「災いの種」の正体に戦慄、善児の思わぬ変化も話題に【鎌倉殿】
三谷幸喜脚本・小栗旬主演で、鎌倉幕府二代執権・北条義時を中心に描く大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)。8月21日放送の第32回『災いの種』では、予想外の最期を遂げた仁田忠常のほか、強烈な印象を残した2人のキャラが放送後、話題となった(以下、ネタバレあり)。
■ 頼家の絶望、仁田忠常の最期…地獄のフルコース回
昏睡状態から息を吹き返した頼家(金子大地)は、妻のせつ(山谷花純)や長男の一幡(相澤壮太)が訪れないことに不信感を抱くが、ついに母の政子(小池栄子)から、せつの実家である比企一族が全滅したことを聞かされる。それが北条家の仕業と直感的に悟った頼家は、和田義盛(横田栄司)と、よりによって比企能員(佐藤二朗)を誅殺した仁田忠常(高岸宏行)に、北条の追討を命じる。
その頃義時は、息子の泰時(坂口健太郎)から、一幡を命令通り殺すことができず、ひそかにかくまっていることを告白される。暗殺を請け負う下人・善児(梶原善)の元に、一幡がいることを知った義時は、善児に殺害を命じるが「(一幡は)わしを好いてくれている」と拒否。
最終的には刀を向けようとしたが、無邪気な笑顔に足が止まり、それを察した善児の弟子・トウ(山本千尋)は「水遊びいたしましょう」と、かつて善児が千鶴丸を暗殺したときと同じ手口で、一幡を誘い出す。
そして頼家の命令に心を乱した忠常が、御所で自害したとの報が入る。これ以上の混乱を避けるため、義時は頼家を伊豆の修善寺に幽閉することを決断。頼家は、弟の実朝(嶺岸煌桜)が三代目鎌倉殿に就任した日に、強い不満を抱いたまま伊豆へ発つ。
頼家の次男・善哉(長尾翼)のもとには、比企尼(草笛光子)が現れ「あなたこそが次の鎌倉殿になるべきお方。北条を許してはなりませぬ」という、呪詛のような言葉を残して消えた──。
■ 人の心が生まれた善児、人の心を亡くした義時の対比
とにかく明るい仁田忠常の退場、義時の「頼家様が息を吹き返される前に戻す」という言葉通り、頼家に修善寺送りの死亡フラグが立つなど、地獄のような人間模様が描かれるなか、特に強烈な印象を残した二人のキャラに、視聴者の目線が集中した。
まずは鎌倉最強の暗殺者・善児だ。これまで数多の人間を無感情に手にかけてきた殺戮マシーンが、自分を好いてくれた一幡にだけは、どうしても刃を下ろせなかった・・・という流れに、SNSでも「善児に人の心が宿った」「『わしを、好いてくれている』の一言に善児の今までの人生が透けて見えて泣いてしまう」「善児が先天的なサイコパスではなく、これまでほとんど人に好かれたことがなかったこと、愛を知らないから殺人マシーンに徹していられたことが明らかになって、切ない」という、戸惑いと同情の声があふれた。
さらに、ますますブラック化する義時と善児を重ね、「人の心が生まれた善児。人の心を亡くした義時。この対比が凄い」「この物語を象徴していた善児すら、もはやこの血の狂乱についていけなくなってしまっていたのが印象的」「あの善児より小四郎のほうが恐ろしくなる日が来るなんて。善児の人間らしさに泣かされる日が来るなんて」と、遠い目となるようなコメントが多数。
また、これまで退場してきたキャラクターが「人の心を取り戻すと死が近い」という法則を思い出し、「善児が人の心を持ち始めたの、この世界では退場フラグでしかなくて泣ける」「後継者を用意し始めた辺りから退場は近いかなって思ってたけど、まさか人の心が芽生えてアサシンとして機能しなくなるからなんて思わんじゃん」「突然善児の心配をし出す視聴者」など、次回以降の悲劇を予測する人も。
実際来週の予告では、善児が義時の兄・宗時(片岡愛之助)を暗殺したあと、記念のように持ち帰った遺品が一瞬映ったことに対し、「あんなに恐ろしかった善児が急に愛しく見えてきた今週・・・兄上の巾着がバレる来週・・・ヤメロ! やめてくれ!」という悲鳴も上がっていた。三谷いわく、自分の予想を超えて大きな存在になったという善児の去り方がどのようなものになるか、怖いもの見たさで期待したい。
■「これが本当の『災いの種』だった」再登場した比企尼
そしてもう一人、鮮烈な印象を残したのが、最後の最後に現れた、源頼朝の乳母・比企尼だ。史実では没年不明なことを逆手に取り「比企能員の乱」を生き延びたのか、それとも怨霊となって現れたのかという、なんとも言えない雰囲気で再登場。将来鎌倉の命運を大きく動かす善哉(のちの公暁)の心に、「北条を許してはなりませぬ」と、深く刻まれるであろう言葉を遺すという、重要な役割を果たしていった。
この比企尼の大きな布石に、SNSでは「善哉に北条への呪いをインストールして去っていった・・・怖い」「草笛光子の呪縛というか、怨霊として百点満点な時限爆弾」「源実朝と公暁の因縁が始まってしまった」「本当にあった怖い話を大河ドラマで見てる」などの声が。
さらに「比企尼が善哉に囁いた、これが本当の『災いの種』だったのね」「ここで比企尼を出す演出、超絶技巧すぎ」「そりゃ、比企尼の没年ははっきりとわかってないけども。こんな形で使うなんて・・・」「今日ラスト1分のためにこそ、比企尼は草笛光子でなければならなかったんだな」と、今回のタイトルが含んでいた意味や安定の鬼脚本ぶり、そしてキャスティングの妙を絶賛する声が相次いだ。
◇
『鎌倉殿の13人』の放送はNHK総合で毎週日曜夜8時から、BSプレミアム・BS4Kでは夜6時からスタート。第33回『修善寺』では、権力を強める北条家に逆風が吹きはじめると同時に、幽閉された頼家の哀しき運命も描かれていく。
文/吉永美和子
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