「サッカー観られない」実朝と公暁の決着にSNS呆然【鎌倉殿】

鶴岡八幡宮・大階段にて。突然のことに驚く源実朝(柿澤勇人) (C)NHK
三谷幸喜脚本・小栗旬主演で、鎌倉幕府二代執権・北条義時の生涯を中心に描く大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)。11月27日放送の第45回「八幡宮の階段」では、三代目鎌倉殿・源実朝とその甥・公暁の、残酷過ぎるけど避けられなかった運命が、非常に仔細に描かれた(以下、ネタバレあり)。
■ 牡丹雪が降り積もるなか…実朝と公暁の運命が決着
雪が降りしきる鶴岡八幡宮でおこなわれた、実朝(柿澤勇人)の右大臣拝賀式。義時は源仲章(生田斗真)に太刀持ちの役目を奪われたが、警護を務める息子・泰時(坂口健太郎)から、実朝の甥・公暁(寛一郎)が、実朝だけでなく義時も討つつもりであることを知らされる。ちょうどその頃、儀式を終えた実朝一行が、八幡宮の階段を降りてきた。暗殺の機会を狙って、階段横に潜んでいた公暁とその仲間は、まず義時と間違えて仲章を斬殺する。
公暁からの攻撃に、泰時からもらった小刀で防戦しようとした実朝だが、かつて「雪の日は出歩くな」と予言した歩き巫女(大竹しのぶ)の「天命に逆らうな」という声が脳裏をよぎり、刃を落として小さく頷く。それに応えるように公暁は太刀を振りおろし、実朝は絶命した。しかしその巫女は最近、誰彼構わず「天命に逆らうな」と言い回っていることが、泰時の異母弟・朝時(西本たける)から明かされる。

息子の死に衝撃を受ける政子(小池栄子)のもとに、逃亡中の公暁が来訪。政子にとっては孫である公暁は、実朝の元から奪ってきた、鎌倉殿の証として代々受け継がれているドクロを見せ、「知らしめたかったのかもしれません、私の名を。四代目(鎌倉殿)は私です」と、実朝を暗殺した動機を寂しげに語る。その後、公暁は乳母夫の三浦義村(山本耕史)のもとに逃げ込むが、義時との対立を避けたい義村は公暁を討ち、その首を届けるのだった。
一方、実朝の死を知った後鳥羽上皇(尾上松也)は、親王を実朝の養子に出して、四代目鎌倉殿を継がせるという計画を考え直さねばならなくなった。しかし義時の方も、もっと扱いやすい人物を鎌倉殿にすえるために、上皇の方から養子の話を断るよう仕向ける計画を立てる。後年「承久の乱」で正面対決する、2人の戦いの火蓋が本格的に切られた──。
■ やさしくて繊細すぎた、実朝の最期にSNS涙
ここまで『鎌倉殿の13人』を観てきた視聴者にとっては、W杯の「日本×コスタリカ戦」以上に、その結末を見届ける必要があった第45回。一瞬の出来事で終わらそうと思えばできるのに、実朝と公暁の躊躇や葛藤を「そこまで地獄を見せなくても・・・」というほど濃厚に描いた脚本に、W杯を見越してBS放送、通称「早鎌」を観た人たちは、観戦前にことごとく体力や精神力を奪われたようだった。
SNSでも早鎌の直後から、「早鎌、地獄でサッカーに気持ちが切り替わらない」「まさかサッカー観られないくらいもってかれるとはよ」「サッカーもちろん気になってるけど、早鎌のあと気持ちがなかなか切り替わらないので字幕付きで本鎌(総合放送)しちゃいそう」などの言葉が並んだ。

■誰彼かまわず「天命に逆らうな」と言っていた歩き巫女
史実を回避しそうな道が用意されているのに、結局は誰もが破滅の道を選んでしまうのは『鎌倉殿』の常套パターンとなっているが、今回も実朝が「太郎(泰時)のわがまま」で持参した刀を一度は公暁に向けながらも、拝賀式中に聞こえてきた、歩き巫女の「天命に逆らうな」の声を思い出して、そのまま斬られるという、史実通りの流れに。
SNSでは「定めを受け入れて、愛する人からの刃を捨てて、抵抗することなく公暁に頷いた。公暁の気持ちをくみ取って受け入れる、高潔な心」「最期までやさしすぎたんだよ実朝」と、その決意を称賛する声もあれば、歩き巫女の状況を知って、「認知症の老女が源氏を滅ぼすか」「『天命に逆らうな』の言葉の真相が、ただの耄碌(もうろく)した老婆の繰り言にすぎなかった。そして、それを知ってるのがボンクラの朝時だった。三谷幸喜、なんて残酷で冴えた展開を考えるんだ」という、無念の感想も並んだ。
さらに実朝を殺し、鎌倉殿に就こうとした理由として「名前を知らしめたかった」という公暁には、「あんたも武士になりたかったんだな・・・」「負け戦と分かっていてそうしたのかよ」「史実的にも全くもって本音だろうね。実朝を暗殺したければ人目のない閉鎖された社殿の中で十分なのに、参列客が見上げる大階段を宝塚の大階段のようにして惨劇を見せつけたわけだし」などの同情の言葉が寄せられた。
■ 歓迎された源仲章の死、生田斗真も「計画通り」
しかしその一方で、殺されたのにまったく同情の声が聞かれなかったのが、「顔がいいのにウザい」の声が集中していた源仲章だ。殺された瞬間は「よっしゃ死んだ!!! よくやった!!!!」「じつに無様な良い死に様!」「ザマアミロ感しかない」などの言葉がSNSに並び、ここまで死んだことが歓迎されたキャラは、味方についた相手がことごとく死んでいき「疫病神」と呼ばれた、源頼朝(大泉洋)の叔父・源行家(杉本哲太)のナレ死以来か。

とはいえ、演じた生田斗真は「『やった! 仲章やっといなくなったぜ! 清々した!』という気持ちになってもらえるように、いろんなことを積み上げていきたいなと思っていました」(公式サイトインタビューより)と語っているので、この視聴者の反応は間違いなく「計画通り」という思いだろう。
さらには「寒いんだよ!」という最期の言葉に対しても、「雪降ってる上にどんどん血が失われたらそりゃ寒い」「いまわの際の言葉として『太陽にほえろ!』のジーパン刑事の『なんじゃこりゃあ!』と双璧」「後先考えない公暁のおこないや、呆気なく終わってしまう自分の人生に対しても『さぶい』の意味で言っているように聞こえて怖かった」「今年の冬『寒い』と思うたびにあやつの顔が目に浮かぶ」など、いろいろな考察や感想が並んだ。
◇
『鎌倉殿の13人』の放送はNHK総合で毎週日曜夜8時から、BSプレミアム・BS4Kでは夜6時からスタート。第46回『将軍になった女』では、四代目鎌倉殿の座をめぐる駆け引きが、鎌倉と京で展開されていくのと並んで、北条家の跡目争いも浮上してくる様子が描かれていく。
文/吉永美和子
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