「屈指の名言」巫女・大竹しのぶの言葉に、視聴者も涙【鎌倉殿】

2022.9.13 06:45

歩き巫女役としてサプライズ登場した大竹しのぶ (C)NHK

(写真11枚)

三谷幸喜脚本・小栗旬主演で、鎌倉幕府二代執権・北条義時を中心に描く大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)。9月4日放送の第35回『苦い盃』では、義時の父・時政(坂東彌十郎)と畠山重忠(中川大志)の対立と並行して、三代目鎌倉殿・実朝の苦悩するさまも描かれ、大物のサプライズ登場にSNSが大いに湧いた(以下、ネタバレあり)。

■ 不安を抱える実朝は、義盛と巴の館へ向かう

後鳥羽上皇(尾上松也)の従姉妹・千世(加藤小夏)と結婚した実朝だが、表情は浮かないまま。実朝は気晴らしのため、義時の息子・泰時(坂口健太郎)をお供に、楽しく過ごした記憶のある和田義盛(横田栄司)と巴御前(秋元才加)の館を再訪する。

義盛が「面白いところにお連れしましょう」と、実朝と泰時を案内した先には、老いた歩き巫女(大竹しのぶ)がいた。巫女は実朝に向かって「雪の日は出歩くな」と忠告し、さらに実朝は巫女に、今回の結婚を含めて、すべてが自分の関わりないところで決まっていくことに対する不満をぶつける。

和田義盛の館にて。「ここに来ると、不思議と心が落ち着く」と話す源実朝(柿澤勇人)ともてなす義盛(横田栄司)、巴(秋元才加)(C)NHK

すると歩き巫女は、「お前の悩みは、どんなものであっても、それはお前ひとりの悩みではない。はるか昔から、同じことで悩んできた者がいることを忘れるな。この先も、お前と同じことで悩む者がいることを忘れるな。お前ひとりではないんだ、決して」と告げる。その慈しみの言葉に、実朝は目に涙を浮かべるのだった。

その頃御所は、実朝が行方知れずということで大騒ぎになっていた。畠山討伐の下文に鎌倉殿の花押をもらうため、実朝を訪ねていた時政は、その思惑を察した政子(小池栄子)や実衣(宮澤エマ)らに一度は追い返されていた。しかしひそかに御所に残っていた時政は、義盛の元から戻ったばかりの実朝が、現状を把握できていない間に、まんまと花押を記させようとするのだった──。

■ 「マジでわからんかった」突然の登場に驚きの声

主役級の俳優が新しくドラマに出演する場合、登場予告があるのが普通だ。しかしこの第35回では、突然オープニングで「歩き巫女 大竹しのぶ」とクレジットされ、一足早いBSの放送を観た視聴者たちが「え??? 大竹しのぶ?」「歩き巫女ってなんですか?」などの声を上げ、本放送開始前に「大竹しのぶ」がツイッターのトレンドに上がるぐらいの大反響となった。

源実朝(柿澤勇人)に忠告する歩き巫女(大竹しのぶ)(C)NHK

歩き巫女とは、特定の神社に所属せずに放浪しながら祈祷や卜占などをおこなう巫女の総称。しかもこの巫女は、いろんな意味で実朝の運命を決定づけるという、大きな役目を背負っていた。さまざまなドラマや舞台で、神がかり的な演技を数多く残している大竹は、まさに適任だっただろう。

大竹が「100歳ぐらいの方がやれれば1番いいような役」(公式サイトインタビューより)と言うだけあり、特殊メイクの力もあれど、大竹と言われなければわからないほど異質な雰囲気。SNSでも「え、占いのおばあさん大竹しのぶさん!? マジでわからんかった」「なんだかんだと大竹しのぶの演技は凄いんだよね・・・別人やん」「大竹しのぶですよと何回説明されてもわからない」と驚きの声が続々と上がった。

■ 巫女の言葉は、三谷幸喜からのメッセージでもあった

また巫女が実朝に伝えるメッセージは、実は三谷幸喜のオリジナルミュージカル『日本の歴史』の劇中歌の歌詞にも使われた言葉ということが、この舞台に出演した新納慎也(鎌倉殿では全成役)が自身のツイッターで種明かし。殺伐としたこのドラマには珍しく、観た人を元気づけるエールのような台詞となっていた。

SNSでも「作中屈指の名言では」「三谷さん、いろんな作品で、あなたが悩んでいることは、いつか誰かが悩んだ悩みだって、あなたひとりの悩みではないんだって、発信してくれるなあ」「どんなに孤独な人の悩み苦しみでも、残された先人の叡智が寄り添ってくれるという感動と感謝が、実朝様に和歌への情熱を与え、書物としての金槐和歌集を残させたと思うと胸熱」と、その感動を伝える言葉が相次いでいた。

■ 「双六が苦手」な泰時に、鎌倉殿マニアがざわつく

さてもう1人、歩き巫女の予言を受けていたのが「双六、苦手だろ」と言われた泰時だ。この言葉を聞いた瞬間、よく鍛えられた鎌倉殿マニアたちからは「ああ! 武衛!」「全武衛が思い出したよ・・・上総介殿」「上総介を思い出して全武衛が泣いてる」など、第15回で悲劇的な最期を遂げた上総広常(佐藤浩市)を思い出す声が、少なからず上がった。

「上総介」こと上総広常は、御家人たちの見せしめとして源頼朝(大泉洋)に誅殺されたが、その際双六で梶原景時(中村獅童)に負けたことが、暗殺決行の合図となっていた。

また上総介は、頼朝の肩書である「武衛」を「友だち」という意味だと思い込み、何かと頼朝や周りの人たちを「武衛」と呼んでいた。そのため、上総介逝去直後に泰時が生まれ「ぶえい(武衛)」と泣いたことで「上総介の生まれ変わりでは?」という説が、放送直後にささやかれていたのだ。

第15回より。上総広常(佐藤浩市) (C)NHK

そんな背景があるため、泰時が「双六をすると、なぜか具合が悪くなる」という告白をすると、マニアからは「泰時、武衛生まれ変わり説だから双六が駄目なのか」「上総介が梶原景時と双六に興じているとき、誅殺をされたその前世が・・・イヤ、まじ怖すぎですって」「この双六のくだりは、やはり泰時が上総介広常の生まれ変わりという伏線回収では」と、自分たちの憶測が合っていたのでは? とざわめく声で溢れかえっていた。

ちなみに実朝がもうひとつ予言された「雪の日は出歩くな」は、史実を知る人たちからは、「はい、今歴クラの心が死んだーー!!」「雪の日鬼門ですうううう」「的中率100%の占いはやめてください視聴者が死んでしまいます」という悲痛な声が続々と。10数年後に起こる悲劇をピタリと言い当てるとは、やはりこの歩き巫女、只者ではなかったのでは?

『鎌倉殿の13人』の放送はNHK総合で毎週日曜夜8時から、BSプレミアム・BS4Kでは夜6時からスタート。第36回『武士の鑑』では、実朝からの下文を得た時政が御家人たちを招集する一方で、板ばさみとなった義時の苦闘も描かれる。

文/吉永美和子

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