インコだけじゃない?時代に合う商品開発、大阪の文具メーカー

2022.8.9 14:15

優しく握って癒される『ペニンシュラ セキセイインコぬいぐるみ』

(写真9枚)

インコ愛好家から注目を集めている「セキセイ」(本社:大阪市阿倍野区)という会社をご存知だろうか。社名からインコや鳥類に関連する企業なのかと思いきや、実は1932年に創業した老舗文房具メーカーだ。

商品ラインアップを見ると、「シスボックス」「カケルアルバム」など、一度は使ったことがあるかもしれない商品が。スマホを支えるスタンド機能とタッチペンが付いた「ラポルタ スマタテペン」など気になるアイテムも並んでいる。

インコグッズもちらほら見られるが・・・、社名の「セキセイ」は鳥に関係あるのか? さらには数々の個性的な商品が生まれた経緯を訊くため、代表取締役会長で2代目の西川雅夫さんのもとを訪ねた。

■ 1億円以上売り上げた商品も…時代に合わせたアイデア文具

──さっそくですが「セキセイ」という社名の由来を教えてください。

実は、正確な由来ははっきりしておらず・・・。創業時は「西川誠一郎商店」だったんですが、父が戦争から帰ってきた頃には「セキセイ」に変わっていました。

当時は「ツバメノート」や「トンボ鉛筆」など動物の名前を取った社名が流行っていまして。「セキセイインコのように、人々から愛される会社になれるように」という意味が込められていると聞いたことはあります。

──なるほど。SNSのアカウントを見ていると、ツイッター担当の社員さんが飼っているインコの様子が毎日投稿されていたり•••かなりの「インコ推し」ですよね(文房具はほとんど出てこない)。これも社名にちなんでいるとか?

インコを前面に押し始めたのは最近のことなんです。SNSでの活動は直接的に商品の売り上げに影響はありませんが、社名を知ってもらえるきっかけになります。せっかく「セキセイ」が入っているんだから、親しみを感じてもらおう!ということで、インコグッズも出してしまいました。

──その甲斐あって、インコ好きからも注目を集めているんですね。西川さんは入社してから今年で50年だそうですが、その当時(1972年)からファイルやアルバムなどの商品が増加しているとか。これはどういった変化なのでしょうか?

父の時代には官庁関係の商品を扱っていたんですが、官庁がコンピューター化されていく過程で需要が減ってしまったんです。そこで、僕が入社した頃から本格的に一般企業向けの商品に切り替えていくことになりました。

まずは、ポケット式で写真を簡単に収納でき、台紙に文字が書ける「カケルアルバム」を開発。そのタイミングで富士フイルムさんがレンズ付フィルム「写ルンです」を発売。当時、カメラは操作方法が難しく限られた人の趣味でしたが、誰でも手軽に写真を撮れるようになり、アルバムの需要もグンと増えました。

当時は台紙に付いているシートをめくり、そこに写真を挟むアルバムが主流だったので、簡単に写真を収納できるカケルアルバムはかなりヒットしましたね。

「おうち時間」や「リモートワーク」のため需要が増えた商品も

──アルバムを販売したタイミングで写真ブームがおとずれたとはすごいタイミングです!

本当に時期がよかったんですよ。人生はタイミングですね(笑)。カメラが流行ったら「カケルアルバム」、スマホが出たら「スマタテペン」というように、メディア機器の付属品は確かな需要があります。

──たしかに「スマタテペン」は、スマホ全盛期な現代ならではの商品ですよね。スマホスタンド、タッチペン、ボールペンと1本3役で、2021年度の『日本文具大賞』でもデザイン部門で優秀賞を受賞しています。

これは1億円以上を売り上げた直近のヒット商品ですね。僕がデザインしたんですが、1番のこだわりポイントが幅広なクリップ部分。ここに社名をプリントできるようにして、企業や団体のノベルティとしても使えるようにしました。カラー展開も8種類と豊富にし、コーポレートカラーに対応できるようになっています。

縦・横どちらでもスマホを支えられる『スマタテペン』。ユーザーが新たな使い方を教えてくれることもあるとか

最近も教育関係のメーカーさんから発注が決まったんですが、生徒さんがあまりボールペンを使わないらしくて。「タッチペンとスマホ立てだけで販売してほしい」という要望が入ったこともあります。

──今の子どもたちってボールペンをあまり使わないんですね・・・。ジェネレーションギャップを感じます。

それでいうと、最近は文部科学省の取り組みである「GIGAスクール構想」で、全国の児童に900万台のタブレット端末が行きわたりました。そのため子どもがタブレットを持ち運ぶようになったのですが、壊れたり落としてしまうことが増えたそうで。

なので、ランドセルにタブレットを入れても衝撃からガードできる「クッションケース」を開発しました。こちらはコロナ禍でオンライン授業が増えた影響もあり、2021年はかなり売れましたね。

エネルギッシュに商品開発について語る「セキセイ」の代表取締役会長・西川雅夫さん

──令和ならではのグッズですね。そういった、時代に合った商品のアイデアはどうやって生まれるのでしょうか?

アイデアは「何か良いものはないか」と考え続けないと降りてきません。だから常に商品について考えていますね。アメリカやドイツでおこなわれるステーショナリーショーにも足を運びました。そこに並ぶ商品を見て「日本人だったらこういう使い方をするな」「自分だったらもっとデザインに力を入れる」など考えることで、開発に至った商品もあります。

ほかにも、日本初となる透明タイプのファイル『ページイン』や、1年で10億円以上の売上を誇るファイリングボックス『シスボックス』などヒット商品は多数。そのうち、西川さん考案の商品は全体の8割以上にのぼるとか。

社内でおこなわれる開発会議でも商品化の可否を決めるという西川さんに、GOサインの基準について聞いてみると、「これまで商品をヒットさせてきた実績があるので」と説得力のある回答が返ってきた。インコだけではない「セキセイ」の新商品に今後も注目したい。

取材・文・写真/つちだ四郎

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