学生・社会人・無所属…大阪のお笑いインディーズの実態に迫る

楽屋A・舞台袖のオーナー加藤進之介さん(右)、芸人ボニーボニーの花崎天神(真ん中)・とくのしん(左)
芸人を目指すのならば、大手の「吉本興業」や伝統の「松竹芸能」のような事務所に所属するのが主流のなか、さまざまな理由で事務所に入らずにインディーズで活動する芸人も少なからず存在する。
学生、社会人、さらにはどこの事務所にも属さないフリー芸人。そんな彼らが主戦場のひとつとしているのが、2022年5月に誕生した大阪のお笑いライブハウス「楽屋A」(大阪市西区)だ。最近では劇場メンバーのメディア露出(先日はトルクレンチガールズが『あらびき団』に出演、にぼしいわしが『M-1』準々決勝進出!)も増えているという。
そもそもお笑いライブハウスとは? その実態は? どのような「フリー芸人」が集まっているのか? 「楽屋A」のオーナーである・加藤進之介さん、劇場の看板芸人を担うフリー芸人・ボニーボニーの花崎天神&とくのしんに、大阪のインディーシーンについて話を訊いた。
取材・文・写真/弘松メイ
■ お笑いがしたい社会人・学生芸人と、必死の思いのフリー芸人
──「楽屋A」は、2019年に誕生したお笑い好きとお笑い芸人が集まるバー「BAR舞台袖」(大阪市中央区)の系列店で、その両方で加藤さんはオーナーを務めています。「楽屋A」はどのような劇場なのか教えてください。
加藤「元々、フリーの人が活躍できる場として劇場を作ったわけではなく、何の垣根なく舞台に出たいと思う芸人さんが全員出られるような劇場を作りました。フリーや兼業芸人でいえば、社会人も出演していますが、最近はとりわけ学生の出演が多いですね」
──学生さんですか?
加藤「お笑いサークルって関西ではそんなに盛り上がっていなかったんですが、ここ2、3年ぐらいで増えてきたみたいなんです。大学のときにテニスサークルに入る感覚で、たまたまお笑いサークルに入るという感じで」
──プロを目指されている学生さんは多いんですか?
加藤「芸人を目指している人は半々ぐらいですね。芸人を目指していて、先に舞台を踏んどこうという人と、あくまでサークルでお笑いやっている人と。という感じです」

──ボニーボニーさんは、学生をはじめとするフリー芸人のバトルMCをよくされていますが、出場者の方々の雰囲気ってある意味独特なのでしょうか。
花崎「『口火』(楽屋Aの劇場メンバーになるためのバトルライブ)もそうなんですけど、学生芸人がほとんどですね。僕らは元々事務所に入っていて、いろいろ紆余曲折とあり現在無所属として活動しているんですが、出演芸人には学生のほかに、僕らのような事務所に入っていない人らと、社会人やから昼間は仕事しているけどお笑いをしたい層がいて・・・」
──皆さんどうして所属せずにフリー芸人で活躍しているのでしょうか?
花崎「お金のこととか、いろんな理由があると思うんですが、事務所に入って事務所の思い通りするのが『気に食わないから』という人らもいますね(笑)。もちろん、事務所に入ると広告力はありますが、会社の評判を考えたり、出られるイベントも限られてくるので、そういった壁を取っ払って自分たちの『笑い』を表現したい、ということだと思います」
──なるほど。
花崎「明治の頃の芸人の世界って、『芸人』『興行(いわゆるイベント会社)』『寄せ小屋』と完全に分けられて運営しており、イベント運営する側と演者側で完全に別会社として分かれていたそうなんです。後におもしろい芸人がほかのイベント会社や小屋に出ないようにと囲うために『事務所』という形ができたらしく・・・最近は自分たちの笑いを自由に発信したい人たちが増えているので、感覚ですが、明治の頃のような流れがもう一度きてるようにも感じますね」
──フリーの芸人さん、増えてきているんですね。
花崎「でも、お笑い好きで舞台に立っている『どうしてもやりたいやつ』と、『ここしかないねん!』と必死の思いでやってるフリーの芸人は、やはり顔付きが違いますね(笑)」
とくのしん「学生芸人のスタンスが1番いいです。いい顔してるし、楽しそうで」
加藤「『二足のわらじ』(会社員や学生の芸人限定のバトルライブ)は、もともと大阪で社会人や学生芸人を掘っているところがなかったので、開拓しようという思いで始めました。現在、月3回ぐらい開催していて、毎回10組以上が登場していますね。ここでも学生はめっちゃ増えてます」
──お笑いをしたい学生さん、多いんですね。
加藤「ただ、学生の新メンバーは増えるサイクルができていますが、それ以上の進展はないのが現状です。学生が卒業したときにも囲える環境にしなければと常々、思っています」
■ 東西で異なる、インディーズライブの盛り上がり
──大阪と東京でインディーズライブの盛り上がり方って異なるんでしょうか?
加藤「全然違います。事務所やフリー芸人で特色は違うんですが、東京はインディーズライブを好きで観に来られる人も多くて。それぞれの芸人がSNSや配信を頑張っていて、マーケティング力が圧倒的に強いのが要因やと思うんですが、大阪は弱いです」
花崎「お客さんでいうと、東京の方がフラっとに見てくれている感じがありますね。WESTANTS(楽屋Aのユニット)で東京遠征することもあるんですが、そのライブが面白かったから、休日に大阪まで来て楽屋Aに足を運んでくれるフットワークの軽いお客さんもいる。一方で、大阪は吉本や松竹など事務所で見ることがやっぱり多い。きっと大阪という土壌がそういう場所なのかな」

