チンピラでいたい古田新太と、正しい天海祐希の「絶妙なバディ」
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『薔薇とサムライ2-海賊女王の帰還-』に出演する古田新太と天海祐希は、互いの存在を「バディ」と意識し合う
古田新太&天海祐希がタッグを組んで、悪人たちをバッタバッタとなぎ倒す痛快さで人気を集めた、劇団☆新感線『薔薇とサムライ〜GoemonRock OverDrive』(2010年)。12年の時を経て上演される続編『薔薇とサムライ2-海賊女王の帰還-』は、熟成されたほろ苦さをちょっぴり加えつつも、前作に負けないスカッとした物語になるとのことだ。一国の女王がハマり役な天海と、粋と気概に満ちた石川五右衛門演じる古田の、ダブルインタビューが実現した。
取材・文/吉永美和子 写真/木村華子
■ 12年ぶりの帰還、当時は「みんな若かったよねえ」(天海)
──『薔薇とサムライ』からすでに12年経つとは驚きですが、当時の手応えはどんな感じでしたか?
天海「12年かあ。みんな若かったよねえ、本当に」
古田「ゆりちゃん(天海)はNODA・MAPの『パンドラの鐘』(1999年)で一緒だったけど、そのときはあまり絡みがなかったから『ガッツリ絡めるなあ』という喜びがありました。もともと天海祐希のファンだったし、ほぼほぼコンビじゃん!って」
天海「『阿修羅城の瞳(2003年)』(注:天海の新感線初出演作)は(古田が)出てなかったからねえ。『薔薇とサムライ』はすごく派手なお話で、五右衛門という親友のような相棒ができて。しかも女王として君臨させてから『僕は行きますよ』って去っていくの、なんというか、そこはかとない日本男児的な」
古田「(フーテンの)寅さんだよね」
天海「そうそうそう! 本当にそう!」
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古田「前回は、ほかの出演者もにぎやかな役が多かったから、楽しかったですね。それを思うと、今回はちょっとお話が深刻というか」
天海「うん、そうね。国同士の争いとか」
──確かに当時は「王位を取るよ!」という攻めの姿勢でしたが、今回は作り上げた体制をうまく後進に引き継ぐという守りの姿勢なので、テイストが変わりそうな予感がします。
古田「前回は『女王様、上がり!』みたいな達成感で終わっていて、今回はどっちかって言うと『よーし、まだまだ行くぜ!』という感じで終わるけど、それまでに倒さなきゃいけない敵が陰湿(笑)」
──敵役だった高田聖子さんに続き、生瀬勝久さんまで加わるから手強そうです。
古田「あと、ちょいとテーマ的にも重いかな。今の世界の情勢と重ねたら『あ、ちょっと痛いな』みたいな所もあるし。でもそこは『薔薇とサムライ』ですからね。愉快に見せられると思っています」
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■ ゆりちゃんは「『気をつけ』が似合う女優」(古田)
──天海さんは会見で、古田さんを「安心できる相手役」だと言ってましたね。
天海「いてくれるだけで安心できる、私にとっては神的な人です。なにがあってもちゃんと締めてくれるし、ちゃんと引っ張ってもらえるので、ウワァー!ってなっちゃっても大丈夫だわ、って感じがする」
──アクセルかけっぱなしにしても大丈夫だぜ、っていう。
天海「その体力が続けばですけど(笑)、そんな感じです」
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──古田さんは天海さんのファンだということですが、どこに惹かれてますか?
古田「だって目がいっちゃうでしょう? 舞台上に立っていると。『気をつけ』が似合って、しかもそれだけでお客さまの目を奪う女優なんて、そんなにいない。だからサイドでふざける分には、すごく安心です」
──お互いに「この人がいれば、存分にふざけられる」という存在なんですね。
古田「でもゆりちゃんは、そんなにふざけないよね?」
天海「そもそも私、あまりふざけた役をやらせてもらえないんですよねえ、本当に(笑)。正しくなきゃいけない、正しくある人というのが多い」
──確かにアンヌもすごく真っすぐだし、五右衛門がそれをうまく斜めにしていくという感じのコンビネーションでしたね。
古田「五右衛門は、アンヌのことを女性というより、人間として好きなんだよね。前回でそういう関係を作っちゃったから、今回もあまり色っぽいシーンはないです。女にだらしなくてめっぽう強いという役は、オイラも中島(かずき/新感線座付き作家)さんも飽きてると思う(笑)。劇団では、ずーっとそんなキャラクターばっかりやってたから」
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──そういう、男女の友情がちゃんと成立しているバディって、なかなかほかにないです。
古田「ただ、自由人と女王様という・・・台詞でもあるんだけど、王冠をかぶってる人とかぶってない人という差はある。お互いを信頼してるから、10何年ぶりに出会っても、まだバディ感が出る。そういう関係なんだろうなと思っています」
■ 古田がレンコンを1人占め…「なにやってんのー!!」(天海)
──『薔薇とサムライ』は、石川五右衛門が主人公の「五右衛門ロック」シリーズのひとつですが、このシリーズには「反骨」「反抗」みたいなことが、通底に流れていると思います。その精神は、ベテランと言われる域に入ったお二人にも、まだどこかで原動力になっていたりしますか?
