中村勘九郎&七之助が期待「歌舞伎から遠のいたお客さまにも」

2022.12.23 06:30

左から歌舞伎役者の中村七之助、中村勘九郎(C)福岡諒祠(株式会社GEKKO)

(写真4枚)

歌舞伎の観客層を広げるために、さまざまな歌舞伎舞踊作品を、全国各地で上演する特別公演している中村勘九郎&七之助兄弟。2023年春に中村座一門でおこなう『春暁特別公演2023』に向けて、勘九郎と七之助がリモート会見をおこなった。

■ 18年目を迎え、「僕らにとっても力になっている公演」

歌舞伎興行の大半は、東京や京都・大阪などの大都市に固まりがち。ならば自分たちから地方を訪れようという思いで、2005年からほぼ毎年開催しているこの特別公演。昨年で全都道府県での上演を成し遂げた。

勘九郎は「この公演をきっかけに、ほかの劇場にも足を運んでくださる、新しいお客さまが増えました。それは18年間続けてきたおかげだし、僕らにとっても力になっている公演」と語る。七之助も、「特に最近は、東京や大阪に行きづらいお客さまが多く、私たちがいろんな所を回ることで、歌舞伎から遠のいていたお客さまに観ていただく機会をもうけていただけるのはうれしい」と喜びを見せた。

■ 「春爛漫のひとときを楽しんでいただければ」

今回上演するのは『元禄花見踊』『仲蔵狂乱』『相生獅子』の3本。勘九郎が一人で踊る『仲蔵狂乱』は、2021年のNHKドラマ『忠臣蔵狂詩曲No.5 中村仲蔵 出世階段』で、勘九郎が演じた稀代の歌舞伎俳優・中村仲蔵の代表的な舞。本来の演目名は『狂乱雲井袖』だが、仲蔵の振付のあまりの素晴らしさに、このタイトルが通称となっている。

中村勘九郎(C)福岡諒祠(株式会社GEKKO)

この舞について勘九郎は「1つ間違えたら『ふざけてんの?』って思われそうな、すごく細かくて難しい踊り」と苦戦中なのを明かしつつも「当時なにを思ってこの振りにしたんだろう? というのを思いながら踊れるのは、役者冥利につきる。普通の興行ではなかなかかからない珍しい踊りをやれるのも、この公演の1つの意義です」と熱く語った。

一方七之助は、中村屋の看板となりつつある若手・中村鶴松とともに『相生獅子』に出演。獅子の精が長い毛を振り回す「毛振り」が人気の演目『連獅子』よろしく、最初は可憐な舞いを見せた2人の姫君が、最後は獅子の精となって毛振りをおこなうという、対照的な雰囲気を楽しめる演目だ。

中村七之助(C)福岡諒祠(株式会社GEKKO)

七之助は「『連獅子』と違ってお姫さまの場合は、重心が帯で後ろに持っていかれるから、体のバランスが悪くて毛振りがやりづらい」と、こちらも苦労点を明かしつつ、「鶴松と2人でがっつり踊るのもなかなかない。華やかで格式があるかと思えば、最後は狂って獅子になったりと、いろんなバージョンの2人が見られる演目です」と、その魅力を語った。

もうひとつの『元禄花見踊』は、元禄時代の花見の様子を、大人数の舞で表現するにぎやかな演目。七之助は「なにも考えずに、一緒に花見をするような気分で観ていただける、公演の一発目にふさわしい作品です」と見どころを明かす。

そして勘九郎は「まだ日頃からなにかと気をつければいけないとか、いつもと勝手が違う鬱々とした気分を、芝居を観ている短い時間だけは忘れさせるよう、美しい世界にいざないたい。春爛漫のひとときを楽しんでいただければ」と意気込みを語った。

『中村勘九郎 中村七之助 春暁特別公演2023』は、3月6日の東京公演を皮切りに全国を巡演し、関西では3月15日に「サンケイホールブリーゼ」(大阪市北区)で上演。チケットは9500円で、現在発売中。

取材・文/吉永美和子

『中村勘九郎 中村七之助 春暁特別公演2023』

会場:サンケイホールブリーゼ(大阪府大阪市北区梅田2-4-9 ブリーゼタワー7F)
日時:3月15日(水)昼12時〜、夕方3時〜
料金:9500円

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本