西谷弘監督「映画には、小説を読むような『深み』が必要」

2022.7.10 09:00

映画『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』でメガホンをとった西谷弘監督

(写真6枚)

そこはあえて狙いました」(西谷監督)

──ディーンさんと岩田さんの掛け合いは、原作のホームズとワトソンにはないシャープな軽妙さがあって、そこがこのシリーズの魅力ですからね。

まぁ、容姿端麗な2人ですから。この2人のキャッチボールがどう転がっていくか分からないけども、笑えるというのかな、そこを目指しましたね。

──だから最初にドラマを観たとき、スクリューボール・コメディだなと思ったんです。

たしかに。リハーサルも笑いのシーンばっかりやってたんですよ。

──この掛け合いがどんどん面白くなっていく。だから、数多あるシャーロック・シリーズのなかでも、これは新しいぞと。

ありがとうございます。ディーンさんと岩田さんも好きなんでしょうね、笑わせるというのが。意外にも、2人ともコメディ・シーンにすごく情熱かけてくるし。大阪の舞台挨拶でも、漫才やってましたからね(笑)。最初はその2人のキャラ作りにかなりの神経使いましたけど、今はもう安心して見ていられるようになりましたね。

大阪での舞台挨拶で、漫才を披露したディーン・フジオカ(左)と岩田剛典(6月20日・大阪市内)

──とはいえ、それは脚本で設計するわけじゃないですか。最初からそれを目論んでいたんですか?

そうですね、意識はしました。ただ、脚本では分からないような、例えば連ドラの第1話の最後に一緒に住もうといったとき、住みたくないからお互いに荷物をバッと捨てるとか、そういう会話でないところのリハーサルから始めたんです。2人のキャッチボールの空気感を作っていく、そんな作業からでしたね。

──ディーンさんも自分の持ち味をどんどん表に出してきて。

2人の丁々発止も、客観的に見たらイチャイチャしてるように見えると良いなとは思っていました。最初の狙いはそこでしたね。

──かといって、ゲイ的ではない。そんな2人の掛け合いが、こういう『バスカヴィル家の犬』みたいな異質な題材のなかでも生きてるところに、監督の手腕を感じました。

あぁ、良かったです。ありがとうございます。

──あと今回の劇場版に登場する蓮壁家の使用人、馬場杜夫を演じた椎名桔平さんがメチャクチャ面白かったんですよ。なるほど、あの椎名桔平をこう使うか!と。

桔平さんとは今回が初めてだったんですけど、すごく良かったですよね。これをきっかけに、9月に『ガリレオ』シリーズの最新作『沈黙のパレード』が公開されるんですけど、それにも出てもらってます。

映画『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』のキャスト © 2022「バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版」製作委員会

──ややもすると、キャラを作り込みすぎる傾向のある方だと思うんですけど。

この前、東京の舞台挨拶で一緒に立ったんですけど、桔平さんが「監督にあまり目立たないでいてくれと言われた」と話されてて。彼がお屋敷を歩くだけで、どうしてもこいつが怪しいとかなるじゃないですか。だからもっと影の方に、黒子に徹してくれというか。そうやりながら撮ってました。

──そういうところが、西谷監督の映画の設計の巧さですよね。その一方、ドラマ版と比べて今回の劇場版では、美術や照明など、相当作り込んでいますよね。それこそ、これまで手がけられてきた作品以上に。なかでもパープルの印象がとても強い。

そうですね。現代劇ではあるけれど、リアリティからちょっと遠ざけようと。だから、暗闇なんかも、だいたいは黒かブルーに落とし込むんですけど、ちょっとパープルとピンクっぽいものにしたりとか。そこはあえて狙いました。

──あれを観ただけで、西谷監督のこだわりがハッキリと伝わってきますから。予告編でも西谷監督の映像美がガンガン出てますよね。

取材で「パープル」を指摘してもらったのは初めてなんで、すごくうれしいです(笑)。

映画『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』

2022年6月17日公開
監督:西谷弘
出演:ディーン・フジオカ、岩田剛典、ほか
配給:東宝
© 2022「バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版」製作委員会

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