古田「オイラはありますね。ずっとアバンギャルド・・・というより、チンピラでいたい」
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──記者会見でも「コンプライアンスに反対する」って、反抗心を見せていましたし。
古田「それはもう、当然。演劇にはタブーなんかないと思うし、人の生き死にと関係あること以外は、なにをやってもいいはずだから」
天海「うんうん」
古田「芝居のなかで殴ったり蹴ったりぐらいは、全然いいと思う(笑)。ゆりちゃんは、そういう反抗とか反骨とかいうのは、どうなんだろう?」
天海「うーん・・・反抗というか、自分が『正しい』と思うこと、自分の良心に沿ったことをしたいし、そっちに進みたい! って思います」
古田「間違ってる者に厳しいよね?」
天海 「(食い気味で)厳しい。レンコンを全部食べちゃったときとか(笑)」
──・・・レンコン?
天海「以前ちらし寿司の差し入れをいただいたことがあって、みんなでお皿やお箸の準備をしている間に、(古田を指さして)バッと開けてガーッと食べちゃったの」
古田「寿司の上に酢レンコンが敷いてあって、米も食わずにレンコンばっかり食った(笑)」
天海「もうほぼほぼ酢レンコンがなくなっちゃって『何やってんのー!!』」
古田「『みんなも食べたいでしょー!!』って」
天海「ビックリしちゃった。あんなに酢レンコンだけ食べる人はいない(笑)。でも古田さんは、ちゃんとそうやって『言われる』というのを想定して、やってる所もあるので」
──その「ダメなことには反抗する」という精神は、アンヌにもありますよね。
天海「もちろんあると思います。反骨心を、正しい方向に使いたいと思ってるんじゃないだろうか?『正しい』って、人の立場や見方によって違うから『絶対自分が正しい』というのを押し付けるつもりはないけど、『これはみんな迷惑よ』というのは、言わなければいけない立場の人が言わなきゃいけないと思います。だから誰かほかに言ってくれる人がいる時は『言わなくていっか』と思ったりしますよ、私だって」
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──今回も名コンビぶりに期待がかかりますね。『薔薇とサムライ』は観てスカッとする芝居だと思いますけど、その「スカッと感」を、なにかにたとえていただけませんか?
天海「なんだろう・・・神尾君(楓珠/本作の出演者の1人)が飲めない『炭酸』とか?」
古田「『富士急ハイランド』のザブーン(一同笑)」
天海「ドドンパじゃなくて?」
古田「あ、でも関西の人は富士急ハイランドって、あまり行かねえか? おすすめですよ。「✕✕(某テーマパーク)」よりよっぽど楽しい(笑)」
天海 「そうですねえ。船の航海日和の、晴天の空。ちょっと雲とか霧がかかっているような今の状況から、パーッ!と晴れた、青い青い空のような作品になれたらいいなと思います」
◇
2022年劇団☆新感線42周年興行・秋公演 SHINKANSEN☆RX 『薔薇とサムライ2-海賊女王の帰還-』は中島かずき作、いのうえひでのり演出。大阪公演は10月5日~20日に「フェスティバルホール」(大阪市北区)で上演。チケットはS席1万5800円ほかで、9月18日から発売開始。
2022年劇団☆新感線42周年興行・秋公演 SHINKANSEN☆RX 『薔薇とサムライ2-海賊女王の帰還-』
会場:フェスティバルホール(大阪府大阪市北区中之島2-3-18)
期間:10月5日(水)〜10月20日(木)
料金:S席 1万5800円、A席 1万2500円、ヤングチケット 2200円(22歳以下)
ヘア&メイク/林智子(天海)
スタイリスト/えなみ眞理子(天海)
衣裳協力(天海)/divka、Donatella Pellini、Pellini
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