朝ドラの仁村紗和と毎田暖乃が親子役、「マスク演技難しい」
コロナ禍に翻弄され、さまざまな問題を抱える人々をリアルに描写するよるドラ『あなたのブツが、ここに』(NHK)が、8月22日からスタート。主演の仁村紗和とその娘役を演じる毎田暖乃に話を訊いた。
取材・文/岩本
物語は2020年の兵庫県・尼崎市から始まる。主人公・山崎亜子は、ひとり娘・咲妃と生活するシングルマザーのキャバクラ嬢だが、コロナ禍での度重なる緊急事態宣言で売り上げも激減し生活苦に陥ったことから、宅配ドライバーへと転身する。
仕事を通じて成長する亜子の姿はもちろん、コロナ禍の人々をリアルに描写する本作。亜子を演じるのは、大河ドラマ『青天を衝け』などに出演する女優の仁村紗和、咲妃役は連続テレビ小説『おちょやん』でヒロインの幼少時代を演じて話題となった毎田暖乃だ。
『おちょやん』以来久々の共演、またお互い大阪出身ということもあり意気投合。息の合った2人が、仲の良い親子役に挑む。
「尼崎ってどんな街やろ」(仁村紗和)
──ドラマの主な舞台は尼崎です。
仁村:私は昔からダウンタウンさんがすごく大好きで。学生のときに「ダウンタウンさんが育った尼崎ってどんな街やろ」って、ひとりで行ったこともありました。尼崎は降りる駅によって雰囲気が違っていて、そのときは住宅地の方の駅に降りたので、「こんな閑静なところなんや・・・」って思っていましたね。
──尼崎という街にどんなイメージを抱いていましたか。
仁村:尼崎は情に溢れているというイメージがあって、人との距離感もすごく近くて。撮影でも「今日も頑張りや!」とサーターアンダギーを大量に差し入れしてくださったり、すごく助けてもらいました。
毎田:私はそもそもあんまり尼崎のことを知らなくて・・・。でもロケで行ったときに、撮影現場の商店街の人たちが果物を差し入れてくださったりして、すごく良い人たちが多くて、良いところだなと思いました。
──お2人が演じられるのは、そんな尼崎で生活する親子ですね。
仁村:主人公の亜子は、尼崎生まれ尼崎育ち。コロナ禍で亜子も人生のどん底に落ちてしまうのですが、仕事や家族、自分自身にしっかり向きあい、いろんな人との出会いで変わっていきます。
毎田:咲妃はすごく明るく元気な子ですが、お父さんがいなくて・・・。そこは私とは大きく違うところで、役を演じるにあたって、お父さんがいない子の気持ちをすごく考えました。
「暖乃ちゃんはコミュ力お化け」(仁村紗和)
──仁村さんと毎田さんはクランクインの前に「万博公園」に2人でお出かけしたと伺いました。親子の絆を深めるような意味合いがあったのですか?
仁村:久しぶりに暖乃ちゃんと会って。それまでは私にとって『おちょやん』の千代だったんですけど、「まずママよね」と、呼び合う名前を変えたりしたよね? そこでだいぶん、2人の関係性が変わっていきましたね。
毎田:私もママ(仁村)と一緒で、呼び方から変えて、お互いがこういう人物っていう形から作っていきました。
──実際に撮影が始まってからは、どうでしたか?
仁村:『おちょやん』のときから、暖乃ちゃんは私の面倒を見てくれるコミュ力お化けで(笑)。このドラマの撮影でも「ママ、これしときや」とか「これ持っていった方がいいんちゃう?」とか、私のお世話をしてくれてたくさん支えられました。亜子と咲妃は仲の良い親子なので、そういう部分を見てもらえるのではないかなと思います。
毎田:「お世話してもらった」って言ってもらいましたが、私もママに助けてもらったり、アドバイスしてもらったので、全然・・・。
仁村:暖乃ちゃんはお芝居のアイデアもぽこぽこ出てくるんですよ。(一家団欒で食事をするシーンでは)「お味噌汁を飲んでから、魚を食べたい」とか、そういうところが暖乃ちゃんならではという感じだなと、楽しく演じましたね。
関西の撮影現場「みなさんおもしろい」(毎田暖乃)
──関西人ならではの会話の掛け合いも注目だそうですね。
仁村:2人のテンポもかなり良かったです。題材がコロナ禍ということもあったので、楽しいシーンでは楽しくしたいね、とか、ここはテンション高めに明るくしたい、とか結構話し合ったのですが、関西人独特の言い回しとか、間(ま)はすごく難しいなと思いました。『おちょやん』でもそうだったけど、難しいですね、笑いって。
──撮影中の楽しかったエピソードを教えていただけますか?
