あの「四畳半神話大系」が悪魔的融合、夏目真悟監督に訊く
「もうアジカンさんは絶対だなと」(夏目監督)
──前作との繋がりで言うと、やっぱり最後はASIAN KUNG-FU GENERATIONという。
そうです。もうアジカンさんは絶対だなと思って。黒バックでアジカンさんの曲を聴いてくれって言う感じで締めさせてもらいました。本当は画もつけようかって話もあったんですけど、本編を作っている途中に曲が上がってきて。そこに嵌めたら、その瞬間に締まるっていうか、この曲はこうあるべきだと示してくれた。さすがだなぁって。
──しかも映画のための当て書きですもんね。タイトルもずばり『出町柳パラレルユニバース』。
そうなんですよ。びっくりしました。でも、うれしかったですね。
──まさに京都のための歌みたいな。
あの曲は京都の学生に向けて作ってる感じなので、そういうことだと思います。あそこは目を瞑って曲を聴いてもらって、余韻を味わって帰ってもらうという。
──スタッフですが、前作とかなり同じお名前も見受けられます。当然、スタッフも同じ時間を経てるわけじゃないですか。
そうですね。前作から引き続きの人も多いですが、忙しくて参加できなかった人もいて。「サイエンスSARU」は比較的若いスタジオで、若手で埋めてもらったんですけど、それもすごく良かったなと。ベテランと若手の融合じゃないけど、すごく上手く回りました。『四畳半神話大系』を見て業界に入ってきたとか、学生の頃見てて好きでしたとか言う人が多くて。あと、なんといっても「サイエンスSARU」は湯浅さんが作った会社なので、こういう映像表現が得意な人が多いですね。
──そんな若手がこの作品に参加できるのは感慨深いでしょうね。
「え、本当にやれるんですか?」と喜んで仕事してくれて。それに今回の副監督の山代風我くんは、直接湯浅さんに付いてた方なんで、すごく『四畳半〜』の世界を掴むのが早くて、柔軟に対応してやってくれて。ベテランもベテランで、安定感がすごかったです。
ディズニープラスでは配信限定エピソードがあって、それは『四畳半神話大系』を演出されてた横山彰利さんが、「『四畳半』ってこういうことだよね」って正解を描いてくださって。キャラクターデザインの伊東伸高さんと西垣庄子さんも、2人ともテレビシリーズのときから関わっていたんですけど、再現度も高いけど、ちょっと今風にアレンジもされてて、いいバランスでしたね。
──決してネガティブな意味ではなくて、『四畳半神話大系』と隔絶されたところがまったくないというか、やはり見た目も画面のパーステクティブの極端さというのも、これはやはり湯浅さんのタッチだなぁと。そこから変に外れたところがないところが、ファンとしてはうれしいなと正直言って思いました。
そこは今回の企画のキモというか。やっぱりテレビシリーズの絵柄とかはブレずに踏襲しつつ、だけど少し中身は違うという、そこは対称的に伝えたいと思ったんで。かなり意図的に湯浅さんっぽい『四畳半神話大系』を作りたいと思ってやっていましたね。
──そこでもまた、前シリーズとの円環というか、繋がりのようなものが出てくるわけですね。いくつかのセリフも含め。
そうそう。コネクトする作品世界になってますね。そういうのが要所要所で結構あって、それはすごく気持ちいい繰り返しだと自分は思うんで、それが具体的にできたらと。
──『四畳半神話大系』で描かれた並行世界としての時空体系のひとつなんじゃないか、みたいな。今回の物語もパラレルワールドのひとつに過ぎないんじゃないか、という感じがしちゃうわけですよね。
そうなんです。きっとどこかに入ってる。
──そもそも前作も本作も、これってホントにパラドックス生じてないの? ってツッコミたくなるところがあるじゃないですか。ハードSFみたいな理詰めじゃないから。50年代の懐かしのSFみたいな感じさえある。
確かにそうですね。どこかしら柔軟な部分があって。
──ある種のおおらかさというか、ご都合主義というか。キャラクターがキャラクターなんで、良い感じなんですよね。
そういう塩梅がすごく『四畳半』の魅力なんだと思います(笑)。
◆
映画『四畳半タイムマシンブルース』
灼熱の京都・左京区。悪友・小津がリモコンを水没させ、下鴨幽水荘で唯一のクーラーが動かなくなった。「私」が後輩・明石さんと対策を協議していると、モッサリした見知らぬ男子学生・田村くんが現れた。なんと彼は、25年後の未来からタイムマシンでやってきたという。このタイムマシンで昨日に戻って、壊れる前のリモコンを持ってこようとするが、小津たちは勝手気ままに過去を書き換えていく。世界消滅の危機を予感した「私」だが、果たしてリモコンと日常を取り戻せるのか(3週間限定の劇場公開、およびディズニープラスにて配信中)。
『四畳半タイムマシンブルース』
2022年9月30日公開(3週間限定全国ロードショー)
原作:森見登美彦・著、上田誠・原案『四畳半タイムマシンブルース』(角川文庫/KADOKAWA)
脚本:上田誠(ヨーロッパ企画)
キャラクター原案:中村佑介
監督:夏目真悟
出演:浅沼晋太郎、坂本真綾、吉野裕行、ほか
アニメーション制作:サイエンスSARU
配給:配給:KADOKAWA/アスミック・エース
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