バブリーダンスから早5年、女優・伊原六花「一生懸命生きてる」
濃く塗られたアイシャドーに、頭にはポンパドール。高校生とは思えぬパンチの効いた80年代ルックス&ダンスで一斉を風靡した、「バブリーダンス」(2017年)から早5年。当時センターを務めていた元キャプテンの伊原六花は、現在ドラマや舞台で活躍する女優としてその名を轟かせる。
まっすぐで偽りのないその演技力には定評があり、次々に出演作を勝ち取っていく彼女だが、どこからか滲み出る「芯の強さ」には、当時ダンスに打ち込んでいた面影と重なる。今回は新たにドラマ『シコふんじゃった!』で、女子ながら相撲部・主将の穂香を演じる。現在23歳、等身大の伊原六花に話を訊いた。
写真/木村華子 取材・文/Lmaga.jp編集部
ヘアメイク/面下伸一 スタイリスト/米原佳奈
■ 「いつになっても大逆転できる瞬間はたくさんある」
──まずは、今回のドラマ『シコふんじゃった!』をオファーされたときのお気持ちからお聞かせください。
同作は映画『シコふんじゃった。』(1992年)の30年後を描く続編となっていて、私は映画の最後の試合シーンに、感情移入してしまうほどの相撲のリアリティがあって大好きだったんです。なので、そのかっこよさをドラマでどれだけ伝えられるだろうというところにドキドキしつつも、役を通して相撲を学べるというワクワク・・・どっちの気持ちもありました。
──確かに相撲は伝統的なスポーツだし、ヨガやボクササイズといった、気軽にエクササイズを始める感覚とは少し違いますもんね。ちなみに映画は、伊原さんの生まれる前のものですが、どのタイミングでご覧に?
オーディション前に見ました。
──映画は男の子がぶつかり合う、王道の相撲を描いた作品。でも今回はまさかの主将が女の子という、現代の社会ではなかなか珍しい設定ですが、撮影前に試合に行って勉強されたんだとか?
はい、行かせていただきました。女子相撲があるというのはもちろん知っていたのですが、これまで直接見る機会がなかったんです。男性の迫力のあるぶつかりだったりダイナミックな投げとはまた違う、スピードの早い掛け合いだったり、ぶつかりまでの瞬間だったり・・・とにかくスピード感がすごくて。「力強い」男性相撲とは違うんだという印象を受けました。
そのときすでに相撲の稽古には入っていたのですが、穂香の役柄的にあまり身体が大きいわけじゃないので、「できるだけ相手の下に入って回しを取るタイプの戦い方で行こう」っていう話になったりと、そういった(役作りの)面でも参考になりました。身体が自分よりも大きい人を簡単そうに倒したりするので、「やっぱり体格とか年齢は全然関係のないスポーツなんだ」って。
──なんだか、話しっぷりから相撲の魅力にハマっている感じがします。
どっぷりハマりました(笑)。戦いも本当におもしろいですし、所作だったり、土俵を慣らすという動作も美しかったりするので、「相撲が日本の国技というのが誇らしいな」と再認識しました。「(日本中に)この魅力伝われっ」と思っています!
──こうやって伊原さんが新たに『シコふんじゃった!』に出演することで、新たな息吹が吹き込まれるというか。令和に生まれ変わったからこそ、映画を知るファンもたくさんいるのではないでしょうか。
新しくドラマを知る人はもちろん、映画が好きな方にも楽しんでもらえるシーンがたくさんあると思います。当時のキャストの方がOBとして出てくださったりとかもしています。
──竹中直人さんなんかはその代表例ですね。伊原さんのYouTubeチャンネルを拝見していると、コメント欄に30年前の『シコふんじゃった。』のファンの方が「伊原さんが演じてくれるのがうれしい」と投稿しているのを見て。世代を飛び越えているなぁと感じました。
それは本当にうれしかったです!
──これは各メディアでも称賛されていますが、劇中に出てくる四股の踏み方が美しすぎて。あのシーンが映るたびに心が洗われるというか・・・相撲の基となる動きは、どのようなアプローチで習得されたんですか?
ダンスをやってきたので、もともと柔軟性はある方だったのですが、バレエで足を上げるのと、四股を踏むっていうのは、足を上げているということに一見変わりはないのですが、その道筋・・・片足に乗ってバランスを取ってから、両膝を伸ばすというのが(簡単そうに見えるが)やってみると、意外に足が上がらないんです。
監督からは「穂香は四股が綺麗なのを土台として欲しい」というのを言われてたので、稽古で1回につき100回踏んで、鏡の前で先生に「ここは」とグッとやられたりしながら(笑)、やっと見てもらえる四股になったのではないかと思います。
──役作りで「四股」が土台となる役って、なかなかない経験かもしれないですね。
無いと思います(笑)。ドラマを通して役作り、身体作り、稽古とすべてにおいて貴重な経験をさせていただいたなという感じです。
──劇中、土俵で相手役の亮太(葉山奨之)を指導するシーンを見ていると「あれ、どこかで見覚えあるな」と思ったのですが、それは多分伊原さんのダンス部時代の映像とどこか通ずるものがあって。設定的にも自身の部活動経験が活かされたのでは?
そうですね、(役作りにおいての)指導・説明をする部分もそうなのですが、なによりこの作品をやるにあたって、体つき、所作ひとつ、稽古シーンのちょっとした動きでもリアルで説得力のある動きをしたいと思っていたので、結構なストイックな稽古になったんです。でも、部活動やってたからなのか、苦でなくて! そこは活かされたかなと思います。楽しくできました!
──強靭なメンタルと・・・。
体力と!「いっぱい練習するのが当たり前」というのがあるので、そこは良かったと思います。
──同作で印象的だったのが、穂香の座右の銘です。彼女の場合は「雨降って地固まる」ならぬ「四股踏んで地固まる」ですが、実際に伊原さん自身で大切にしている言葉であったり、座右の銘があったら教えていただきたいです。
「時間は有限、努力は無限」という言葉を中学生のときに習っていたダンスの先生が言っていて、今までで1番納得した言葉です。確かに時間や期限は決まっていて、今回だと「この日から撮影スタートします」っていう期限になったりするのですが。でもそこまでにどれだけ稽古するか、どこまで穂香のことを考えられるかというのは私次第だから。これは当時ダンスやっていたときに響いて、以後大切にしている言葉です。
──なんだか伊原さんの芯の強さの秘訣を知れたような気がします。伊原さんがこの作品を通して得られたことはなんですか?
作品を表す言葉として「人生大逆転劇」っていうワードがあって。例えば(登場人物の)亮太であれば卒業ギリギリの単位だったり。ほかにもそれぞれギリギリなところにいて。
でも、それが相撲という1つのことに集中することで、大会で結果となって目に見えて、今後も「頑張ろう」って力になる。そういったことは年齢に関係なく大事なことで、演じていてもグッと熱くなる瞬間があったので「いつになっても大逆転できる瞬間はたくさんある」と思えました。
ドラマ『シコふんじゃった!』
原作・総監督:周防正行
監督:片島章三、後閑広、廣原暁、植木咲楽
脚本:鹿目けい子
出演:葉山奨之、伊原六花、佐藤緋美、高橋里央、森篤嗣、高橋佳子、佐藤めぐみ、手島実優、福松凜、樫尾篤紀/竹中直人、清水美砂、田口浩正、六平直政、柄本明
企画・制作プロダクション:アルタミラピクチャーズ
© 2022 Disney
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