芸の異端児・新納慎也、大河をふまえ「ここまで表現できるんだ」

2022.12.31 08:00

ミュージカル『バンズ・ヴィジット 迷子の警察音楽隊』で主演を務める新納慎也

(写真4枚)

NHKの大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で、源頼朝の弟・阿野全成を好演した俳優・新納慎也。ミュージカルのバックダンサーからこつこつとキャリアを積み上げ、現在は色男からコメディリリーフまで幅広く演じられるバイプレイヤーとして、舞台を中心に活躍中だ。

そんな新納の次回出演作は、『バンズ・ヴィジット 迷子の警察音楽隊』。かつての対立国・イスラエルで目的地とは違う町に迷い込んだエジプトの警察音楽隊と、ごく普通のイスラエル市民たちの一夜の交流を描いた物語で、今回が日本初演となる。新納がブロードウェイで実際に観たときの体験談や、『鎌倉殿の13人』裏話、そして「会長」を名乗って普及に務めるドリンクのことまで、ざっくばらんに語ってくれた。

取材・文/吉永美和子 写真/渡部孝弘

■ 作品との出合いは「NYにいる友だちに勧められた」

──いきなり個人的な話ですが、実はミュージカル『エリザベート』に、ダンサーとして出演された頃から(当時の芸名はNÎRO)、妖艶な感じが気になっている存在でした。

あー、気になってくださってありがとうございます。でもそれ、あんまり言わないほうがいいですよ。歳がバレるので(笑)。

──もう22年前のことですからね。新納さんは『バンズ・ヴィジット』を、4年前にブロードウェイでご覧になったそうですが、なにかきっかけがあったんですか?

当時すごく話題だったというのもあるんですけど、NYにいる友だちに勧められたのが大きいです。僕はNYに行っても、あまり(商業的な)オン・ブロードウェイは観なくて(実験的な)オフ・ブロードウェイに通っちゃうんですが、その友達は僕の好みをわかったうえで「多分好きだと思う」と言ってくれたので。

3月6日〜8日に「梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ」(大阪市北区)で上演されるミュージカル『バンズ・ヴィジット』

──ブロードウェイ版の映像を観たのですが、セットもダンスも非常にシンプルで、むしろ日本の小劇場っぽいノリですよね。

そうなんです。本当に素朴で、大きな事件も起こらないけど、だからこそ心に染み渡るし、すごくおだやかな気持ちになる。そして終わってから「あ! あそこはそういう意味だったか」っていろいろ気づくという、後味を楽しめる作品でした。

あまりにも感動したので、帰りは地下鉄に乗らずに、ハドソン・リバー沿いをゆっくり歩いて帰ったんです。上演時間分は歩きましたね(笑)。

──その当時から、トラブルメーカーのトランペット奏者・カーレド役を狙っていたそうで。

音楽隊のなかでも1人だけチャラい、異質なキャラクターなんですけど、音楽面もそうなんです。中東風の音楽がほぼ全編流れるなか、彼の曲だけがジャズっぽい。その現代的というか、音楽的にもピョコンと変わった感じが洒落てるなあと思って、その洒落た役をやらせてよ! って思いました。でも立候補したあとになってから「うわ、これ結構若い役かも」って反省しましたね(笑)。若々しくやりたいと思います。

同作ではトランペット奏者・カーレド役を演じる新納慎也

──政治的には非常に微妙な空気が流れている2国間の人々が、音楽を通じて理解し合うという内容も、今の世界に非常に求められているものだと思います。

今も世界では戦争が起こってますけど、それは政治的に、国同士が戦ってるだけなんですよ。1人ひとりの国民は平和を望んでいて、個人で会えば友だちになれるはずなのに、なんで戦争は起こってしまうんだろう・・・という所には、やっぱり触れることになるでしょう。

さらに今はコロナ禍で、人と人との距離ができてしまっているから「人間は本当はこんなにも温かいんだから、もう1度手をつなごうよ」ということが、伝わればいいなあと思います。

ミュージカル『バンズ・ヴィジット 迷子の警察音楽隊』

会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ(大阪府大阪市北区茶屋町19−1)
料金:1万3500円
期間:2023年3月6日(月)〜3月8日(水)

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