オール巨人が語るM−1審査員「中堅の大会ならやってもええかな」

2022.6.25 07:00

書籍『漫才論:僕が出会った素晴らしき芸人たち』を上梓した漫才師・オール巨人

(写真5枚)

「『M−1』はもはや新人賞ではない」(オール巨人)

──さんまさんは、マンガもアニメも全部読んでるし、見てるし、知ってるし。

『さんまのお笑い向上委員会』でも『ホンマでっか!?TV』でも、よう知ってるでしょ。いや、さんまはホンマにすごい。記憶力もね。紳助もめちゃくちゃ細かく、いつ、どこで、って時間まで覚えてたくらいですしね。この2人には全然勝てんと思うてましたね。

昔、3人そろって『すばらしき仲間』(TBS系列・1976年〜1992年)って番組に出たんですよ。そんときも2人の間に入っていけなくて、しゃべれへんかった。まぁ、録画を見たらそうでもないんやけど、僕はあの2人と絡むのは苦手でした。2人は昔から普通やなかった。

──あの2人は、まさに「怪獣」ですよね。

さんまは噺家からスタートして、司会とかいっぱいして。紳助は漫才からタレントさんで、僕は漫才。みんなそれぞれ違ったから良かったです。

──でも今、阪神・巨人師匠みたいな、デビューから現在まで漫才道を突き進んでおられる方というのは、吉本でも少ないですよね。

そうですねぇ。先輩はいてはりますけど、いっぺん別れてまた組まれてたり・・・ザ・ぼんちさんも、西川のりお・上方よしおさんもいっぺん解散してはりますからね。この40何年間、休んだり、解散したりしてないのは僕とこだけですかね。

オール巨人著『漫才論:僕が出会った素晴らしき芸人たち』(ヨシモトブックス・1650円)

──解散しそうになったら賞をもらったりして、結果的に切り抜けたと書かれてました。

それはホントです。毎日のように腹立ってたんですよね。組んで20年くらいまでは、相方がずっとイヤでイヤで。相方も俺のことをそう思ってたやろうけど。

でも辞めれないような理由がすぐにできてしまうんですよね。今度こそ辞めようと言うって決めたら、「巨人さん、漫才大賞もらいましたよ!」って。

──でもなんか、今の若手の漫才師さん見てると仲の良さそうなコンビが多そうやなと。

いやいや、そうでもなさそうですよ。裏ではそんな話よう聞くで(笑)。まあ、ホンマに仲が悪くなったら解散するんでしょうけど。ずっと仲ええコンビって見たことないなぁ。

──先ほどの『M−1』に話を戻すと、今回の著書『漫才論』でもかなり言及されています。僕のようなお笑い好きからすると、明らかな質の向上、活性化という点で、功罪の「功」が相当大きいと思いますが、「罪」はあると思いますか?

うーん、ないんちゃうかなぁ。ない、ない。

──もともと、「芸歴10年で売れなかったら別の道を目指すためにした」と紳助さんは言ってましたよね。

それが紳助の「辞めるためのきっかけを与える賞レース」ということやったんですが。それで言うと、15年まで漫才ができるようになったのが「罪」(笑)。『M−1』はもはや新人賞ではないですからね。でも、この5年伸びたことですごく面白くなったね。

でも、ホンマにね。おもろかったら、芸人は2~3年で絶対に売れます。僕らも紳助らもそうやったもん。こんなん言うたら生意気やけど、僕らは1年目ですべてのテレビ局の新人賞をいただきました。まあ、漫才師の数が少なかったからというのもありますけど。

2019年には「紫綬褒章」を受章したオール阪神・巨人(提供:吉本興業)

──いやいや。それは当然なことで。

8年かそこらで(漫才界でもっとも古い歴史を持つ)『上方漫才大賞』をもらって。8年目ってまだ新人ですよ。で、次の年ももらってるんですよ。9年目に(これまで過去最多の大賞4回)。

それは阪神くんの力が大きかったと思います。いろんなアニメのモノマネができたり。それを僕がわざわざネタに入れさせるんです。最初、阪神くんはイヤがってたんですよ。モノマネは絶対ウケへんって。

──阪神師匠はちょっと可愛いキャラでしたね。

すごい人気でしたよ。『ヤングおー!おー!』(毎日放送・1969年放送開始)の地方公演の出待ちで2~300人いて、演者さんの乗ったバスが動かへんことがありましたからね。

ともかく『M−1』は今や、完全に若手の登竜門。そういうのがあることに感謝しながら漫才をやってもらいたいですね。『M−1』がなかったらみんなモチベーション全然上がらないと思いますよ。

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