高岸演じる仁田殿、まさかの最期にSNS悲しみの声【鎌倉殿】

2022.8.22 20:15

鎌倉御所・廊下にて。ひとり思い悩む仁田忠常(高岸宏行)(C)NHK

(写真11枚)

三谷幸喜脚本・小栗旬主演で、鎌倉幕府二代執権・北条義時を中心に描く大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)。8月21日放送の第32回『災いの種』では、瀕死だった二代目鎌倉殿・源頼家が復活するという予想外の事態により、連鎖的に悲劇が巻き起こっていくという、取り分けハードモードな回となった(以下、ネタバレあり)。

■ 頼家の絶望、義時と比奈の結末、人の心が宿った善児

昏睡状態から息を吹き返した頼家(金子大地)は、妻のせつ(山谷花純)や長男の一幡(相澤壮太)が訪れないことに不信感を抱くが、ついに母の政子(小池栄子)から、せつの実家である比企一族が全滅したことを聞かされる。

それが北条家の仕業と直感的に悟った頼家は、和田義盛(横田栄司)と、よりによって比企能員(佐藤二朗)を誅殺した仁田忠常(高岸宏行)に、北条の追討を命じる。

その頃義時は、息子の泰時(坂口健太郎)から、一幡を命令通り殺すことができず、ひそかにかくまっていることを告白される。さらに、比企家出身でありながら、一族の滅亡に手を貸す形となった義時の妻・比奈(堀田真由)は、起請文があるために義時から離縁ができないことを受け、みずから離縁を願い出た。比奈は義時と別れた後に鎌倉を離れ、4年後に京都で亡くなる・・・ということが、ナレーションで明かされる。

義時の館にて。義時(小栗旬)にある決意を伝えた比奈(堀田真由)(C)NHK

暗殺を請け負う下人・善児(梶原善)の元に、一幡がいることを知った義時は、善児に殺害を命じるが「(一幡は)わしを好いてくれている」と拒否。最終的には刀を向けようとしたが、無邪気な笑顔に足が止まり、それを察した善児の弟子・トウ(山本千尋)は「水遊びいたしましょう」と、かつて善児が千鶴丸を暗殺したときと同じ手口で、一幡を誘い出す。

そして頼家の命令に心を乱した忠常が、御所で自害したとの報が入る。これ以上の混乱を避けるため、義時は頼家を伊豆の修善寺に幽閉することを決断。頼家は、弟の実朝(嶺岸煌桜)が三代目鎌倉殿に就任した日に、強い不満を抱いたまま伊豆へ発つ。

頼家の次男・善哉(長尾翼)のもとには、比企尼(草笛光子)が現れ、「あなたこそが次の鎌倉殿になるべきお方。北条を許してはなりませぬ」という、呪詛のような言葉を残して消えた──。

■ 地獄のフルコース・・・全成役の新納慎也も視聴者として驚き

前回の予告で、義時の「頼家様が息を吹き返される前に戻す」の言葉に、地獄の予感しかしなかった32回。妻の一族が母の実家に皆殺しにされた頼家の絶望、愛があるのに離別の道を選ぶ義時と比奈、終焉の地となる運命の修善寺に向かう頼家・・・と、まさに地獄のフルコース。本作の救いとなっていたコメディパートもほぼ皆無で、とにかく視聴者のメンタルにダメージを与え続ける回となった。

この状況にSNSも「『史上最悪の鬱回』のハードルを毎度余裕で超えて、地獄の更新をし続ける大河」「希望の絶頂から絶望へ突き落とし、地獄のその先を容赦無く描く。三谷幸喜殿、人の心が無いのか? いや史実の流れなのだから史実が悪いのか?」などの嘆き節が。

阿野全成退場後は一視聴者となった俳優・新納慎也まで、自身のツイッターにて放送直後、「R15とかにした方が良いくらい、人間の黒さや惨さを浮き彫りにしたドラマだ」と、その容赦のなさに改めて驚いていた。

■ 随一の癒やし系・仁田忠常のまさかの最期に悲しみの声

なかでも視聴者が悲しみの声を上げたのは、今となっては数少ない「癒やし枠」だった仁田忠常の自害だ。義時の忠臣として、あるときは子どもたちとほのぼのと遊び、あるときは政子らを守るために二刀流でカッコよく立ちはだかったりと、振り幅の大きな活躍ぶり。お笑いコンビ「ティモンディ」の高岸宏行自身の明るさと誠実さが生かされた、人気キャラの1人となっていた。

第30回より。実衣(宮澤エマ)を探しにきた頼家(金子大地)の配下たちを、政子(小池栄子)の命でくいとめる仁田忠常(高岸宏行)(C)NHK

その忠常の死は、史実では謀反に巻き込まれて御所で殺害されたとか、義時と戦って討たれたなど諸説あるが、今回は北条家への忠誠心と、頼家の命令の板ばさみで1人悩んだあげく自害という、あの陽気で勇敢なキャラからは想像できない死に様に。

史実を知る人たちからも「まさかの自害」「仁田殿がそろそろアレなのは知っていたけど、まさかこんな展開にするとは」「仁田殿そんな死に方なんでなのよ」と、予想外の展開に驚くコメントが多数。

さらに忠常が死の直前、義時に相談しようとしたけど断られる描写があったため、「義時が仁田忠常の様子に気づけなかった。昔なら普段なら気づけていると思うけども」「小四郎(義時)があのときちゃんと話を聞いていれば!!」「義時、ダメだよ。仁田殿は北条家に必要だからこそ、後回しにしちゃダメだったんだよ」と、義時への抗議の声も上がっていた。

■ 仁田役・ティモンディ高岸「周りを頼るのは大事なこと」

忠常が死を選ぶという展開について、演じた高岸は公式サイトのインタビューで、「信念の矛盾が生まれてしまった瞬間というか、今までの自分はなんだったんだろうと(略)思い詰めるほどパニックになったのかな」と分析し、さらに「ひとりで思いを抱えずに、周りに頼っていくのは大事だなと(略)それをまた僕が現実世界でもメッセージとして、みなさんに伝えていかなきゃなと、強く思わされるシーンでした」と、彼の死から教訓を得たことを明かしている。

https://twitter.com/nhk_kamakura13/status/1561318447992160256

その劇的な退場と、大河初出演とは思えないほど安定感のあった高岸の演技に、「ティモンディ高岸さん、この大河で初めて名前を知って、どういうキャラになるのかと思っていたけど魅力的な人物だった」「高岸さん、表情だけで心のなかに渦巻く感情の波を全て演じきったなぁ。お見事!」「中の人のイメージと、演じる役とがここまでリンクして説得力あるキャラクターはなかなか・・・涙」「俳優高岸さんの未来は明るい!」と、賛辞と退場を惜しむ声が止まらなかった。

『鎌倉殿の13人』の放送はNHK総合で毎週日曜夜8時から、BSプレミアム・BS4Kでは夜6時からスタート。第33回『修善寺』では、権力を強める北条家に逆風が吹きはじめると同時に、幽閉された頼家の哀しき運命も描かれていく。

文/吉永美和子

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