「パパが真っ黒に…」修羅の道を進む時政に、SNS悲鳴【鎌倉殿】

2022.9.5 20:20

鎌倉御所・廊下にて。「武蔵をどうしようというのですか」と時政(坂東彌十郎)を問い詰める義時(小栗旬)(C)NHK

(写真11枚)

三谷幸喜脚本・小栗旬主演で、鎌倉幕府二代執権・北条義時を中心に描く大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)。9月4日放送の第34回『理想の結婚』では、三代目鎌倉殿・実朝と義時の結婚話とからんで、鎌倉に新たな火種が生まれようとしている様子が描かれた(以下、ネタバレあり)。

■ 時政とりくの子・政範が急死…嫌な予感

御家人たちに武芸を鍛えられつつ、政にも関わるようになった実朝(柿澤勇人)に、京都から御台所を迎える準備が、執権・北条時政(坂東彌十郎)の娘婿・平賀朝雅(山中崇)を中心に、着々と進んでいた。しかしその一方、時政が御家人たちから賄賂を受け取ったり、もう1人の娘婿・畠山重忠(中川大志)から先祖代々受け継いできた役職を取り上げようとしていることに、義時は不安を感じる。

そんななか、御台所を迎えに行く役割を仰せつかっていた義時の異母弟・政範(中川翼)が、京都の朝雅邸に到着。しかしその少し前に、朝雅の元を訪れた源仲章(生田斗真)は、政範に代わって朝雅が次期執権になるようそそのかしたうえで、ある物を渡したということを、後鳥羽上皇(尾上松也)に報告する。そして政範が、京都到着2日後に急死したという悲報が、鎌倉に届く。

鎌倉御所・庭にて。三代鎌倉殿となり、武家の棟梁としての素養を磨くため、和田義盛(横田栄司)から弓の指南を受ける源実朝(柿澤勇人)(C)NHK

婚礼の不安を義時にしか打ち明けられず、浮かない日々を過ごしていた実朝だが、母・政子(小池栄子)が「実朝の目に入る所に置いてほしい」と三善康信(小林隆)に託していた和歌集を発見し、夢中になってそれを読みはじめるのだった。

■ 人柄が変わってないからこそ、タチが悪い? 時政パパ

三代目鎌倉殿が、子役から柿澤勇人に急成長し(SNSでは「成長いちじるしい実朝」などとも書かれたが)、新たなターンに入った第34回。『理想の結婚』というほのぼのとしたタイトル通り、手紙で政範の死が報告された以外はおだやかな(?)回だったが、不安の種が数多く蒔かれる展開ともなった。

視聴者がもっともショックを受けたのは、もともと明るくて率直な人柄で、理想の父親・理想の上司となっていた「時政パパ」こと北条時政の変化だろう。執権となった途端、平然と賄賂を受け取り、見くだすような態度で他人の地位をおびやかす。野心家の妻・りく(宮沢りえ)が裏で糸を引いてるとはいえ、地位は上がっても、信頼は「地に落ちた」と言えるだろう。

北条義時(小栗旬)と北条時政(坂東彌十郎)(C)NHK

SNSでも「ほのぼの時政パパが真っ黒に」「時政パパが権力持ってどんどんクソ親父ムーブかましてて悲しい」「地方の頼れる親分としてやってきて、実際うまくいってたけど、今回でこの人にそれ以上の器は無い、ということが誰の目にも明らかになってしまった」「これは権力の座にいてはならない人たち」など、「時政パパ」がトレンドのトップに入るほど、失望の声が続々と上がった。

ただ一方で「時政パパが時政パパのまま、田舎の気のいい親父だからこそ、腐っていく演技が素晴らしい。権力を持つと、腐敗する」「時政みたいな政治家、フツーにリアルにいっぱい居そうな温度感なのが嫌だな~。人間的にはマジで憎めないんだが・・・てやつ」「ワシが慕われてるからみんな貢物もってくるんだな! ガハハ! くらいに思ってそう」「頼れる地元の大物政治家の枠であって国政に向いてねーんだよ」と、人柄が変わってないからこそタチが悪いという考察も。

■ 嫌いになりきれない…坂東彌十郎の人間味あふれる時政

長年活躍してきた歌舞伎の世界でも、豪快な親分肌の役が十八番となっている坂東彌十郎。そこからどうやって、史実にある「権力欲の権化」のような北条時政に変わるのか? に注目が集まっていたが、自分の立場を理解できずに物事をややこしくしたり、深く考えないがゆえに独善的になってしまうなど、「変わらない」からこそダメな方向に流された・・・という造形は、現代にも通じるリアルさだ。

SNSでも「憎めない大雑把な性格と、賄賂を貰い政治腐敗があった史実は両立するんやなあ」「パッパの権力が身内限定なら面倒見のいいお父さんになるけど、全国レベルになると賄賂を取って便宜を図る汚職政治家になるんだ」「一話からキャラの本質は基本的にはなにも変わってなくて、ただ時代や地位や立ち位置が変わることでそれが全然別の見え方になってくるのがね、ほんとーに三谷さんの描き方が上手い」と、感心の声が相次いだ。

この後は政範の死と、りくのさらなる策略のために、暴走に拍車がかかることになる時政パパ。畠山重忠との対立フラグも今回でグッサリと立ってしまい、修羅の道が着々と敷かれている所だが、彌十郎の人間味あふれる演技によって「やってることひどいけど嫌いになりきれない」という、複雑な気分を抱いたまま、この先並走することになりそうだ。

『鎌倉殿の13人』の放送はNHK総合で毎週日曜夜8時から、BSプレミアム・BS4Kでは夜6時からスタート。第35回『苦い盃』では、朝雅が重忠の嫡男・重保(杉田雷麟)への疑惑をりくに告げたことで、北条・畠山両家の関係が大きく動くさまが描かれていく。

文/吉永美和子

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