「サブタイトル詐欺」穏やかさゼロの1日にSNS騒然【鎌倉殿】

2022.10.17 20:30

鎌倉御所・実朝の居室にて。あることについて険しい顔で言い合う源実朝(柿澤勇人)と北条義時(小栗旬)(C)NHK

(写真5枚)

三谷幸喜脚本・小栗旬主演で、鎌倉幕府二代執権・北条義時を中心に描く大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)。10月16日放送の第39回「穏やかな一日」では、承元2年(1208年)から建暦元年(1211年)の間に起こったさまざまな出来事が、たった1日の風景という形で、凝縮して描かれた(以下、ネタバレあり)。

■ 義時の傲慢なやり方に、不満を募らせていく御家人たち

天然痘から奇跡的に復帰し、この日の朝から政務に戻った三代目鎌倉殿・実朝(柿澤勇人)。しかし実質的に政をつかさどる義時は、現状を安定させるため北条家に権力を集中させ、ほかの御家人たちの力を削ぐような政策を次々に打ち出す。また乳母・実衣(宮澤エマ)は、いつまでも実朝に子どもができないことを危ぶみ、側室を迎えることを考えはじめる。

昼頃、御所を訪れた和田義盛(横田栄司)に上総介推挙をお願いされた実朝は、母・政子(小池栄子)に相談するが、「政とは、身内だからとか仲がいいとか、そんなこととは無縁なもっと厳かなものだと思う」と諭される。そして義時も義盛に、上総介の件は忘れることと、個人的に鎌倉殿に頼みごとをしに行くのは、これを最後にするよう命じた。

義時(小栗旬)から諱(いみな)を与えられた、鶴丸あらため平盛綱(きづき)(C)NHK

そのあとおこなわれた弓の試合で、泰時(坂口健太郎)の従者・鶴丸あらため平盛綱(きづき)が活躍し、義時は実朝に彼を御家人に引き立てるよう進言。実朝は義盛の件を盾に一度は拒否するが、義時は「どうやら私はもう要らぬようですね。あとは鎌倉殿のお好きなように進められるがよい」と、投げ出すようなことを言い出し、その圧に負けた実朝は、結局その件を承諾する。

この日の晩、義盛の館を訪れた三浦義村(山本耕史)は、義盛から義時への不満をぶつけられ、「俺たち古株の御家人をないがしろにしたら、痛い目に遭うってことを思い知らせてやろうぜ」と相談。

そして夜が明けると、二代目鎌倉殿・頼家(金子大地)の忘れ形見・善哉が、出家して公暁(寛一郎)と名前を変え、修行のために京へと出立した。しかしその直後に、公暁が戻ってきたときに鎌倉最大の悲劇が幕を開けることと、それは6年後になるということが、ナレーション(長澤まさみ)から語られる──。

■「穏やかとは…?」悲劇フラグ続出の45分

サブタイトル「穏やかな日々」と聞いても「絶対穏やかなわけがない」と、視聴者の誰もが身構えていた第39回。めずらしく戦どころか、1人の死者も出なかったという意味では「穏やか」だったと言えるが、暗黒化ノンストップの義時、公私ともに辛いことしかない実朝、義時への不満が爆発寸前の和田義盛、そして運命の子・公暁の登場・・・と、今後の悲劇へのフラグを、これでもかという勢いで立てていく回となった。

SNSでも「今日は誰も死ななかったし謀反もなかったのに辛かったので、ずっと穏やかの意味を考えている」「不穏のばら撒きですぐそこに地獄が口を開けて待ってるじゃないか」「三谷さん血が流れたり人が死ななかったら穏やかとか思ってそう」「まごう事なき、サブタイトル詐欺!」など、「穏やか」の意味を問い直すようなつぶやきが流れた。

鎌倉御所にて。三浦義村(左、山本耕史)に「鎌倉を変える」と宣言する北条義時(小栗旬)(C)NHK

■ 「スーパードス黒・義時」に震え上がるSNS

そのなかでもトップクラスで穏やかでなかったのが、実質的な鎌倉の最高権力者となった、主人公の義時だろう。「坂東武者のいただきに、北条が立つ」という兄・宗時(片岡愛之助)の遺言の実現と、争いの種を早急に撲滅しようとするあまり、着々と独裁体制を整えていく。その強引なやり方には、これまで義時を陰日向にサポートしてきた三浦義村すら、扇を床に叩きつけたほど。

