「ハノーバーって誰やねん!?」ダークホースが初の決勝へ

2022.7.8 07:00

お笑いコンビ・ハノーバー(左から井口バツ丸、良元カルビ)

(写真4枚)

若手芸人の登竜門『第43回ABCお笑いグランプリ』の決勝(7月10日開催)へ進む12組が発表された。大阪勢からは4組が選ばれ、吉本の芸人が名を連ねるなか、お笑いコンビ・ハノーバー(井口バツ丸、良元カルビ)が松竹芸能所属で唯一ファイナリスト入りを果たした。

井口のクズエピソードや身の上話を良元が引き出していくスタイルで、コントもこなす二刀流芸人でもある。そんな2人に、現在の主戦場であるインディーズライブ※のことや、井口のオカンの驚きの過去などについて語ってもらった。

※独立系のイベント制作者が主催し、事務所に所属していない芸人らも出演するお笑いライブのこと

取材・文/田辺ユウキ

■「大阪のお笑いインディーズ界のレベルは上がっている」(良元)

──良元さんはNSCに2カ月だけ通っていて、今回『ABC』で共演する天才ピアニストと同期だそうですね。

良元:NSCにいたのも一瞬であんまり面識もないので、同期って信じられないですね(笑)。今年の『NHK上方漫才コンテスト』も獲ってるし、素直にすごいなと思っています。たまに「よしもと漫才劇場」へ観に行くんですけど、ネタがものすごくおもしろい。ただ、やるからには負けたくないですね。今回の『ABC』では大阪のインディーズライブ出身は僕らだけだし、ここで勝てば大阪の非・吉本芸人を取り巻く状況が変わるんじゃないかなって。

井口:「ハノーバーって誰やねん?」という人が圧倒的に多いんですけど、今回でネタを観てもらって「吉本芸人に負けてないじゃん!」っていう声が増えたら良いですし、直接的に現状を変えられる大チャンスだと思っています。一部ではダークホースと呼ばれているみたいですけど、うれしい肩書きですね。

良元:ダークホースってかっこええよな・・・あの頃の麒麟さんやからね(笑)。こんな無名で良かったと思う日はないです。『ABC』で勝って、僕らを育ててくれた大阪のインディーズライブに恩返したいですね。今は、自社劇場の「DAIHATSU 心斎橋角座」(大阪市中央区)だけじゃなく、大阪にある「楽屋A」と「舞台袖」というフリーの芸人もライブをしてる劇場の舞台にも月20回くらい立たせてもらっていて、そのおかげで結果を残せるようになってきたので。

昔からの幼馴染だという2人。「良い意味で、今回の『ABC』は気楽に楽しめる立場。そこが強みでもあるかと」と語った良元

──現在は松竹芸能に所属されていますが、フリーの時期もあり、さらにその前は梅田芸能に所属されていたとか。

良元:梅田芸能のときは持ち劇場がショーBARだったんですけど、月に少なくて100回、多いときには150回くらい舞台に立ってましたね。ショーBARなんでお客さんのヤジも飛んできますし、もうがむしゃらにやるしかなくて。結局それが今の筋力にはなっているんですけど。

──現在の大阪のインディーズライブシーンですが、おふたりから見てどのような状況ですか。

良元:そこで活動している芸人たちは間違いなく力をつけてきていて、学生芸人もがんばっていますね。だからこそ「こういう場所でライブをやっています」と全国にアピールしたい。舞台の数が増えたことで、大阪のインディーズ界のレベルは一段階、二段階は上がったと思います。

──やっぱりお客さんの前で舞台の数をこなすと、力の付き具合は変わってくるものなのでしょうか。

井口:いや、もう全然ちゃうと思いますよ。

良元:それだけ舞台に立たせてもらって忙しくなってきたのに、井口は未だにバイトを週10本も入れているんですよ。家庭を持っているからなんですけど、こいつはどうしてもギャンブルがやめられないんです。毎日、劇場とバイト先、パチンコ屋、家をぐるぐる回っている。僕は「こいつ、今後大丈夫なんか?」ってずっと不安でしたよ。

井口:ちょっとした空き時間があれば「あ、ギャンブルできる」となっちゃいますね。お金が手元にあったら全部使いたくなるんです。今、子どもがトイレトレーニングをしているんですけど、ちゃんとできそうな瞬間がパチンコのリーチに見えてくるんですよ(笑)。

「賞金が欲しいんでどんな手使っても勝ちにいきますよ」と意気込む井口に、「ないねんって、そんな力づくで勝つみたいなんは」とツッコむ良元

──いわゆる「クズ芸人」の素質がある、と(笑)。

井口:ショーBAR時代も、みんなが寝てる時間にパチンコしてたんで。夜の8時から朝の5時までライブをやってご飯を食べて帰るんですけど、僕と一部の芸人は頑張って目開けてそのままパチンコで並んでました。その後に漫喫でお風呂だけ入って、また舞台に立つんですけど、顔はパンパンでしたね。

良元:むっちゃ昭和の芸人なんです。こいつ、ほんまに何もしてくれないんですよ! ネタも書かへんし、コンビのスケジュールも組まへん、賞レースのエントリーもこっちに任せっきり。それなのにパフォーマンスはなぜか評価されるから、僕としてはなんか悔しいんですよ。一緒に売れたいけど、一度くらいは地獄に落ちてほしいと思ってます。

井口:僕の生活は全力じゃないとできないですよ。簡単にマネできないと思ってるんで。

良元:その代わりネタ合わせってなったら、いつでも文句は言わずに来てくれますけどね。嫌そうな顔のときはありますけど。

井口:でもうちは(良元が)引っ張ってくれないとなりたたへんから、そこは頑張ろうって。

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