オール巨人が歩んできた漫才道「お客さんに見てもらってなんぼ」

2022.6.26 09:00

書籍『漫才論:僕が出会った素晴らしき芸人たち』を上梓した漫才師・オール巨人

(写真5枚)

「デビュー4本目からが勝負」(オール巨人)

──漫才という芸の基本がそこにある、というか。

きっちり原稿用紙に書いて仕上げるというよりも、おもろい話を繋ぐという形をやってましたね。ただ、漫才作家さんが原稿用紙に書いたものを自分の漫才にするというのは、これもまた難しいんですよ。で、そういったことが昔の芸人さんはみんなできてたんです。

──すごい作家さんもたくさんいて。

そうです。秋田實先生とか織田正吉先生とかね。

──最近はほとんど見かけませんが、テレビの漫才番組で「作、誰々」ってテロップが当時はありましたよね。僕はそれを書き留めたりしてました(笑)。

人が書いたものをやるって、めちゃめちゃ難しいんですよ。自分で書いたものはやりやすいんですけど。だからデビューして3本目くらいはおもろいんですけど、4本目からね、全然おもろない。自分の引き出しを全部出してしもうてるから。その後が勝負。

要は、人が書いた台本をどんだけ演じられるか、どうか。昔の人はそれができる。今はできない。中堅でもできひんと思う。それは、例えばNHKのラジオ番組『上方演芸会』では必ず新ネタをやるんです。それは先生が書くんですね。大池晶先生とか本多正識先生とか、いろんな先生が書いたのをやるんです。

──伝統的にあの番組はそうなんですか?

そうです。僕らもちょこちょこ出てるんですけれど、名前は言いませんけど、かなり上手い若手、中堅の漫才師がダダ滑りしてるのをなんべんも見てる。でも、若手の漫才を見るのも楽しみなんですよ。人が書いたモノをどう演じるんかなぁって。

「若手の漫才を見るのも楽しみ」と語った巨人師匠

──師匠はそれこそ若手の漫才もちゃんと見てますよね。

よう見てきましたね。最近は、ちょっと数は減ってきましたけど。

──やはり積み上げてきたものが違う気がします。『M−1』の審査員の講評でも。

審査をするから見てたというのもあります。CSでやってる単独ライブも見るし、若手がワチャワチャやってるのも見るし。このときは良かったけど、このときはアカンかったなぁ、とか。単独ライブでは気合い入れてやっとるなぁ、でも劇場ではこうやなぁとか、めちゃめちゃ思うてしまうんですよね。だから、テレビでたまたま売れたりしたら後が大変やろうなって思うんです。

──それは舞台が一義である、ということですか?

舞台というか、僕ら芸人はお客さんに見てもらってなんぼですから。お客さんがいない収録スタジオで漫才を演ってても、そのカメラの向こうにお客さんがいると思って演ってない演者がいてると、何しとんねんって思います。

劇場に来られたお客さんを前に反応を見ながら漫才を演る。もう、ホンマにお客さんって審査員です。おもろいもんは笑う、おもろなかったら笑わない。ホンマ、そうなんです。

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本