なかでも実朝をなかば脅迫して、平盛綱を御家人に据えたうえに「私のやることに口を挟まれぬこと」とダメ押しする展開には、「ここでもう手伝わないよって梯子を外そうとするのずるいわ」「小四郎(義時)のやり方、初代執権時政のおとっつぁんよりも遥かにタチが悪くて震え上がってる」「小四郎が居なくなった・・・俺たちが観てきたあの小四郎が・・・」「黒義時どころかスーパードス黒義時じゃないか」と、視聴者からはため息のような言葉が寄せられた。

■ 鶴丸が「平盛綱」に! 歴史マニアも興奮

とはいえ、今回義時のファインプレーだったと言えるのは、かつて妻の八重(新垣結衣)が命を救い、その恩もあって泰時を守り続けた鶴丸に諱(いみな)を与えて、一介の従者から御家人に・・・しかも後年、泰時のみならずその子孫もサポートし続ける「平盛綱」にしたこと。この盛綱は、重要人物のわりには生年月日も不明で、出自もはっきりしない御家人なので、この役回りには実にピッタリの人物だと言えるだろう。

弓の試合で、泰時(坂口健太郎)の従者・鶴丸あらため平盛綱(きづき)が大活躍 (C)NHK

SNSでも、特に歴史マニアの人々が「平盛綱爆誕!」「鶴丸にこういう形で活躍の場を与えてきたか!」「オリキャラ扱いであった鶴丸が、平盛綱という名を得て、今より史実の人となる」と興奮状態に。

またこのやり取りを受けて、「やっぱり義時の造形が巧すぎる。今回の泰時と盛綱とのシーンみたいに『愛すべきオヤジ』感あるシーンを毎回挟むことで、ギリギリのラインで『主人公らしさ』『視聴者の共感』を保ってる」という指摘もあった。

■ 長澤まさみがサプライズ登場、前大河を思い出す声も

さらに視聴者を興奮させたのが、冒頭で義時とすれ違う侍女が、実はナレーションの長澤まさみだったこと。長澤が語りだけでなく、実際にドラマにも出演することは、以前からほのめかされていたが、完全に不意打ちな登場の仕方に、「長澤まさみ様が降臨なされた~!」「まさかのまさみ!!!」「長澤まさみ確かに鎌倉殿に存在してた」と、わずか1分足らずの登場にも関わらず、ツイッターのトレンド入りを果たすほどの反響を呼んだ。

冒頭、侍女として登場した長澤まさみ (C)NHK

また、前回の大河ドラマ『青天を衝け』で、ほぼ毎回冒頭で徳川家康が「こんばんは。徳川家康です」と視聴者に語りかけていたのを思い出して、「こんばんは徳川家康です、みたいな登場のしかた」「分かるよ、長澤まさみが徳川家康になったよ」「ナレーターの長澤まさみさんが侍女で登場しても普通に受け入れられたのは『こんばんは徳川家康です』で1年間慣れ親しんでたのが大きい」と懐かしく思い出す声も上がった。

とはいえ長澤のドラマ内での役どころは、今回はまだ明かされず。このまま一侍女で終わるという見方は少なく、「足利家に嫁いだ義時の妹・時子(ちなみに伝承の亡くなり方がえげつない)」「頼家の娘で、政子の後継として鎌倉の実力者となる竹御所」「『吾妻鏡』の執筆者」などの推理がSNSでは飛び交っているが、きっと三谷のことだから、今回の平盛綱なみに「そうきたか!」な正体を用意してくれているはずだ。

『鎌倉殿の13人』の放送はNHK総合で毎週日曜夜8時から、BSプレミアム・BS4Kでは夜6時からスタート。第40回『罠と罠』では、和田義盛を中心に、義時のやり方に不満をつのらせた御家人たちが、次々と実力行使に出る様を描いていく。

文/吉永美和子

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本