

(写真13枚)

■ 一般人からの持ち込みも、ひとまず話を聞いてみる

──学生以外にも、一般の発明家によるアイデア商品も多いとか。

ウチに持ち込みに来る人は多いですよ。特にテレビ出演のあとは、会社に資料を送ってくる人や、「特許を取った発明品がある!」と電話がかかってきたり・・・とにかく「見てくれ」「聞いてくれ」という問い合わせが増えますね。まずは話を聞いてみようということで打ち合わせをしますけど、一筋縄ではいかん人ばかりです(笑)。

──たしかに「発明家」というと、情熱がすごいイメージがあります。

福岡県から、はるばる車で10時間かけてアイデアを持ち込んできた発明家もいました。「飛び出さない!ラップホルダー」という、ラップの箱に差し込んで本体が飛び出さないようにできるストッパーなんですけど。普通、アイデアを思いついたらそこで満足してしまうんです。

でもその人は金型も注文して、商品化まで1人で進めてしまったんですよ。出来上がった商品は息子さんが細々とインターネットで販売してたそうですけど、なかなか売れなかったみたいでね。

理髪店店主による発明品「飛び出さない!ラップホルダー」(6個入り500円・税別)

──ええ! 商品化のノウハウも無い一般の方ですよね?

本業は理髪店の店主さんでした。理髪店って、時間帯によってはお客さんが来ず、暇な時間も多いそうで。ヘアカラーでラップを使うこともありますし、暇な時間にアイデアが浮かんだんちゃうかなぁ。

──すごい行動力ですね。

でも、完成品を持ち込まれることなんて本当に珍しいですよ。投資も終わった状態なので、売れ行きが悪くてもリスクは少ないんです。とはいえ、そのまま引き取るわけにもいかないので、問屋や小売店で「どのラップにも当てはまるサイズなのか」「売れる見込みはあるのか」と調べる時間をもらって。

最終的にどの会社のラップにも当てはまることが分かったので、在庫や金型も買い取らせてもらい、ウチで扱うことになりました。それまでお店に在庫の段ボールが積まれていたそうで、深く感謝されましたね(笑)。

──そういうケースもあるんですね。

力を入れずにレモンを絞ることができる「レモンしぼり革命」のアイデアを持ち込んだ発明家は、主婦の方でした。家事のかたわら15年も研究し続けて、ある日「どうしても見てほしい」とウチに木製の試作品を持ち込んできたんです。

家族の力も借りてさまざまな形の試作品を30~40個作って、普通の山型タイプより弱い力で汁が絞れる「剣山型」にたどり着いたそうです。「私が考えたのはここまで。あとを商品化してくれませんか」とのことで・・・特許まですでに取っていたんですね。

普段はどれだけ見込みがあるアイデアでも一度は「検討します」と返すんですが、「レモンしぼり革命」は持ち込みの段階で「これやりますわ!」と返事をさせてもらいました。

■ 発明家の人は、ほんまにしぶとい!

──同じシリーズで「ごますり革命」という商品がありますが、これも同じ方のアイデアですか?

「ごますり革命」は、その人のお友だちがアイデアを持ち込んできたんですよ。すり鉢を使わず、お茶碗やどんぶりでごまをすることができる道具なんですけど、この人も原型まで完成させてました。思わず「何年温めてたアイデアなん?」と聞いたら、その人も「15年くらい」と答えてましたね。

──その方も15年! しかも「レモンしぼり革命」の方のお友だちなんですね。

たぶん、発明家仲間なんでしょうね。ほんま、発明家の人はしぶといです。その人は、メイン部分のごまをする部分だけを研究していたんですけど、それだけ商品化するのは味気ないので、薬味をまぜられるスプーンに、しょうがやにんにくをおろす突起部分、計量用のラインを加えて。1本4役の商品に仕上げさせてもらいました。

主婦発明家が作ってきたという「レモンしぼり革命」の試作品

──「~革命」という名前もまたインパクトがあって覚えやすいです。

それは発明家直々の命名ですね。レモンしぼり器の形は、100年ほど山型のままだったそうです。でも剣山型のしぼり器を発明したということで「これはレモンを絞る革命が起きたからレモン革命や!」と熱弁されてました。僕らも圧倒されて「ほな革命シリーズでいこか!」とネーミングを採用しました。

発明家のアイデアを商品化するときはいつもそうなんですけど、パッケージのデザインを決める会議にも参加してもらいます。こちらで作ったデザイン案をいくつか見せて、何回も打ち合わせを重ねるんですよ。

──やっぱり商品化するには、アイデアをそのまま採用するわけじゃなく、旭電機化成さんのリサーチや改良が重要なんですね。

そうですね。「ごますり革命」もですが、そのまま商品化するにはもうひとアイデアが必要なものもありますし、料理で使う商品の場合は熱に強い素材を選ばないといけないです。基本的なアイデア部分は出してもらって、細かい部分や素材、パッケージなどはウチに任せてもらうことがほとんどです。

でもなるべく発明家には参加してもらって、「よかったら一緒にあれこれ頭をひねって、発明を楽しんでください」と声をかけて意見をもらうようにしています。そうすると、やっぱり思い入れがすごいから、少しでも良いものにしようと一生懸命意見を言ってくれるんですよ。

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