仁村:ドラマに出てくるキャストのみなさんは関西人が多くて、休憩中の会話もすごく楽しくて、撮影はずっと楽しかったです。
毎田:スタッフのみなさんがおもしろいので、常に楽しかったんですけど、キムラ緑子さんとか共演者さんといっぱいしゃべったのが楽しかったです。
仁村:あとは、「何もないところで親子3代が続けて転んだらおもろいんちゃう?」とか提案したり。
毎田:実際にそれをやって。
仁村:最初に咲妃が足をすべらせて、次に私、最後にばあば役のキムラ緑子さんがすべるみたいな。そういう細かいことは自分たちでも提案しました。暖乃ちゃんの「お味噌汁から食べる」というアイデアも、みんな家族なんやなとわかるようにということで出してくれました。お味噌汁を飲むシーンは1週目で出てくると思います。使われていて、「やったー!」って(笑)。
毎田:お味噌汁とすべるところは、2週目もあるかも・・・。
仁村:そうやってみんなでアイディアを出し合っているときが一番面白かったですね。風通しが良い現場でした。
──逆に、難しかったところはありますか。
仁村:宅配ドライバーとして荷物を運ぶのに、2Lのペットボトルが9本入った荷物を団地の5階まで持って上がって。けど、不在やからそのまま持ち帰るというシーンを撮ったりして。あれはほんまに大変でした。ほかにも100m以上あるような、もう信じられへんぐらい長い廊下も走ったり。筋肉痛にもなりましたし、体力も使いました。でも、それだけにすごく忙しく動いてる感じになっていると思います。
「マスクを着けてのお芝居は難しかった」(毎田暖乃)
──2020年のコロナ禍が舞台のドラマですが、その状況を、どういうふうに演じましたか。
仁村:「2020年はこんな感じだったよね」と、監督とお話して。実際、緊急事態宣言の自粛期間中は、私は新しい自分を見つける時間や、亜子ちゃんと同じように、自分の仕事に対して考える時間にもなりました。そういうことを思い出していましたね。
毎田:コロナ禍の時期のドラマということで、マスクを着けたまま撮影するのが初めてで、すごく不思議な感じでした。ただ、声も通りにくいし、顔の半分以上がマスクで覆われているから表情が見せられないので、マスクを着けてのお芝居は難しかったです。
仁村:しゃべるとマスクがずれて、鼻マスクになっちゃったり、マスクを口ではさんでいる状態になっちゃったりとか。会話のシーンもマスクを直しているのですが、それは自然にやっていたので、すごくリアルに映ってると思います。実際、マスクをして生活していると、気づいたら鼻マスクになっていることってあるじゃないですか。そういう「あるある」も共感していただけると思います。
──マスクをしているなかでの感情表現は、どのようにされていたんですか?
仁村:とにかく目で笑います(笑)。あとは、気合いを入れるときはマスクを直すというお芝居を教えてもらって。確かに気合いを入れている感じがするので、そういう発見もありました。
毎田:私も目を変えます(笑)。めっちゃ笑っているときは、大きい口を開けたらちょっとマスクずれるじゃないですか。その動きをわざと作るとか。落ち込んでるときは「・・・」みたいな感じで、ボーっとしたり。自分なりの表現でやりました。
「タイトルバックだけでも元気が出る」(毎田暖乃)
──1話目で、仁村さんはキャバクラ嬢のコスチュームで登場されると思いますが、衣装でテンションが変わることもありましたか?
仁村:ありましたね。すごく短いスカートだし、普段あんまり履かないヒールを履かせてもらったり、髪の毛も巻いて、久しぶりにつけまつ毛をしたり。何かスイッチが入る感じはありましたね
毎田:「よし! いま私はキャバ嬢!」って?
仁村:そう、「今、私はアリサ(役柄の源氏名)!」みたいなスイッチはありましたね。
毎田 私はキャバクラのシーンは見ていなかったのですが、ダンスのときにママのキャバ嬢姿を見ました。
仁村:タイトルバックで踊ってるんですよね。
毎田:最高なんです! タイトルバックだけでも元気が出る。みんな必死で踊って、運送会社の人たちもハァハァなってて。
仁村:いろんなバージョンで撮ったので、そこも要チェックです!
**********
劇中では、コロナ関連のニュースやおうち時間の増加による宅配需要の急増、東京オリンピックの開催など、実際に起きた出来事も織り交ぜているだけに、フィクションとは思えぬリアリティもある一方、関西人ならではの明るく軽快なやり取りでテンポよく活写。仁村と毎田が、「友だち親子」のような掛け合いで物語を動かしていく。
8月22日から毎週月〜木曜の夜10時45分からの放送で、各話15分・全6週。ほかに、佐野晶哉(Aぇ! group/関西ジャニーズ Jr.)、岡部たかし、津田健次郎、ゆうちゃみ、キムラ緑子らが出演する。
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