「笑いの鬼」と称されるNSC講師、本多正識はなぜ笑わないのか

2022.7.19 07:00

本多正識氏。20歳のころラジオ大阪『Wヤングの素人漫才道場』に11本連続で漫才の台本が採用されたことをキッカケに漫才作家の道へ

(写真4枚)

しかし決して甘口ではない。講評でも、生徒たちに「なにを言っているのかよく聞き取れないものは、誰も評価できません。フリやボケも、タイムトライアルのようにまくし立てて言葉を消化するのではなく、ちゃんとお客さんに伝える意識を」と、はっきり指摘する場面も。

7月某日、ネタ見せ授業での本多氏

そんな今回のネタ見せのなかで、本多氏は「コンビでやっていたなかで、ひとり『ええな』と思う人がいました。これからの頑張り方で可能性が十分ある。でも、今回のネタ見せで組んだ相方さんとでは厳しいかな。あと、コンビとしておもしろそうだったのが3組いました」と有望株を発見したという。

「この勘は30数年の講師歴のなかでほとんど外れたことがないんですよ。ナインティナインを初めて見たとき、思わず『君らは売れる』と言っちゃったんですけど、本当に翌年からすごいことになった。当時、同期だった矢野・兵動の矢野くんは『このおっさん、なにを言うてるねん。こんなおもんないやつらが売れるわけないやろ』と思っていたそうです。今は『売れる』なんて、失礼なので生徒には絶対に言いませんけど」

NSCの在学期間は1年。しかし卒業後、芸人として生き残れるのはほんの一握りだという。だからこそ本多氏は「よく『あいつは一発屋だ』とからかう人がいるけど、一発屋になれるのは本当にすごいことなんです。誰もやらなかったことを半年や1年でも流行らせられるなんて、芸人としては大成功。人気が続くかどうかは別の話。そもそも、それ以前に99パーセントは芸人として出てこられないものなんだから。だからこそ、一発屋やアイドル的な人気の芸人をちゃんと認めてあげてほしい」と、芸人たちのことを思いやる。

そして本多氏は、インタビューの最後に「NSC以上におもしろい場所はどこにもないです。『人を笑わせる』という一番難しいことをしようとしている、おかしな子ばかりいますからね。だからおもしろい。この仕事はなかなか辞められませんよ」と笑顔を見せた。

「僕の師匠は巨人さん。漫才のことから先輩後輩の対人関係まで、ありとあらゆることを教えてもらいました」と語った本多氏

取材・文/田辺ユウキ

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