──ボニーボニーさんは「楽屋A」で出演回数がダントツと伺いましたが、どれぐらい出演されているんですか?
花崎「8月末まで110ステぐらい出演しています。2位が同じく劇場メンバーのにぼしいわしで80ステぐらいですね。月に20本以上で出させてもらってて、ほぼほぼ楽屋Aのみの出演です」
──ボニーボニーさんにとって「楽屋A」はどんな劇場ですか?
花崎「お金の面や露出できるチャンスを考えると、絶対に東京に行った方がいいんですけど、僕はずっと大阪にいたいし、みんながやんないことをやった方が面白いから。『漫才曼荼羅』(東京遠征費を稼ぐための投げ銭制オールナイト配信イベント)などのイベントもちょくちょくしています」
とくのしん「まあ無かったら僕らは出るとこがないですし、ありがたい場所ではありますね。楽屋も広いですし。お酒も飲めますし」
花崎「綺麗なんですよ! 楽屋Aって。フリーでも芸人として扱ってくれる感じがあって、すごいありがたいです」
──劇場ができて、2人の環境が変わったエピソードを教えてください。
とくのしん「ちゃんと芸人としてみてもらえるようになりましたね。場代もかからないですし」
花崎「これまで周りの芸人仲間って僕らに対して『どこにも所属しやんとフリーでなにしてんねん』という感じだったんですが、楽屋Aに入ってから『最近頑張ってるな』という感じに変わってきて・・・。芸人界隈も楽屋Aに対して『なんかあるんじゃないか?』『なにかハネるんじゃないか?』と期待してる感じはします」
■ フリー芸人にとっての希望の場所にしたい
──今後どんな劇場にしたいですか?
加藤「元々、大阪のインディーズライブって5人ぐらいしか入らなかったんです。でも、うち(舞台袖や楽屋A)や芸人が頑張った影響で、最近やっと15〜20人ぐらいになって本当に少しずつですが増えてきています。せっかく面白い芸人が集まっているに、みんな東京へ行ってしまうと大阪で芸人が育たなくなるので、土台と環境を変えて、どうにか芸人が大阪から出ていくのを防ぎたいです」
花崎「個人的には学生芸人とかもそうですが、僕らみたいな事務所に所属してない芸人にとって希望の場所にしたいです。お金がないとか、家族がいるから・・・とかいろんな事情で芸人辞めていったけど、お笑いしたい人って結構多くて。折角面白いのに、と悔しいので、そういう人たちがもう1回夢見る場所にしたいですね。僕たちが売れたら、後追いできるじゃないですか。『楽屋Aで売れたらご飯食べられるんだ!』って思われるようになりたい」
とくのしん「僕は全くそんなおこがましいこと思ってないです。楽しくできたらそれでいいです」
花崎「かっこいいこと言ったらこれだよ!」
◇
ほぼ毎日、さまざまな芸人によってライブが開催される「楽屋A」。肩書きによる障壁なく、「本当に面白い」といわれる芸人が「楽屋A」から誕生する日もそう遠くないだろう。チケットは公演によって異なるが、1500円(1ドリンク付)などで観ることができるため、気になる人は覗いてみては。
ボニーボニーをはじめとした「楽屋A」メンバーは、11月12日に大阪・アメリカ村で開催されるサーキットフェス『アメ村天国』にも出演。ほかにも、11月22日には「楽屋A」でボニーボニーの単独ライブ『ボニーボニー「修行」単独 百八煩悩砲 〜108分ネタ一本勝負〜』を予定している。
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