和田殿&巴ロスの声続々、演じた横田と秋元にも称賛【鎌倉殿】

2022.11.1 06:45

由比ヶ浜にて。妻・巴(秋元才加)に「心配そうな顔をするな」と告げる和田義盛(横田栄司)(C)NHK

(写真5枚)

三谷幸喜脚本・小栗旬主演で、鎌倉幕府二代執権・北条義時の生涯を中心に描く大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)。10月30日放送の第41回「義盛、お前に罪はない」では、タイトル通り有力御家人・和田義盛の「和田の乱」が描かれ、鎌倉殿にも視聴者にも愛された和田殿の退場に、多くの惜しむ声が上がった(以下、ネタバレあり)。

■ 実朝の奔走むなしく散った義盛、生き延びた巴

自分が御所にいる間に、息子たちが挙兵したことを知った和田義盛(横田栄司)。最初は戦を止めようとするが、「今(北条を)倒しておかねば、必ず次の手を打ってくる」と周りに詰め寄られ、このまま義時と戦うことを決意。そして自分の軍にいた三浦義村(山本耕史)が、義時と通じていることを察し、裏切るなら早いうちに裏切るよう義村に告げる。

義村と八田知家(市原隼人)らは、和田を裏切らないと誓って飲み込んだ起請文を無理やり吐き出し、義時と合流。義盛の軍勢は、実朝(柿澤勇人)を救い出す名目で御所へと攻め入るが、身内しか味方がいない劣勢状態のうえ、義時の息子・泰時(坂口健太郎)の奮闘もあって、その狙いは阻止されてしまう。

和田館にて。ついにあることを決断した和田義盛(横田栄司)と郎党たち(C)NHK

和田に加勢しようとした御家人たちも、義時の策略で出された鎌倉殿の御教書(みぎょうしょ)で全員が寝返り、和田の敗北は確定した。義盛は館に立て籠もって抵抗を試みるが、そこに義時に連れ添われた実朝が登場。義盛は館から出てきて、「俺はウリン(実朝)が憎くて、こんなことをやったんじゃねえんだ!」と、その心情を吐露する。

それに対して実朝も「義盛、お前に罪はない。これからも私に力を貸してくれ」と懸命に訴える。それを聞いた義盛は「これほどまでに鎌倉殿と心が通じ合った御家人が、ほかにいたか。我こそが鎌倉随一の忠臣じゃ!」と喜び、投降しようとしたその刹那、義村の合図で無数の矢が放たれ、義盛は実朝の眼の前で絶命する。

主君であり最愛の人だった木曽義仲(青木崇高)の死後、義盛の妻となっていた巴(秋元才加)は、義盛と命運をともにするつもりだったが、義盛が最後に彼女に願ったのは「生き延びろ」ということだった。その言葉に従った巴は、鎌倉からひそかに逃亡。小田原に寺を建立し、91歳まで生きた──という伝承があることが、紀行で語られた。

■ 「こんな男になりたい」誰もに愛された和田義盛

この時代を代表する猛者の最後にふさわしく、大迫力の合戦シーンと「弁慶の立ち往生」のごとく体に無数の矢を立てるというすさまじい死に様で、華々しく散った和田義盛。SNSでは「強くて素直で素敵だった。こんな男になりたい!!」「みんな(視聴者含む)の癒やしどころ和田ちゃんちパート、もう無いんだよな。和田ロス辛すぎる」「和田がいない鎌倉殿を来週からみるのか・・・」などの、悲しみや癒やしがなくなったことへの不安の声が、多数上がっていた。

第35回より。和田義盛の館は、源実朝が唯一落ち着く場所だった (C)NHK

『鎌倉殿』の和田義盛がここまで愛されたのは、ただただ強いだけでなく、隠してもにじみ出るかわいらしさがたまらないという、異色の武将キャラにしたことにあるだろう。演じる横田栄司は、故・蜷川幸雄演出のシェイクスピア劇の常連で、数々の重要な役を演じてきた実力派。その一方で「楽屋の暖房を上げるいたずらをされても、自分のことよりも、置いてある花の方を心配した」などの、いい人エピソードにも事欠かない人物だ。

そんな重厚な演技と愛されキャラを融合したからこそできた、横田版の和田義盛。SNSでも「鎌倉殿見るまで知らなかったけどめちゃよいな、って思った」「命のやりとりが続く重く苦しい今作で、和田殿のキュートな笑顔と真っ直ぐな行いが救いでした」「向こう何十年か、和田義盛といえば横田栄司になることは間違いなし」「いつの日か横田栄司さんが演じる、三国志の張飛が観てみたい」などの、ねぎらいの声が止まることがなかった。

まさに義盛役をきっかけに、より注目度が上がるのは確実な横田だが、体調を崩したために、義時役の小栗旬と共演予定だった舞台『ジョン王』を降板し、現在は静養中。舞台であれ映像であれ、重厚とキュートの大きな振り幅を活かした彼の演技が、早いうちに見られることを祈りたい。

■ 生き続けることのタフさと尊さ、秋元才加演じる巴御前

さてもう1人、今回をもって退場したのが、秋元才加が演じた巴御前だ。義仲の死後の巴御前の生涯についてはさまざまな説が流れているが、1つ有力視されているのが、和田義盛の妻になったという説。三谷はこの説を採用し、人間は愛する人を亡くしたあと、そこからいかに生きていくかという普遍的な問いを、巴御前に託したように思う。

木曽義仲とともに戦っていた第16回より。鎌倉軍に見つかり、ひとり奮戦する巴御前(秋元才加) (C)NHK

実際に秋元も、「同じ人生なのに生き直している感覚というか、2人分の人生を生きているような、そんな感じ・・・どのキャラクターも、立場や役割が変わってくるにつれて変化してきていると思いますが、なかでも巴はそれがわかりやすい人物だったのではないでしょうか」(公式インタビューより)と、深い悲しみを抱えながらも生き続けることのタフさと尊さを、演じながら感じていたようだ。

そして義盛の戦死という、2度目の大きな喪失を抱えながらも、再び甲冑をまとって颯爽と去っていく巴の姿に、視聴者からは「木曽義仲を失いはしたけど、その後、和田殿の茶目っ気のある明るさに救われて幸せそうだったのがすごく好きでした」「かつては女であることを捨て『木曽義仲第一の家人』と名乗った巴が、『忠臣和田義盛の妻』として誇り高く叫ぶ姿に涙」「巴、どこにでも行けるんだ。和田殿はいないけど。命があれば何処へだって行ける」という感銘の言葉が並んだ。

そして演じた秋元にも、「今まで見てきたなかで、1番の巴御前」という声が続出。「秋元才加さんの巴御前、格好良くて、素晴らしかった。木曽義仲亡き後の巴御前を初めて知ったし、和田義盛との関係もステキ」「ここ数年の大河のなかで最も深く印象が残る女性かもしれない」「秋元才加さんの巴御前をこれからずっと思い出すと思います」など、熱い支持の声が止まらなかった。

『鎌倉殿の13人』の放送はNHK総合で毎週日曜夜8時から、BSプレミアム・BS4Kでは夜6時からスタート。第42回『夢のゆくえ』では、みずから政を取り仕切りはじめた実朝と、それに対抗する義時との関係が描かれていく。

文/吉永美和子

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