「号泣」癒やし全成の壮絶すぎる最期に、SNS嗚咽【鎌倉殿】
三谷幸喜脚本・小栗旬主演で、鎌倉幕府二代執権・北条義時を中心に描く大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)。8月7日放送の第30回『全成の確率』では、源頼朝(大泉洋)の弟で、義時の義理の弟・阿野全成(新納慎也)が、北条時政(坂東彌十郎)と比企能員(佐藤二朗)の勢力争いに巻き込まれ、犠牲になる様が描かれた(以下、ネタバレあり)。
■ 実衣のため…最後まで愛を貫いた阿野全成
二代目鎌倉殿の源頼家(金子大地)が病に倒れたちょうどその頃、平知康(矢柴俊博)が御所の軒下から偶然、呪詛の人形を見つけてしまう。全成を疑った能員は、館に踏み込んで呪詛の道具一式を発見し、そのまま監禁。一方、全成の妻で義時の妹・実衣(宮澤エマ)に詰め寄られた時政は、呪詛を依頼したことを白状する。義時は実衣も捕まることを危ぶみ、姉・政子(小池栄子)にかくまってもらう。
義時は畠山重忠(中川大志)などの手を借り、全成の助命嘆願書を鎌倉殿に提出。それにより死罪はまぬがれ、八田知家(市原隼人)の所領・常陸国に流罪となる。一方、病から回復した頼家は、有力御家人たちの土地を召し上げ、再分配をすることを検討していた。頼家の乳父(めのと)の立場を利用して、うまく丸め込むつもりの能員だったが、逆に頼家から忠義の証として、所領を差し出すよう命じられる。
頼家を廃し、孫の一幡を鎌倉殿に据えることもくろんだ能員は、全成の元を訪れて鎌倉殿の呪詛を依頼。能員の「実衣殿も疑われている」との嘘を信じて、全成は呪詛をおこなうことにするが、そのことを知家に知られてしまい、頼家は全成の処刑を決断。
知家の家来に斬首されそうになった全成だが、必死に念仏を唱えると落雷や暴風雨が起こって現場が混乱し、結局知家みずから全成を討ち取った。その様子を義時から聞いた実衣は「あの人はそういうお方なんです•••やってくれましたねえ」と、涙を流しながらほほえんだ。
政子に「こんなことがいつまで続くのです。なんとかなさい!」と叱咤された義時は、能員が全成を焚き付けたと推測。善児(梶原善)をともなって詰問すると、能員はその本音を暴露し、義時に味方につくよううながす。
しかし義時は「このようなことを二度と起こさぬために何をなすべきか•••鎌倉殿のもとで悪い根を断ち切る」と突っぱねたうえで、この場に頼家を呼び出していたことを能員に明かした。しかしそこに頼家はおらず、代わりに弟・時房(瀬戸康史)から、頼家が再び倒れたことを告げられる──。
■ 新納慎也が作り上げた「癒やし系」全成の退場に惜しむ声
人形が発見された前回のラストで、すでに死亡フラグが立っていた阿野全成。「占いや呪詛は半分しか当たらない」と自分で言ってしまうほど抜けている、実に憎めないキャラのショッキングな最期に、SNSでは「あいつは、他人の心を和ませてくれた。最高のお坊さんだった」「コミカルなキャラ造型からは想像も出来なかった壮絶な最期」「お笑い枠で癒やしだったのに、殺伐とした鎌倉でこれからどこに癒やしを求めればいいの」と、退場を惜しむ声があふれた。
阿野全成は「悪禅師」という別名があり、猛々しいイメージが強い人物だった。しかしこのドラマでは、ルックスも物腰も柔らかく、関西人ならではのお笑いセンスも持ち合わせた新納のキャラを生かし、心優しくコミカルな言動で周囲をなごませる全成像を確立。
新納自身「撮影にいくたびに現場が『なんだ全成のシーンか』みたいな(笑)、ちょっと柔らかな空気感になるんですよね」(公式サイトインタビューより)と、物語上だけでなく、撮影現場でも「癒やし系」となっていたことを明かしている。
しかしそんな全成の最後は、嵐のなかで妻のことを想いながら斬首されるという壮絶なもの。新納も「これまで全成さんが愉快な姿を見せてきたのは、この最期のための壮大な前フリだったんじゃないか」(公式サイトインタビューより)と言うほど、おそらく本作トップクラスになるであろう、劇的な死に様だ。
しかしただ映えるだけではなく、初登場時は「風を起こす」と言いながら何も起こせず、実衣にダメ人間扱いされた全成が、最後の最後で実衣のことを想って暴風雨を呼び寄せる•••という、全成と実衣の出会いと別れの長い長いロングパスともなっていた。
SNSでもそれに気づいた視聴者は多く、「この祈祷は全成の愛の告白なのか•••遠く鎌倉の実衣ちゃんへの精一杯の。それに天が応えた」「全成殿が九字を切って風を起こそうとしたあの懐かしの微笑ましいシーンを、こんな史上最も酷な形で回収しないでください」などの悲痛な言葉が並んだ。
■ 『おちょやん』に続き…実衣役・宮澤エマ、泣きの演技に絶賛相次ぐ
しかし全成のキャラがここまで立ったのは、実衣の存在あってこそ。実衣は全成の頼りない言動にクールなツッコミを入れ、逆に実衣が暴走しそうになったら、全成がやさしく制止をする。三谷幸喜のミュージカル『日本の歴史』でガッツリ共演済みの2人ならではの息の合った夫婦ぶりに、SNSでは毎回「今回もこの2人に癒やされた」「このまま面白い夫婦でいて」の声があふれる、本作屈指の理想の夫婦となっていた。
しかし実衣自体は、登場時は自然体の少女だったが、成長するに連れて大人の事情に巻き込まれ、ダークサイドに飲み込まれそうになる•••という、実はかなり複雑な人物造形。とはいえ2020年後期のNHK朝ドラ『おちょやん』でも、主人公の最大の敵役から最高の支援者になるという、非常に振り幅の大きな義母・栗子役で絶賛された宮澤。
今回も全成との再会シーンで、脚本にはなかったハグを提案するなど、役の振り幅に振り落とされることなく、むしろ彼女だからこそ乗りこなしたと言えるだろう。
特に、全成の最期を聞いて涙を流すシーンでは「エマさんの泣きの芝居が自然過ぎて痛々し過ぎて、胸が痛くて仕方ない」「ワンカットで撮られたカットに宮澤エマちゃんの凄さを感じた」と、その演技を称える声が続出。
さらに「全成と実衣がどうしてこんな目に、権力闘争からあんなに遠かった2人だったのに。あんなに幸せそうだったのに•••」「ずっとおもしろおかしく平和に過ごしててほしかった」「全成は実衣ちゃんがいればそれだけで幸せで、生きていくことが出来たというだけでも、源氏兄弟で1番の果報者だったんだね」と、この夫婦が見られなくなることへの惜別の声も止まることがなかった。
◇
『鎌倉殿の13人』の放送はNHK総合で毎週日曜夜8時から、BSプレミアム・BS4Kでは夜6時からスタート。第31回『諦めの悪い男』では、今回全成を死に追いやった比企能員が、ポスト頼家をめぐって暗躍し、それに義時たちが対抗していく「比企能員の乱」が描かれる。
文/吉永美和子
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